環境保全型農業レポート > No.125 EUの水に関する世論調査
記事一覧
  • No.219 日本農業のエネルギー消費構造 12/12/17
  • No.218 アメリカの有機農業者への金銭的直接支援の概要 12/12/16
  • No 217 道路に近い市街地で栽培された野菜の重金属濃度 12/11/26
  • No.216 未熟堆肥は作物の土壌からの重金属吸収を促進する? 12/11/25
  • No.215 全米有機プログラム(NOP)規則ハンドブック2012年版 12/11/24
  • No.214 ソイル・アソシエーションの有機施設栽培基準 12/10/26
  • No.213 イギリスではポリトンネルが禁止に? 12/10/25
  • No.212 EUの有機農業における家畜飼養密度と家畜ふん尿施用量の上限 12/09/24
  • No.211 有機と慣行農業による収量差をもたらしている要因 12/09/23
  • No.210 EU加盟国の有機農業に対する公的支援の概要 12/08/24
  • No.209 窒素安定同位体比は有機農産物の判別に使えるのか 12/07/20
  • No.208 デンマーク農業における窒素・リンの余剰量の削減 12/07/19
  • No.207 有機農業の理念と現実 12/07/02
  • No.206 EUが有機農業規則の問題点を点検 12/07/01
  • No.205 イングランドの農業者は持続可能な土壌管理の知識を十分持っているか 12/06/05
  • No.204 バイオ素材をベースにしたプラスチックの持続可能性評価 12/06/04
  • No.203 OECD加盟国における水質汚染 12/05/08
  • No.202 ヨーロッパの河川における水質汚染の動向 12/05/07
  • No.201 有機農産物の日本農林規格が改正 12/03/31
  • No.200 薬用石鹸成分,トリクロサンの生物への影響 12/03/30
  • No.199 EUにおけるバイオガス生産の現状と規制の現状 12/03/06
  • No.198 トウモロコシのエタノール蒸留粕の飼料価値と飼料供給に与える影響 12/03/05
  • No.197 コスト効果の高い余剰窒素削減政策は何か 12/02/01
  • No.196 世界の食料生産のための農地と水資源の現状と課題 12/01/31
  • No.195 福島県の農林地除染基本方針とその問題点 11/12/19
  • No.194 アメリカの養豚 ふん尿管理の動向 11/12/18
  • No.193 IAEA調査団(2011年10月)の最終報告書 11/11/24
  • No.192 岡山・香川両県から瀬戸内海への窒素とリンの負荷量 11/11/23
  • No.191 IAEA調査団(2011年10月)の予備報告書 11/10/31
  • No.190 放射能汚染事故時に如何に対処すべきか 11/10/12
  • No.189 農林水産省が農地土壌除染技術の成果を公表 11/10/11
  • No.188 アメリカの有機と慣行のリンゴ生産 11/09/20
  • No.187 有機JAS以外の有機農業の実態調査結果 11/08/22
  • No.186 カドミウム関係法律の改正とコメの濃度低減指針 11/08/21
  • No.185 イギリスが国土の生態系サービスを評価 11/08/20
  • No.184 西ヨーロッパと他国の農業生物多様性の概念の違い 11/07/21
  • No.183 中央農研が総合的雑草管理マニュアルを刊行 11/07/20
  • No.182 ビニールハウスは放射能をどの程度防げるのか 11/07/19
  • No.181 大気からの放射性核種の作物体沈着 11/06/13
  • No.180 放射性汚染土壌を下層に埋設する表層埋没プラウ 11/06/06
  • No.179 チェルノブイリ原子力発電所事故20年後のIAEA報告書 11/05/20
  • No.178 農薬の使用状況と残留状況調査の結果(国内産農産物) 11/04/19
  • No.177 キャッチクロップ導入と硝酸溶脱軽減効果 11/04/18
  • No.176 イギリスが世界の食料・農業の将来展望を刊行 11/04/17
  • No.175 2011年度から環境保全型農業実践者に支援金を直接支払い 11/03/28
  • No.174 経済不況は割高な環境保全農産物需要を抑制するのか 11/02/26
  • No.173 施設ギク農家の肥料投入行動とその技術的意識 11/02/25
  • No.172 世界の有機農業の現状(2) 11/01/14
  • No.171 OECDが日本の環境パフォーマンスをレビュー 11/01/13
  • No.170 有機JAS規格の改正論議が進行 10/12/23
  • No.169 都市農業は地下水の硝酸性窒素汚染を起こしていないか 10/12/22
  • No.168 アメリカで不耕起栽培が拡大中 10/12/21
  • No.167 アメリカが有機農業ハンドブック2010年秋版を刊行 10/12/03
  • No.166 EUが土壌生物多様性に関する報告書の第二弾を刊行 10/12/02
  • No.165 春先に深刻な農地の風食とその抑制策 10/11/04
  • No.164 家畜ふん堆肥製造過程での悪臭低減と窒素付加堆肥の製造 10/11/03
  • No.163 固液分離装置を用いた塩類濃度の低い乳牛ふん堆肥の製造 10/09/14
  • No.162 アジアではリン肥料の利用効率が低い 10/09/13
  • No.161 EUでは農地を良好な状態に保つのが直接支払の条件 10/08/26
  • No.160 OECD加盟国の農業環境問題に対する政策手法 10/08/25
  • No.159 ダイズ栽培輪換畑土壌の窒素肥沃度維持技術 10/07/20
  • No.158 アメリカが飼料への抗生物質添加禁止に動き出す 10/07/19
  • No.157 有機質肥料による養液栽培 10/06/22
  • No.156 EUが土壌生物の多様性に関する報告書を刊行 10/06/21
  • No.155 EUで土壌指令成立のめどたたず 10/06/20
  • No.154 全国の農耕地土壌図をインターネットで公開 10/05/27
  • No.153 EUのCAPに関する世論調査結果 10/05/26
  • No.152 農林水産省がGAPの共通基盤ガイドラインを策定 10/05/06
  • No.151 イギリスの有機質資材の施用実態 10/05/05
  • No.150 EUの第4回硝酸指令実施報告書 10/03/29
  • No.149 有機栽培水稲のLCAの試み 10/03/28
  • No.148 アメリカの有機食品の生産・販売・消費における最近の課題 10/03/04
  • No.147 アメリカの家畜ふん尿の状況 10/03/03
  • No.146 IPMを優先させたEUの農薬使用の枠組指令 10/02/01
  • No.145 甘い日本の農地への養分投入規制 10/01/31
  • No.144 欧米における農地へのリン投入規制の事例 09/12/28
  • No.143 米国が土壌くん蒸剤の安全使用強化に動き出す 09/12/27
  • No.142 英国の企業等の環境法令遵守支援ツール 09/11/28
  • No.141 米国が農薬ドリフト削減のためのラベル表示変更検討 09/11/27
  • No.140 農水省が米国有機農業法に基づく国内認証機関認定へ 09/10/31
  • No.139 家畜ふん堆肥窒素の新しい肥効評価方法 09/10/30
  • No.138 バイオ燃料作物の生産にどれだけの水が必要か 09/09/30
  • No.137 有機と慣行の農畜産物の栄養物含量に差はない 09/09/29
  • No.136 日本の輸入食品の残留動物用医薬品の概要 09/08/27
  • No.135 日本が輸入した農産物中の残留農薬の概要 09/08/26
  • No.134 日本の輸入食品監視統計の概要 09/08/25
  • No.133 アメリカ農務省が中国輸入食品の安全性を分析 09/08/24
  • No.132 黒ボク土のpHと可給態リン酸上昇が外来雑草を助長 09/08/03
  • No.131 施肥改善に対する意欲が不鮮明 09/08/02
  • No.130 イギリスが農業用資材に含まれる園芸用ピートを明確に表示するよう指示 09/06/26
  • No.129 国内でのナタネ栽培とバイオディーゼル生産の環境保全的意義は? 09/06/25
  • No.128 土壌の炭素ストックを高める農地の管理方法 09/05/26
  • No.127 意外に事故の多い石灰イオウ合剤 09/05/25
  • No.126 食品のカドミウム新基準値設定の動き 09/04/17
  • No.125 EUの水に関する世論調査 09/04/16
  • No.124 アメリカはエタノール蒸留穀物残渣の利用を研究 09/03/03
  • No.123 石灰質資材添加で家畜ふん堆肥の電気伝導度を下げる 09/03/02
  • No.122 イングランドが土・水・大気の優良農業規範を改正 09/02/17
  • No.121 イングランドが硝酸汚染防止規則を施行 09/02/16
  • No.120 カドミウム濃度の低い玄米とナスを生産する新技術 09/01/19
  • No.119 日本農業のエネルギー効率は先進国で最低クラス 09/01/18
  • No.118 家畜排泄物の利用促進を図る都道府県計画 08/12/12
  • No.117 鶏ふんのエネルギー利用とリンの回収 08/12/11
  • No.116 イギリスで農地系の野鳥が引き続き減少 08/11/26
  • No.115 世界の農業普及の流れ 08/11/25
  • No.114 OECDの指標でみた先進国農業の環境パフォーマンス 08/10/16
  • No.113 養豚場を除く畜産事業場からの排水規制が強化 08/10/15
  • No.112 望まれるリンの循環利用 08/09/16
  • No.111 人工衛星画像を利用した新しい世界の土地劣化情報 08/09/15
  • No.110 イギリス(イングランド)が自国の硝酸指令を強化 08/08/13
  • No.109 OECDがバイオ燃料の過熱に警鐘 08/08/12
  • No.108 農林水産省が8作物のIPM実践指標モデルを公表 08/08/11
  • No.107 「土壌管理のあり方に関する意見交換会」報告書 08/07/19
  • No.106 EU環境総局が土壌と気候変動に関する会合を主宰 08/07/18
  • No.105 EUとアメリカの農業環境政策の違い 08/07/17
  • No.104 超強力な生分解性プラスチック分解菌 08/06/03
  • No.103 ダイズの作付頻度を高めると土壌が硬くなる 08/06/02
  • No.102 農業がミシシッピー川の水と炭素の排出量を増やした 08/04/06
  • No.101 日本も農地土壌の炭素貯留機能を考慮 08/04/05
  • No.100 「今後の環境保全型農業に関する検討会」報告書 08/04/04
  • No.99 茨城県の「エコ農業茨城」構想 08/03/06
  • No.98 EUの生物多様性に関する世論調査 08/03/05
  • No.97 EUで土壌保護戦略指令案が合意に至らず 08/01/18
  • No.96 八郎潟を指定湖沼に追加 08/01/17
  • No.95 イギリスの下水汚泥の土壌影響に関する研究報告書 08/01/16
  • No.94 低濃度エタノールを用いた新しい土壌消毒法 07/12/19
  • No.93 飼料イネへの家畜ふん堆肥施用上の問題点 07/12/18
  • No.92 環境保全型農業に関する意識・意向調査結果 07/11/08
  • No.91 バイオ燃料製造拡大が農産物価格と環境に及ぼす影響 07/11/07
  • No.90 減農薬からIPMへ 07/10/11
  • No.89 中国における農業環境問題 07/10/10
  • No.88 ユーレップギャップがグローバルギャップに改称 07/10/09
  • No.87 超臨界水処理による家畜ふん尿のエネルギー利用技術 07/09/14
  • No.86 有機農業用家畜ふん堆肥の品質基準の必要性 07/09/04
  • No.85 気候緩和評価モデル 07/09/03
  • No.84 EUの第3回硝酸指令実施報告書 07/07/23
  • No.83 まだ続く土壌残留ディルドリンの作物吸収 07/05/31
  • No.82 EUREPGAP(ユーレップギャップ)の概要 07/05/30
  • No.81 農林水産省が基礎GAPを公表 07/04/28
  • No.80 抗生物質の代わりに茶葉で豚を飼育 07/04/27
  • No.79 MPSの環境にやさしい花の生産が日本でも開始 07/04/26
  • No.78 畜産事業所からの排水基準 07/04/25
  • No.77 日本での井戸水が原因の新生児メトヘモグロビン血症事例 07/03/26
  • No.76 有機農業の推進に関する基本的な方針(案) 07/03/25
  • No.75 家畜排泄物の利用の促進を図るための基本方針案 07/03/24
  • No.74 EUのLCAに基づいた環境政策 07/03/23
  • No.73 硝酸は人間に有毒ではない!? 07/02/15
  • No.72 形だけの農林水産省環境報告書2006 07/01/20
  • No.71 2005年度地下水の硝酸汚染の概要 07/01/19
  • No.70 「持続性の高い農業生産方式」の追加案 07/01/18
  • No.69 EUの環境および農業に関する世論調査結果 07/01/17
  • No.68 有機農業推進法が成立 06/12/17
  • No.67 野菜畑と河川底性動物との関係 06/12/16
  • No.66 EUの統合環境地理情報データベース 06/12/15
  • No.65 特別栽培農産物ガイドラインの一部改正案 06/12/14
  • No.64 亜鉛の排水基準が改正 06/12/13
  • No.63 コシヒカリへの地力窒素発現量予測 06/11/30
  • No.62 EUが農薬使用に関する戦略を提案 06/11/23
  • No.61 化学肥料の硝安も爆発物の材料 06/11/22
  • No.60 EUが「土壌保護戦略指令案」を提案 06/10/13
  • No.59 国内未登録除草剤残留牛ふん堆肥による障害 06/10/12
  • No.58 高塩類・高ECの家畜ふん堆肥への疑問 06/10/11
  • No.57 水稲有機農業の経済的な成立条件 06/10/10
  • No.56 キャベツおよびカンキツのIPM実践指標モデル案 06/09/10
  • No.55 環境にやさしいバラの生産技術 06/09/09
  • No.54 対象範囲の狭い「農地・水・環境保全向上対策」 06/08/12
  • No.53 朝取りホウレンソウは硝酸含量が高い 06/08/11
  • No.52 イギリスの食品保証制度 06/08/10
  • No.51 イギリスの葉菜類の硝酸含量調査結果 06/08/09
  • No.50 食品のカドミウム規制に終止符! 06/07/14
  • No.49 日射制御型拍動自動灌水装置の開発 06/07/13
  • No.48 EUでは農業が水質汚染の主因 06/07/12
  • No.47 花き生産における国際環境認証プログラム:MPS 06/06/15
  • No.46 アメリカ 耕地からの土壌侵食の実態 06/06/14
  • No.45 コンニャク根腐病対策の新展開 06/06/13
  • No.44 ヘアリーベッチ栽培に補助金を交付 06/05/11
  • No.43 亜鉛の基準に関する動き 06/05/10
  • No.42 食品中カドミウムの国際基準案最終段階 06/05/09
  • No.41 長崎県版GAP(適正農業規範) 06/04/06
  • No.40 イギリスの農薬使用規範 06/04/05
  • No.39 成分表示と消費者の価格許容調査 06/03/15
  • No.38 環境保全に関する意識・意向調査結果 06/03/14
  • No.37 福島県の「環境にやさしい農業」 06/02/27
  • No.36 流出水への監視強化へ 06/02/26
  • No.35 持続農業法施行規則の一部改正 06/02/25
  • No.34 欧州の水系汚染対策 06/02/24
  • No.33 家畜ふん堆肥施用量計算ソフト 06/01/19
  • No.32 JAS規格が一部改正 06/01/18
  • No.31 残留農薬ポジティブリスト制度の導入 06/01/17
  • No.30 EUの農業環境支払事務の会計監査 05/11/29
  • No.29 有機畜産関連の日本農林規格告知 05/11/28
  • No.28 牛ふん堆肥によるコシヒカリ栽培技術 05/11/08
  • No.27 福岡県「農の恵み事業」 05/11/07
  • No.26 フードチェーン・アプローチ 05/09/23
  • No.25 輪換畑ダイズ収量低下の原因 05/09/22
  • No.24 有機農業に対する政府の取組姿勢 05/09/21
  • No.23 定植前リン酸苗施用法 05/08/31
  • No.22 輸入蓄養マグロのダイオキシン類濃度 05/08/30
  • No.21 フード・マイル計算の難しさ 05/08/29
  • No.20 続・コメのカドミウム基準情報 05/07/26
  • No.19 殺菌剤耐性いもち病菌の出現 05/07/25
  • No.18 総合的病害虫・雑草管理(IPM)実践指針案 05/07/23
  • No.17 精米カドミウム含量の動向 05/05/19
  • No.16 家畜ふん堆肥中の抗生物質耐性菌 05/05/18
  • No.15 水田の汚濁物質排出量 05/05/17
  • No.14 北海道「遺伝子組換え」条例 05/04/21
  • No.13 北海道「食の安全・安心条例」 05/04/20
  • No.12 「農業生産活動規範」とは 05/04/19
  • No.11 湖沼の水質保全はどうなる 05/04/18
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  • No.125 EUの水に関する世論調査

    〜水質汚染の主因として工業と農業が指摘〜

    ●水に関する世論調査

     EU(欧州連合)の執行機関である欧州委員会は,2009年1月下旬に加盟27か国の市民を対象に表流水(河川,湖沼,河口,沿岸水。地下水は対象外)について世論調査を実施し,2009年3月に報告書を公開した(European Commission (2009) Flash EB Series #261. Flash Eurobarometer on water - Analytical report. 95p.要約版)。  今後の水行政に役立たせるために,この調査では,EU市民が,自国の水問題(表流水の質と量)について,その状態に関する公的機関の情報提供をどのように評価しているか,水問題をどの程度深刻と認識しているか,水問題に脅威を与えている要因をどう理解しているのか,最近の水問題の動向をどう認識しているのか,水問題の軽減のために個人的にどのような行動をとっているかなどを調べた。その一部を紹介する。

    ●水問題の現状についての情報提供

     「貴方の国の表流水の現在の状態についての情報提供をどの程度と感じていますか?」との設問に対して,EU全体では,(1) 非常に良く情報提供されている5%,(2) かなり良く情報提供されている38%,(3) あまり情報提供されていない40%,(4) 全く情報提供されていない16%との回答であった。  「情報提供されている」(非常に良く+かなり良く)との回答率はEU全体では43%で,必ずしも高いとはいえない。そのなかで,キプロス78%,フィンランド62%,オーストリア61%では,情報提供されているとの回答率が非常に高かった。キプロスでの回答率が突出していたのは,キプロスでは水不足が最も深刻で,最近,週3日は日に8時間しか給水されない状態が続いており,そうした水情報が良く提供されているためと理解されている。

    ●水問題の深刻さに対する認識

     水問題は水質問題と水量問題に大別される。

    (A)水量  水量問題とは,洪水のような水過剰問題や,干ばつや水の過剰消費による水不足を意味すると明記して調査を行ない,EU全体では,(1) 非常に深刻である27%,(2) かなり深刻である36%,(3) 深刻ではない24%,(4) 全く問題ない11%の回答率となった。「深刻である」(非常に+かなり)との回答は63%に達し,EU全体では水量問題がかなり深刻であることがうかがえた。  「非常に深刻」との回答率が高かった国は,キプロスがダントツの84%,その他,ポルトガル55%,ギリシャ53%など,地中海沿岸の国に多かった。他方,「非常に深刻」との回答率が低かった国は,フィンランドが1%で事実上なし,10%未満がエストニア,ラトビア,オーストリア,デンマーク,オランダであった(図1)。

    (B)水質問題  水質問題とは,水の汚染に加えて,ダムや運河などの物理的構造物による生態系の撹乱も含んでいることを明記して調査を行ない,EU全体では,(1) 非常に深刻である30%,(2) かなり深刻である38%,(3) 深刻ではない21%,(4) 全く問題ない7%の回答率がえられた。「深刻である」(非常に+かなり)との回答は68%に達し,EU全体では水質問題がかなり深刻であることがうかがえる。そして,「非常に深刻だ」との回答率が高い国は,ルーマニア61%,キプロス59%,ポルトガル55%,ギリシャ51%。他方,「非常に深刻だ」との回答率が低い国は,ドイツとフィンランド,オランダが8%であった(図2)。

    (C)水質問題の変化  「過去5年間に貴方の国では表流水の水質が変化したと考えるか」との設問に対して,EU全体の回答率は,(1) 悪化した37%,(2) 変わらない30%,(3) 改善した27%であった。「悪化した」との回答率が高い国は,キプロス75%,ギリシャ71%,ルーマニア61%。「変わらない」との回答率が高い国は,デンマーク48%,オーストリア42%,ルクセンブルク41%。「改善した」との回答率が高い国は,オランダ48%,ドイツ46%,ベルギー41%であった。  後述するように,EU市民の多くが,汚染原因の双璧として工業と農業を指摘している。ところが,農業における窒素やリンの投入量が多く,農業に起因した水質汚染が深刻とされてきたオランダで,最近の5年間に改善したとの回答率が高く,水質問題が非常に深刻だとの回答率が8%と低かったのは意外に感じられる。この点について報告書は具体的記述を行なっていない。環境保全型農業レポート「No.114 OECDの指標でみた先進国農業の環境パフォーマンス」に紹介したが,1990-92年に比べて2002-04年には,集約農業で有名なオランダを始めとする国々では,農業における剰窒素量や余剰リン量が激減したことが,この背景にあると考えられる。

    ●水の状態に影響を与えている要因

     水の状態に影響を与えている要因[(1) 家庭における水の消費と排水,(2) 農業における水,農薬,肥料の使用,(3) 工業における水の使用と汚染,(4)水力発電とその冷却水,(5) ツーリズム,(6) 水運(港,運河,船からの漏出)]について,影響の程度(大きく,多少は,少し,なし)を質問した。  EU全体では,各要因について,「大きく影響を与えている」との回答率は,工業72%,農業66%,家庭45%,水運48%,水力発電30%,ツーリズム23%で,工業と農業が抜きんでていた(図3)。  大部分の加盟国で,影響を大きく与えているとの回答率が最も高かった要因は「工業」で,次いで「農業」であったが,アイルランド,デンマーク,ルクセンブルク,フランス,スロベニアでは「農業」という回答率のほうが高かった。そして,農業について,「大きく影響を与えている」との回答率が高かった国は,フランス86%,ギリシャ84%,ポルトガル83%,ベルギー74%,ハンガリー73%,スペイン71%などであった(図4)。そして,オランダでは農業が大きく影響を与えているとの回答率は49%と予想外に低かった。これにも,最近におけるオランダでの余剰養分量の大幅な減少が反映していると推定される。

    ●水問題に及ぼす気候変動の予想される影響

     EU全体では,気候変動は「水問題に影響なし」とする回答は7%だけで,洪水の増加,海面の上昇,水不足や干ばつの増加,生態系の変化はいずれも20%台の同程度の回答率であった(図5)。しかし,図にはないが,国別には大きな差があり,次のようになっている。  (1) イギリス63%,アイルランド62%,ドイツ60%では,気候変動が水の過剰(海面上昇または洪水の増加)を引き起こすとの回答が最も高かった。  (2) キプロス74%とギリシャ48%では,気候変動で水不足が引き起こされるとの回答率が最も高かった。  (3) フィンランドでは,気候変動が生態系に与える影響が最も重要との回答率が最も高かった(44%)。

    ●集水域管理計画プランについての認識

     EUは水枠組指令(環境保全型農業レポート「No.34 欧州の水系汚染対策」)によって,今後,河川を中心にした集水域ごとに表流水や地下水を合わせて総合的に水を管理することとしており,表流水については2015年までに第1期の目標を達成することを目指している。そして,2009年には集水域管理プランを確定することとしており,その過程で公的機関や関係者にコンサルテーション(パブリックコメント募集)することになっている。そこで,回答者が住んでいる地域の集水域管理プランのコンサルテーションを知っているか,また,それに参加したか,これから参加を求められれば,見解を表すつもりがあるかを質問した。  その結果,EU全体の平均で,河川を中心とした集水域管理プランについてのコンサルテーションについて,知っていた者は14%で,80%が知らなかった。また,知っていたか否かにかかわらず,コンサルテーションに関心がないとする者が39%,関心があり,参加したか参加する意志のあり者が52%であった。

    ●日本における水に関する世論調査

     日本では内閣府の大臣官房政府広報室の世論調査で,1986年以来,数年おきに水にかかわる世論調査が実施されており,最近では2008年6月に「水に関する世論調査」が行われた。調査内容はEUのものと異なるが,その一部を紹介する。  水環境に関する意識調査の一部として,河川,湖沼や都市内の水路など身近な水辺の環境に対する満足度が調査された。全体では,第1位の回答が「満足している」40.7%で,次いで「水質が悪い」29.6%,「生物を育む空間が少ない」22.8%,「水辺空間そのものが少なく,十分でない」14.0%,「景観が悪い」13.3%,「水辺に近づきにくい」13.1%などの不満が指摘された(表1)。

     内閣府の調査では,水の状態を不満足な状態にしている要因(工業,農業,生活など)が何であるかについての問いかけを行なっていない。  上述の結果だけをみると,日本の水環境に満足している者が多いとの印象がえられるかもしれない。しかし,回答者の居住地別データをみると,大都市,東京都区部,政令指定都市では,「水質が悪い」が「満足している」よりも回答率が高く,第1位の回答となっている。そして,中都市,小都市,町村では「満足している」が第1位となっている。この結果から,人口の密集した大都会でこそ,身近な水環境が劣悪で,地方の中小都市や田舎の水環境はあまり深刻な状態になっていないとの印象が与えられるだろう。その印象から,農業が水環境に深刻な影響を与えていることが打ち消されかねない。

    ●日本では農業による水への影響が軽視されている

     日本でも地下水だけでなく,表流水に対しても農業が大きな影響を与えていることが問題になっている(環境保全型農業レポート.2004年9月1日号.「2.総務省が湖沼の水質保全で農業などからの負荷削減の取組強化の必要性を指摘」)。  EUでは水の状態に影響を与えている二大要因として,工業と農業が問題になっているが,日本では農業による影響があまり重視されていない。その原因の一つとして,農業による表流水や地下水の汚染の実態を示す調査データが多くないことがある。例えば,環境省を中心に都道府県が地下水の水質実態の調査を実施している。この調査では,都道府県によって異なるが,都道府県をメッシュに区切って井戸水を調査しており,そのメッシュは市街地で1〜2 km,その周辺地域では4〜5 kmを目安としている。日本では農村部といっても,例えば,4×4 km,つまり1,600 haが農地だけの地域は,平野の水田地帯を除くときわめて少ない。台地の上では,住宅地や森林などと混在した状態で農地が分散しているので,農業からの負荷が希釈されたり,農業や他の要因からの負荷の寄与率が分からなかったりして,農業からの負荷が一部の例を除いて不鮮明になっている。  OECDは,加盟国の農業と環境の関係について報告書(OECD (2008) Environmental Performance of Agriculture in OECD Countries Since 1990. 575p. OECD Publication, Paris)を刊行しており,その一部を環境保全型農業レポート「No.114 OECDの指標でみた先進国農業の環境パフォーマンス」に紹介した。その報告書の日本に関する各論部分で,「日本では,農業地帯を含め,全国にわたって,河川,湖沼,沿岸水や地下水の水質が30年以上もモニタリングされているが,農地と非農地が混在し合っており,水質汚染における農業セクターのシェア(寄与率)が正確に確認されていない。」と指摘されている。  1986〜1993年にわたって26都道府県の農村部364か所の井戸水,湧水,温泉水を調査した結果(藤井國博・岡本玲子・山口武則・大嶋秀雄・大政謙次・芝野和夫 (1997) 農村地域における地下水の水質に関する調査データ(1986〜1993年).農業環境技術研究所資料.20: 1329)によると,硝酸性窒素濃度が「水道法」の水質基準10 mg NO3-N/Lを超えた割合をみると,農村部では集落や市街地よりも,畑地帯55%,果樹地帯26%,水田地帯16%など,農地地帯での汚染が深刻になっている(表2)。  こうした点からも,農業による負荷を正しく認識して,公開しつつ,必要な対策を講じていくことが必要になっている。

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