環境保全型農業レポート > No.76 有機農業の推進に関する基本的な方針(案)
記事一覧
  • No.219 日本農業のエネルギー消費構造 12/12/17
  • No.218 アメリカの有機農業者への金銭的直接支援の概要 12/12/16
  • No 217 道路に近い市街地で栽培された野菜の重金属濃度 12/11/26
  • No.216 未熟堆肥は作物の土壌からの重金属吸収を促進する? 12/11/25
  • No.215 全米有機プログラム(NOP)規則ハンドブック2012年版 12/11/24
  • No.214 ソイル・アソシエーションの有機施設栽培基準 12/10/26
  • No.213 イギリスではポリトンネルが禁止に? 12/10/25
  • No.212 EUの有機農業における家畜飼養密度と家畜ふん尿施用量の上限 12/09/24
  • No.211 有機と慣行農業による収量差をもたらしている要因 12/09/23
  • No.210 EU加盟国の有機農業に対する公的支援の概要 12/08/24
  • No.209 窒素安定同位体比は有機農産物の判別に使えるのか 12/07/20
  • No.208 デンマーク農業における窒素・リンの余剰量の削減 12/07/19
  • No.207 有機農業の理念と現実 12/07/02
  • No.206 EUが有機農業規則の問題点を点検 12/07/01
  • No.205 イングランドの農業者は持続可能な土壌管理の知識を十分持っているか 12/06/05
  • No.204 バイオ素材をベースにしたプラスチックの持続可能性評価 12/06/04
  • No.203 OECD加盟国における水質汚染 12/05/08
  • No.202 ヨーロッパの河川における水質汚染の動向 12/05/07
  • No.201 有機農産物の日本農林規格が改正 12/03/31
  • No.200 薬用石鹸成分,トリクロサンの生物への影響 12/03/30
  • No.199 EUにおけるバイオガス生産の現状と規制の現状 12/03/06
  • No.198 トウモロコシのエタノール蒸留粕の飼料価値と飼料供給に与える影響 12/03/05
  • No.197 コスト効果の高い余剰窒素削減政策は何か 12/02/01
  • No.196 世界の食料生産のための農地と水資源の現状と課題 12/01/31
  • No.195 福島県の農林地除染基本方針とその問題点 11/12/19
  • No.194 アメリカの養豚 ふん尿管理の動向 11/12/18
  • No.193 IAEA調査団(2011年10月)の最終報告書 11/11/24
  • No.192 岡山・香川両県から瀬戸内海への窒素とリンの負荷量 11/11/23
  • No.191 IAEA調査団(2011年10月)の予備報告書 11/10/31
  • No.190 放射能汚染事故時に如何に対処すべきか 11/10/12
  • No.189 農林水産省が農地土壌除染技術の成果を公表 11/10/11
  • No.188 アメリカの有機と慣行のリンゴ生産 11/09/20
  • No.187 有機JAS以外の有機農業の実態調査結果 11/08/22
  • No.186 カドミウム関係法律の改正とコメの濃度低減指針 11/08/21
  • No.185 イギリスが国土の生態系サービスを評価 11/08/20
  • No.184 西ヨーロッパと他国の農業生物多様性の概念の違い 11/07/21
  • No.183 中央農研が総合的雑草管理マニュアルを刊行 11/07/20
  • No.182 ビニールハウスは放射能をどの程度防げるのか 11/07/19
  • No.181 大気からの放射性核種の作物体沈着 11/06/13
  • No.180 放射性汚染土壌を下層に埋設する表層埋没プラウ 11/06/06
  • No.179 チェルノブイリ原子力発電所事故20年後のIAEA報告書 11/05/20
  • No.178 農薬の使用状況と残留状況調査の結果(国内産農産物) 11/04/19
  • No.177 キャッチクロップ導入と硝酸溶脱軽減効果 11/04/18
  • No.176 イギリスが世界の食料・農業の将来展望を刊行 11/04/17
  • No.175 2011年度から環境保全型農業実践者に支援金を直接支払い 11/03/28
  • No.174 経済不況は割高な環境保全農産物需要を抑制するのか 11/02/26
  • No.173 施設ギク農家の肥料投入行動とその技術的意識 11/02/25
  • No.172 世界の有機農業の現状(2) 11/01/14
  • No.171 OECDが日本の環境パフォーマンスをレビュー 11/01/13
  • No.170 有機JAS規格の改正論議が進行 10/12/23
  • No.169 都市農業は地下水の硝酸性窒素汚染を起こしていないか 10/12/22
  • No.168 アメリカで不耕起栽培が拡大中 10/12/21
  • No.167 アメリカが有機農業ハンドブック2010年秋版を刊行 10/12/03
  • No.166 EUが土壌生物多様性に関する報告書の第二弾を刊行 10/12/02
  • No.165 春先に深刻な農地の風食とその抑制策 10/11/04
  • No.164 家畜ふん堆肥製造過程での悪臭低減と窒素付加堆肥の製造 10/11/03
  • No.163 固液分離装置を用いた塩類濃度の低い乳牛ふん堆肥の製造 10/09/14
  • No.162 アジアではリン肥料の利用効率が低い 10/09/13
  • No.161 EUでは農地を良好な状態に保つのが直接支払の条件 10/08/26
  • No.160 OECD加盟国の農業環境問題に対する政策手法 10/08/25
  • No.159 ダイズ栽培輪換畑土壌の窒素肥沃度維持技術 10/07/20
  • No.158 アメリカが飼料への抗生物質添加禁止に動き出す 10/07/19
  • No.157 有機質肥料による養液栽培 10/06/22
  • No.156 EUが土壌生物の多様性に関する報告書を刊行 10/06/21
  • No.155 EUで土壌指令成立のめどたたず 10/06/20
  • No.154 全国の農耕地土壌図をインターネットで公開 10/05/27
  • No.153 EUのCAPに関する世論調査結果 10/05/26
  • No.152 農林水産省がGAPの共通基盤ガイドラインを策定 10/05/06
  • No.151 イギリスの有機質資材の施用実態 10/05/05
  • No.150 EUの第4回硝酸指令実施報告書 10/03/29
  • No.149 有機栽培水稲のLCAの試み 10/03/28
  • No.148 アメリカの有機食品の生産・販売・消費における最近の課題 10/03/04
  • No.147 アメリカの家畜ふん尿の状況 10/03/03
  • No.146 IPMを優先させたEUの農薬使用の枠組指令 10/02/01
  • No.145 甘い日本の農地への養分投入規制 10/01/31
  • No.144 欧米における農地へのリン投入規制の事例 09/12/28
  • No.143 米国が土壌くん蒸剤の安全使用強化に動き出す 09/12/27
  • No.142 英国の企業等の環境法令遵守支援ツール 09/11/28
  • No.141 米国が農薬ドリフト削減のためのラベル表示変更検討 09/11/27
  • No.140 農水省が米国有機農業法に基づく国内認証機関認定へ 09/10/31
  • No.139 家畜ふん堆肥窒素の新しい肥効評価方法 09/10/30
  • No.138 バイオ燃料作物の生産にどれだけの水が必要か 09/09/30
  • No.137 有機と慣行の農畜産物の栄養物含量に差はない 09/09/29
  • No.136 日本の輸入食品の残留動物用医薬品の概要 09/08/27
  • No.135 日本が輸入した農産物中の残留農薬の概要 09/08/26
  • No.134 日本の輸入食品監視統計の概要 09/08/25
  • No.133 アメリカ農務省が中国輸入食品の安全性を分析 09/08/24
  • No.132 黒ボク土のpHと可給態リン酸上昇が外来雑草を助長 09/08/03
  • No.131 施肥改善に対する意欲が不鮮明 09/08/02
  • No.130 イギリスが農業用資材に含まれる園芸用ピートを明確に表示するよう指示 09/06/26
  • No.129 国内でのナタネ栽培とバイオディーゼル生産の環境保全的意義は? 09/06/25
  • No.128 土壌の炭素ストックを高める農地の管理方法 09/05/26
  • No.127 意外に事故の多い石灰イオウ合剤 09/05/25
  • No.126 食品のカドミウム新基準値設定の動き 09/04/17
  • No.125 EUの水に関する世論調査 09/04/16
  • No.124 アメリカはエタノール蒸留穀物残渣の利用を研究 09/03/03
  • No.123 石灰質資材添加で家畜ふん堆肥の電気伝導度を下げる 09/03/02
  • No.122 イングランドが土・水・大気の優良農業規範を改正 09/02/17
  • No.121 イングランドが硝酸汚染防止規則を施行 09/02/16
  • No.120 カドミウム濃度の低い玄米とナスを生産する新技術 09/01/19
  • No.119 日本農業のエネルギー効率は先進国で最低クラス 09/01/18
  • No.118 家畜排泄物の利用促進を図る都道府県計画 08/12/12
  • No.117 鶏ふんのエネルギー利用とリンの回収 08/12/11
  • No.116 イギリスで農地系の野鳥が引き続き減少 08/11/26
  • No.115 世界の農業普及の流れ 08/11/25
  • No.114 OECDの指標でみた先進国農業の環境パフォーマンス 08/10/16
  • No.113 養豚場を除く畜産事業場からの排水規制が強化 08/10/15
  • No.112 望まれるリンの循環利用 08/09/16
  • No.111 人工衛星画像を利用した新しい世界の土地劣化情報 08/09/15
  • No.110 イギリス(イングランド)が自国の硝酸指令を強化 08/08/13
  • No.109 OECDがバイオ燃料の過熱に警鐘 08/08/12
  • No.108 農林水産省が8作物のIPM実践指標モデルを公表 08/08/11
  • No.107 「土壌管理のあり方に関する意見交換会」報告書 08/07/19
  • No.106 EU環境総局が土壌と気候変動に関する会合を主宰 08/07/18
  • No.105 EUとアメリカの農業環境政策の違い 08/07/17
  • No.104 超強力な生分解性プラスチック分解菌 08/06/03
  • No.103 ダイズの作付頻度を高めると土壌が硬くなる 08/06/02
  • No.102 農業がミシシッピー川の水と炭素の排出量を増やした 08/04/06
  • No.101 日本も農地土壌の炭素貯留機能を考慮 08/04/05
  • No.100 「今後の環境保全型農業に関する検討会」報告書 08/04/04
  • No.99 茨城県の「エコ農業茨城」構想 08/03/06
  • No.98 EUの生物多様性に関する世論調査 08/03/05
  • No.97 EUで土壌保護戦略指令案が合意に至らず 08/01/18
  • No.96 八郎潟を指定湖沼に追加 08/01/17
  • No.95 イギリスの下水汚泥の土壌影響に関する研究報告書 08/01/16
  • No.94 低濃度エタノールを用いた新しい土壌消毒法 07/12/19
  • No.93 飼料イネへの家畜ふん堆肥施用上の問題点 07/12/18
  • No.92 環境保全型農業に関する意識・意向調査結果 07/11/08
  • No.91 バイオ燃料製造拡大が農産物価格と環境に及ぼす影響 07/11/07
  • No.90 減農薬からIPMへ 07/10/11
  • No.89 中国における農業環境問題 07/10/10
  • No.88 ユーレップギャップがグローバルギャップに改称 07/10/09
  • No.87 超臨界水処理による家畜ふん尿のエネルギー利用技術 07/09/14
  • No.86 有機農業用家畜ふん堆肥の品質基準の必要性 07/09/04
  • No.85 気候緩和評価モデル 07/09/03
  • No.84 EUの第3回硝酸指令実施報告書 07/07/23
  • No.83 まだ続く土壌残留ディルドリンの作物吸収 07/05/31
  • No.82 EUREPGAP(ユーレップギャップ)の概要 07/05/30
  • No.81 農林水産省が基礎GAPを公表 07/04/28
  • No.80 抗生物質の代わりに茶葉で豚を飼育 07/04/27
  • No.79 MPSの環境にやさしい花の生産が日本でも開始 07/04/26
  • No.78 畜産事業所からの排水基準 07/04/25
  • No.77 日本での井戸水が原因の新生児メトヘモグロビン血症事例 07/03/26
  • No.76 有機農業の推進に関する基本的な方針(案) 07/03/25
  • No.75 家畜排泄物の利用の促進を図るための基本方針案 07/03/24
  • No.74 EUのLCAに基づいた環境政策 07/03/23
  • No.73 硝酸は人間に有毒ではない!? 07/02/15
  • No.72 形だけの農林水産省環境報告書2006 07/01/20
  • No.71 2005年度地下水の硝酸汚染の概要 07/01/19
  • No.70 「持続性の高い農業生産方式」の追加案 07/01/18
  • No.69 EUの環境および農業に関する世論調査結果 07/01/17
  • No.68 有機農業推進法が成立 06/12/17
  • No.67 野菜畑と河川底性動物との関係 06/12/16
  • No.66 EUの統合環境地理情報データベース 06/12/15
  • No.65 特別栽培農産物ガイドラインの一部改正案 06/12/14
  • No.64 亜鉛の排水基準が改正 06/12/13
  • No.63 コシヒカリへの地力窒素発現量予測 06/11/30
  • No.62 EUが農薬使用に関する戦略を提案 06/11/23
  • No.61 化学肥料の硝安も爆発物の材料 06/11/22
  • No.60 EUが「土壌保護戦略指令案」を提案 06/10/13
  • No.59 国内未登録除草剤残留牛ふん堆肥による障害 06/10/12
  • No.58 高塩類・高ECの家畜ふん堆肥への疑問 06/10/11
  • No.57 水稲有機農業の経済的な成立条件 06/10/10
  • No.56 キャベツおよびカンキツのIPM実践指標モデル案 06/09/10
  • No.55 環境にやさしいバラの生産技術 06/09/09
  • No.54 対象範囲の狭い「農地・水・環境保全向上対策」 06/08/12
  • No.53 朝取りホウレンソウは硝酸含量が高い 06/08/11
  • No.52 イギリスの食品保証制度 06/08/10
  • No.51 イギリスの葉菜類の硝酸含量調査結果 06/08/09
  • No.50 食品のカドミウム規制に終止符! 06/07/14
  • No.49 日射制御型拍動自動灌水装置の開発 06/07/13
  • No.48 EUでは農業が水質汚染の主因 06/07/12
  • No.47 花き生産における国際環境認証プログラム:MPS 06/06/15
  • No.46 アメリカ 耕地からの土壌侵食の実態 06/06/14
  • No.45 コンニャク根腐病対策の新展開 06/06/13
  • No.44 ヘアリーベッチ栽培に補助金を交付 06/05/11
  • No.43 亜鉛の基準に関する動き 06/05/10
  • No.42 食品中カドミウムの国際基準案最終段階 06/05/09
  • No.41 長崎県版GAP(適正農業規範) 06/04/06
  • No.40 イギリスの農薬使用規範 06/04/05
  • No.39 成分表示と消費者の価格許容調査 06/03/15
  • No.38 環境保全に関する意識・意向調査結果 06/03/14
  • No.37 福島県の「環境にやさしい農業」 06/02/27
  • No.36 流出水への監視強化へ 06/02/26
  • No.35 持続農業法施行規則の一部改正 06/02/25
  • No.34 欧州の水系汚染対策 06/02/24
  • No.33 家畜ふん堆肥施用量計算ソフト 06/01/19
  • No.32 JAS規格が一部改正 06/01/18
  • No.31 残留農薬ポジティブリスト制度の導入 06/01/17
  • No.30 EUの農業環境支払事務の会計監査 05/11/29
  • No.29 有機畜産関連の日本農林規格告知 05/11/28
  • No.28 牛ふん堆肥によるコシヒカリ栽培技術 05/11/08
  • No.27 福岡県「農の恵み事業」 05/11/07
  • No.26 フードチェーン・アプローチ 05/09/23
  • No.25 輪換畑ダイズ収量低下の原因 05/09/22
  • No.24 有機農業に対する政府の取組姿勢 05/09/21
  • No.23 定植前リン酸苗施用法 05/08/31
  • No.22 輸入蓄養マグロのダイオキシン類濃度 05/08/30
  • No.21 フード・マイル計算の難しさ 05/08/29
  • No.20 続・コメのカドミウム基準情報 05/07/26
  • No.19 殺菌剤耐性いもち病菌の出現 05/07/25
  • No.18 総合的病害虫・雑草管理(IPM)実践指針案 05/07/23
  • No.17 精米カドミウム含量の動向 05/05/19
  • No.16 家畜ふん堆肥中の抗生物質耐性菌 05/05/18
  • No.15 水田の汚濁物質排出量 05/05/17
  • No.14 北海道「遺伝子組換え」条例 05/04/21
  • No.13 北海道「食の安全・安心条例」 05/04/20
  • No.12 「農業生産活動規範」とは 05/04/19
  • No.11 湖沼の水質保全はどうなる 05/04/18
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  • No.76 有機農業の推進に関する基本的な方針(案)

     2006年12月8日に成立した「有機農業の推進に関する法律」(有機農業推進法)(環境保全型農業レポート.No.68.有機農業推進法が成立.)において,有機農業を推進するために,まず農林水産大臣が,?.有機農業の推進に関する基本的な事項,?.有機農業の推進及び普及の目標に関する事項,?.有機農業の推進に関する施策に関する事項,?.その他有機農業の推進に関し必要な事項からなる「有機農業の推進に関する*基本的な方針」(基本方針)を定め,都道府県が基本方針に則して「有機農業の推進に関する施策についての計画」(推進計画)を定めるように努めることが規定されている。このため,農林水産省は,生産局の環境保全型農業対策室を事務局にして,食料・農業・農村政策審議会生産分科会での審議を踏まえて,基本方針(案)を策定した。同案は2007年3月1日〜3月15日にパブリックコメントにかけられて意見が公募された。基本方針(案)は2007年度から概ね5年間を対象としている。

    ●基本方針(案)の概要

    ?.有機農業の推進に関する基本的な事項

     有機農業推進法は有機農業を推進する際に,(a)農業者が容易に有機農業に従事できるようにすること,(b)農業者やその他の者が有機農産物の生産・流通・販売に取り組めるようにすること,消費者が有機農産物を容易に入手できるようにすること,(c)有機農業者,有機農産物の流通・販売者と消費者との連携を図ること,(d)農業者やその他の関係者の自主性を尊重することを基本理念としている。これらの基本理念が基本的事項として必要であるとしている。

    ?.有機農業の推進及び普及の目標に関する事項

     有機農業の推進および普及の目標は,国および地方公共団体,農業者,その他の関係者および消費者の共通の目標として設定する。特に、現状では農業者が有機農業に積極的に取り組めるようにするための条件整備に重点を置いて,次の目標を設定する。

     1)有機農業に関する技術の開発・体系化: 概ね2011年度までに,独立行政法人の試験研究機関,都道府県,大学,有機農業者,民間団体等で開発,実践されている様々な技術を適切に組み合わせることなどによって,安定的に品質・収量を確保できる有機農業の技術体系の確立を目指す。

     2)有機農業に関する普及指導の強化: 概ね2011年度までに,国や都道府県の研修などを活用して,普及指導員による有機農業の指導体制を整備した都道府県の割合を100%にすることを目指す。

     3)有機農業に対する消費者の理解の増進: 有機農業が化学肥料や農薬を使用しないことなどを基本とする環境と調和の取れた農業であることを知る消費者の割合について,概ね2011年度までに50%以上にすることを目指す。

     4)都道府県における推進計画の策定と有機農業の推進体制の強化: 推進計画を作成・実施している都道府県の割合を概ね2011年度までに100%にすることを目指す。あわせて全国各地において基本方針や推進計画に基づく取組を進めるため,有機農業者や有機農業の推進に自主的に取り組む民間の団体等をはじめ,消費者,行政及び農業団体等で構成する有機農業の推進を目的とする体制が整備されている都道府県等の割合を,概ね2011年度までに都道府県は100%,市町村は50%以上にすることを目指す。

    ?.有機農業の推進に関する施策に関する事項

    1.有機農業者等の支援

     1)有機農業の取組に対する支援: (a)有機農業に必要な技術の導入を支援するために,国および地方公共団体は,堆肥の生産・流通施設などの共同利用機械・施設の整備の支援や,「持続農業法」に基づく持続性の高い農業生産方式(環境保全型農業レポート.No.70.「持続性の高い農業生産方式」の追加案.)の導入計画の策定を有機農業者にも働きかけて,導入計画の策定・実施に必要な指導・助言,特例措置のある農業改良資金の貸付け等による支援に努める。また,(b)2007年度から実施する「農地・水・環境保全向上対策」(環境保全型農業レポート.No.54.対象範囲の狭い「農地・水・環境保全向上対策」を活用して,地域でまとまって環境負荷を大幅に低減する先進的な有機農業の取組に対して,取組農業者にも配分可能な交付金等を交付するように努める。さらに,(c)有機農業による地域農業の振興を全国に展開していくために,国は,そのモデルとなりうる有機農業を核とした地域振興計画を策定した地域に対して,計画の達成に必要な支援を行うとともに,有機農業者を始め関係団体等の協力を得て,地域における有機農業技術の実証,習得の支援を行う。

     2)新たに有機農業を行おうとする者の支援: (a)国および地方公共団体は,関係団体と連携・協力して,有機農業に取り組もうとする新規就農希望者が円滑に就農できるように,全国および都道府県における就農相談,道府県の農業大学校や就農準備校等での研修・教育,就農支援資金の貸付けによる支援に努める。また,(b)有機農業に取り組みたい新規就農希望者に対して適切な指導,助言が行われるように,国および都道府県は連携・協力して,国,地方公共団体および農業団体の職員等を対象に,必要な情報の提供を行うとともに,有機農業の意義や実態,有機農業を支援できる各種施策に関する知識,有機農業に関する技術などを習得させる研修の実施に努める。

     3)有機農業により生産される農産物の流通・販売面の支援: (a)有機農産物の有機農業者による販売活動を支援するために,国および地方公共団体は,農業団体等と連携・協力して,有機農業者に対して,有機農産物等の表示ルール・検査認証制度や生産情報公表農産物のJAS規格の活用,農産物の生産・出荷情報を流通・販売業者,実需者及び消費者に広く提供するネットカタログへの情報登録を積極的に働きかける。また,(b)直売施設やインターネットなどを利用した販売活動などに取り組む有機農業者についての情報を消費者等に提供するように努める。さらに,(c)農産物直売施設等の整備を支援するとともに,相当程度の量でまとまって有機農業により生産される農産物を確保できる場合は,農業団体等と連携・協力して,流通・販売業者,食品製造業者や外食業者と,有機農業者や農業団体等との意見交換や商談の場の設定,卸売市場流通における第三者販売・直荷引きの仕組みの適用などを通じ,有機農業者,農業団体等と,流通・販売業者や実需者との橋渡しに努める。

    2.技術開発等の促進

     1)有機農業に関する技術の研究開発の促進: (a)国および都道府県は協力して,有機農業者や民間団体等で開発,実践されている様々な技術を探索し,これらの技術を適切に組み合わせることなどによって,品質・収量を安定的に確保できる有機農業の技術体系を確立するために,当該技術の導入効果,適用条件を把握するための実証試験等に取り組む。また,(b)国は,既に取り組まれている有機農業技術の科学的解明や,これらを普及するために必要な技術の開発など,有機農業の推進に必要な研究課題を設定し,試験研究独立行政法人をはじめ,都道府県,民間,行政部局及び農業者等の参画を得て,有機農業に関する研究開発の計画的かつ効果的な推進に努める。(c)地方公共団体においては,その立地条件に適応した有機農業に関する技術の研究開発,および他の研究機関等が開発した技術を含む新たな技術を地域の農業生産の現場に適用するために必要な実証試験等に取り組むよう努める。

     2)研究開発の成果の普及: (a)有機農業技術の研究成果を普及するために,国および地方公共団体は,研究成果情報の提供に努めるとともに,都道府県の普及指導センターを中心に,地域の実情に応じ,市町村,農業団体等の地域の関係機関や,有機農業者,民間の団体等と連携・協力して,農業者への研究成果の普及に努める。また,(b)有機農業者および今後,有機農業を行おうとする者に対して,新たな研究成果や知見に基づいて効果的な指導・助言が行われるように,国および都道府県は協力して,普及指導員に対する有機農業に関する研究開発の成果等にかかる技術及び知識を習得させるための研修内容や情報提供の充実を図るとともに,有機農業者等の技術ニーズを的確に把握し,試験研究機関における研究開発に反映されるよう努める。

     3)消費者の理解と関心の増進: (a)国および地方公共団体は,有機農業に対する理解と関心を増進するために,ホームページ,シンポジウムの開催,資料の提供,優良な取組を行った有機農業者の顕彰等を通じて消費者に対して,自然循環機能の増進,環境への負荷の低減など有機農業の有する様々な機能についての知識の普及啓発に努める。また,(b)民間の団体等による消費者の理解と関心の増進のための自主的な活動を促進するために,これらの優良な取組についての顕彰,情報発信に取り組むとともに,消費者に対する有機農産物等の表示ルール・検査認証制度の普及啓発に努める。

     4)有機農業者と消費者の相互理解の増進: (a)国および地方公共団体は,有機農業者と消費者の相互理解の増進を図るために,食育や地産地消,農業・農村体験学習,都市農村交流などの活動と連携して,地域の消費者や児童・生徒,都市住民等が,地域の豊かな自然環境の下で営まれる有機農業に対する理解を深める取組の推進に努める。また,(b)民間団体等による有機農業者と消費者の相互理解を増進するための自主的な活動を促進するために,これらの優良な取組についての顕彰,情報発信に努める。

     5)調査の実施: 国は,有機農産物の生産,流通及び販売の動向などの基礎的な情報,有機農業に関する技術の開発・普及の動向,有機農業に関する優良な取組,その他有機農業の推進のために必要な情報を把握するために,地方公共団体,有機農業農産物の生産・流通・販売に関わる団体,その他有機農業の推進に関わる民間の団体等の協力を得て,必要な調査を実施する。

     6)国および地方公共団体以外の者が行う有機農業の推進のための活動の支援: (a)国および地方公共団体は,有機農業の推進に自主的に取り組む民間の団体等に対して,情報の提供,指導,助言その他の必要な支援を行うとともに,これらの者と連携・協力して相談窓口を設置するなど,必要な体制の整備に努める。また,(b)これらの民間の団体等による自主的な活動を促進するため,優良な取組の顕彰,情報発信に努める。

     7)国の地方公共団体に対する援助: (a)国は,都道府県に対して,推進計画の策定を積極的に働きかけるともに,その策定に必要な情報の提供や指導,助言に努める。また,(b)地方公共団体が行う有機農業の推進に関する施策の策定・実施に関し,必要な指導,助言を行うとともに,地方公共団体の職員が有機農業の意義や実態,有機農業の推進に関する施策の体系,及び先進的な取組事例など有機農業に関する総合的な知識を習得できる研修の実施に努める。

    ?.その他有機農業の推進に関し必要な事項

    1.関係機関・団体との連携・協力体制の整備

     1)国および地方公共団体における組織内の連携体制の整備: 有機農業の推進には有機農産物の生産・流通・消費に関する施策を計画的・一体的に推進する必要がある。施策の効果を高めるために,国はこれらの施策を担当する部局間の連携を確保する体制の整備に努める。また,地方公共団体に対し,同様の体制を整備するよう働きかける。

     2)有機農業の推進体制の整備: 国は,全国,地方ブロックの段階において,行政,農業団体等に加え,農業者,消費者,有機農業の推進活動を行っている民間の団体,その他の関係者で構成する有機農業の推進体制を整備して,有機農業の推進に取り組むよう努める。また,地方公共団体に対して,同様の体制を整備するよう働きかける。

     3)有機農業に関する技術の研究開発の推進体制の整備: 国は,全国,地方ブロックの段階において,試験研究機関,行政・普及担当部局,農業者,農業関係団体等の参加を得て,研究開発の計画的かつ効果的な推進のための意見交換,共同研究等の場の設定を図るとともに,関係する研究開発の進捗状況を一元的に把握するよう努める。また,地方公共団体に対し,同様の体制を整備するよう働きかける。

    2.有機農業者等の意見の反映

     国および地方公共団体は,有機農業の推進に関する施策を策定する際には,パブリックコメントの募集やその他の方法によって,有機農業者やその他の関係者および消費者の意見や考え方を積極的に把握し,これらを当該施策に反映させるように努める。また,国は,有機農産物の生産・流通・消費の動向を常に把握し,その進捗に応じた施策等の検討を行う体制を整備するとともに,地方公共団体に対し,同様の体制を整備するよう働きかける。

    3.基本方針の見直し

     この基本方針は,2007年度から概ね5年間を対象として定め,必要に応じて見直しの必要性や時期等を適時適切に検討する。

    ●基本方針(案)の問題点

     有機農業推進法と本基本方針(案)によって,国や都道府県が有機農業者を支援することが明確になった点は大きな前進だが,いくつかの問題が存在する。

    (1)環境負荷の軽減への取組姿勢が弱い

     第一は,環境負荷の軽減への取組姿勢が弱い点である。有機農業推進法では,第2条において,『「有機農業」とは,化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として,農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業をいう。』と規定している。しかし,基本方針(案)はアプリオリに有機農業は環境負荷が少ないものと見なしているように思える。確かに有機農業は化学合成農薬を使用しないため,化学合成農薬による環境負荷はない。しかし,有機質資材の過剰施用によって周辺環境への養分負荷が懸念されるケースが少なくない(環境保全型農業レポート.2004年9月22日号.2.集約的な有機栽培土壌における養分過剰蓄積の実態.)。また,有機農業であっても,作付の仕方次第では冬期の風食や夏期の土壌流出を起こしかねない。そうした環境負荷をできるだけ削減することを基本方針(案)にも明記すべきであろう。

     そのために,「?.有機農業の推進及び普及の目標に関する事項」の「(1)有機農業に関する技術の開発・体系化」のなかで,『安定的に品質・収量を確保できる有機農業の技術体系の確立を目指す』を『安定的に品質・収量を確保できるとともに,環境負荷をできるだけ軽減できる有機農業の技術体系の確立を目指す。』とすべきであろう。

    (2)有機農業に関する普及指導強化への不安

     第二は,有機農業に関する普及指導の強化に不安がある。普及指導員による有機農業の指導体制を整備した都道府県の割合を2011年度までに100%とすることが目標として掲げられた。これは大切なことである。しかし,全国的に農業改良普及員の定員は大きく削減されており,技術指導から経営指導に比重が移っている。このため,有機農業を農政の軸の一つに据えている一部の自治体を除くと,県でごく少数の普及員が研修などに参加して,有機農業担当普及指導員として登録されて目標は達成されようが,作目が多いなかで,実効性のある指導態勢が作られるのか不安がある。

    (3)国のリーダーシップの取り方が問題

     第三は,有機農業技術の開発・体系化に際して国のリーダーシップの取り方が問題となる。「?.有機農業の推進に関する施策に関する事項」の「2-(1)有機農業に関する技術の研究開発の促進」で,国が関係者の協力を得て民間技術を含めて技術を探索し,それらも含めて有機農業技術を確立するための研究課題設定を行い,研究開発のリーダーシップを旨が記されている。しかし,国,地方自治体,試験研究機関などの連絡組織をつくることは大切だが,これまで有機農業技術が民間主導で作られてきた経緯を踏まえれば,国が民間の有機農業団体等による技術の開発や体系化に資金提供をするといった支援も必要だろう。現に2006年6月に民間の有機農業関係諸団体が合同で「有機農業技術確立のための総合研究会」を持ち,これが「有機農業技術会議」に発展して有機農業技術を検討している。こうした活動への資金支援や委託事業も行って,それらの成果も取り込み,何から何まで国が主導すると頑張らなくても良いのではないか。

    (4)エコファーマー農産物ラベルとの関係

     第四は,持続性の高い農業生産方式の導入に必要な施設・機械の購入に資金の貸し付けに関係した問題である。同制度はエコファーマーに対して行うものであり,その農産物は通常,化学肥料や化学合成農薬を慣行施用量から2〜3割削減したものである。有機農業者にも貸し付けを行うのは良いが,その農産物にもエコファーマー農産物のラベル表示を義務づけると,有機農産物でないとの誤解を与えて問題となる。

    (5)JAS有機農業に適合した資材調達を容易にする問題

     第五は,有機農業推進法はJAS認定の有機農業だけを対象にしたものではないが,JAS認定の有機農業に適合した資材調達を容易にする問題である。JAS法認定の有機栽培では,製造工程において化学的に合成された物質が添加されていない肥料や土壌改良資材を使用する必要がある(環境保全型農業レポート.No.32.JAS規格が一部改正.)。しかし,日本では有機畜産が少なく,飼料に化学合成されたリン酸,銅,亜鉛が添加され,ナタネ油粕には遺伝子組換えナタネに由来する油粕を輸入したものが多い。有機質肥料や堆肥の適格性の表示制度を作り,その購入には補助金を支給するなどの支援が望まれる。

    (6)転換期の補助金および認証料補助の問題

     第六は有機農業者の希望が強い転換期の補助金や認証料補助の問題である。欧米ではこれらが支給されているが(環境保全型農業レポート.No.24.有機農業に対する政府の取組姿勢),これについて基本方針(案)は新たに制度を設けることを記していない。財務省の承認がないうちに行う旨を記すことはできないであろうが,前向きの記載が望まれる。

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