環境保全型農業レポート > No.75 家畜排泄物の利用の促進を図るための基本方針案
記事一覧
  • No.219 日本農業のエネルギー消費構造 12/12/17
  • No.218 アメリカの有機農業者への金銭的直接支援の概要 12/12/16
  • No 217 道路に近い市街地で栽培された野菜の重金属濃度 12/11/26
  • No.216 未熟堆肥は作物の土壌からの重金属吸収を促進する? 12/11/25
  • No.215 全米有機プログラム(NOP)規則ハンドブック2012年版 12/11/24
  • No.214 ソイル・アソシエーションの有機施設栽培基準 12/10/26
  • No.213 イギリスではポリトンネルが禁止に? 12/10/25
  • No.212 EUの有機農業における家畜飼養密度と家畜ふん尿施用量の上限 12/09/24
  • No.211 有機と慣行農業による収量差をもたらしている要因 12/09/23
  • No.210 EU加盟国の有機農業に対する公的支援の概要 12/08/24
  • No.209 窒素安定同位体比は有機農産物の判別に使えるのか 12/07/20
  • No.208 デンマーク農業における窒素・リンの余剰量の削減 12/07/19
  • No.207 有機農業の理念と現実 12/07/02
  • No.206 EUが有機農業規則の問題点を点検 12/07/01
  • No.205 イングランドの農業者は持続可能な土壌管理の知識を十分持っているか 12/06/05
  • No.204 バイオ素材をベースにしたプラスチックの持続可能性評価 12/06/04
  • No.203 OECD加盟国における水質汚染 12/05/08
  • No.202 ヨーロッパの河川における水質汚染の動向 12/05/07
  • No.201 有機農産物の日本農林規格が改正 12/03/31
  • No.200 薬用石鹸成分,トリクロサンの生物への影響 12/03/30
  • No.199 EUにおけるバイオガス生産の現状と規制の現状 12/03/06
  • No.198 トウモロコシのエタノール蒸留粕の飼料価値と飼料供給に与える影響 12/03/05
  • No.197 コスト効果の高い余剰窒素削減政策は何か 12/02/01
  • No.196 世界の食料生産のための農地と水資源の現状と課題 12/01/31
  • No.195 福島県の農林地除染基本方針とその問題点 11/12/19
  • No.194 アメリカの養豚 ふん尿管理の動向 11/12/18
  • No.193 IAEA調査団(2011年10月)の最終報告書 11/11/24
  • No.192 岡山・香川両県から瀬戸内海への窒素とリンの負荷量 11/11/23
  • No.191 IAEA調査団(2011年10月)の予備報告書 11/10/31
  • No.190 放射能汚染事故時に如何に対処すべきか 11/10/12
  • No.189 農林水産省が農地土壌除染技術の成果を公表 11/10/11
  • No.188 アメリカの有機と慣行のリンゴ生産 11/09/20
  • No.187 有機JAS以外の有機農業の実態調査結果 11/08/22
  • No.186 カドミウム関係法律の改正とコメの濃度低減指針 11/08/21
  • No.185 イギリスが国土の生態系サービスを評価 11/08/20
  • No.184 西ヨーロッパと他国の農業生物多様性の概念の違い 11/07/21
  • No.183 中央農研が総合的雑草管理マニュアルを刊行 11/07/20
  • No.182 ビニールハウスは放射能をどの程度防げるのか 11/07/19
  • No.181 大気からの放射性核種の作物体沈着 11/06/13
  • No.180 放射性汚染土壌を下層に埋設する表層埋没プラウ 11/06/06
  • No.179 チェルノブイリ原子力発電所事故20年後のIAEA報告書 11/05/20
  • No.178 農薬の使用状況と残留状況調査の結果(国内産農産物) 11/04/19
  • No.177 キャッチクロップ導入と硝酸溶脱軽減効果 11/04/18
  • No.176 イギリスが世界の食料・農業の将来展望を刊行 11/04/17
  • No.175 2011年度から環境保全型農業実践者に支援金を直接支払い 11/03/28
  • No.174 経済不況は割高な環境保全農産物需要を抑制するのか 11/02/26
  • No.173 施設ギク農家の肥料投入行動とその技術的意識 11/02/25
  • No.172 世界の有機農業の現状(2) 11/01/14
  • No.171 OECDが日本の環境パフォーマンスをレビュー 11/01/13
  • No.170 有機JAS規格の改正論議が進行 10/12/23
  • No.169 都市農業は地下水の硝酸性窒素汚染を起こしていないか 10/12/22
  • No.168 アメリカで不耕起栽培が拡大中 10/12/21
  • No.167 アメリカが有機農業ハンドブック2010年秋版を刊行 10/12/03
  • No.166 EUが土壌生物多様性に関する報告書の第二弾を刊行 10/12/02
  • No.165 春先に深刻な農地の風食とその抑制策 10/11/04
  • No.164 家畜ふん堆肥製造過程での悪臭低減と窒素付加堆肥の製造 10/11/03
  • No.163 固液分離装置を用いた塩類濃度の低い乳牛ふん堆肥の製造 10/09/14
  • No.162 アジアではリン肥料の利用効率が低い 10/09/13
  • No.161 EUでは農地を良好な状態に保つのが直接支払の条件 10/08/26
  • No.160 OECD加盟国の農業環境問題に対する政策手法 10/08/25
  • No.159 ダイズ栽培輪換畑土壌の窒素肥沃度維持技術 10/07/20
  • No.158 アメリカが飼料への抗生物質添加禁止に動き出す 10/07/19
  • No.157 有機質肥料による養液栽培 10/06/22
  • No.156 EUが土壌生物の多様性に関する報告書を刊行 10/06/21
  • No.155 EUで土壌指令成立のめどたたず 10/06/20
  • No.154 全国の農耕地土壌図をインターネットで公開 10/05/27
  • No.153 EUのCAPに関する世論調査結果 10/05/26
  • No.152 農林水産省がGAPの共通基盤ガイドラインを策定 10/05/06
  • No.151 イギリスの有機質資材の施用実態 10/05/05
  • No.150 EUの第4回硝酸指令実施報告書 10/03/29
  • No.149 有機栽培水稲のLCAの試み 10/03/28
  • No.148 アメリカの有機食品の生産・販売・消費における最近の課題 10/03/04
  • No.147 アメリカの家畜ふん尿の状況 10/03/03
  • No.146 IPMを優先させたEUの農薬使用の枠組指令 10/02/01
  • No.145 甘い日本の農地への養分投入規制 10/01/31
  • No.144 欧米における農地へのリン投入規制の事例 09/12/28
  • No.143 米国が土壌くん蒸剤の安全使用強化に動き出す 09/12/27
  • No.142 英国の企業等の環境法令遵守支援ツール 09/11/28
  • No.141 米国が農薬ドリフト削減のためのラベル表示変更検討 09/11/27
  • No.140 農水省が米国有機農業法に基づく国内認証機関認定へ 09/10/31
  • No.139 家畜ふん堆肥窒素の新しい肥効評価方法 09/10/30
  • No.138 バイオ燃料作物の生産にどれだけの水が必要か 09/09/30
  • No.137 有機と慣行の農畜産物の栄養物含量に差はない 09/09/29
  • No.136 日本の輸入食品の残留動物用医薬品の概要 09/08/27
  • No.135 日本が輸入した農産物中の残留農薬の概要 09/08/26
  • No.134 日本の輸入食品監視統計の概要 09/08/25
  • No.133 アメリカ農務省が中国輸入食品の安全性を分析 09/08/24
  • No.132 黒ボク土のpHと可給態リン酸上昇が外来雑草を助長 09/08/03
  • No.131 施肥改善に対する意欲が不鮮明 09/08/02
  • No.130 イギリスが農業用資材に含まれる園芸用ピートを明確に表示するよう指示 09/06/26
  • No.129 国内でのナタネ栽培とバイオディーゼル生産の環境保全的意義は? 09/06/25
  • No.128 土壌の炭素ストックを高める農地の管理方法 09/05/26
  • No.127 意外に事故の多い石灰イオウ合剤 09/05/25
  • No.126 食品のカドミウム新基準値設定の動き 09/04/17
  • No.125 EUの水に関する世論調査 09/04/16
  • No.124 アメリカはエタノール蒸留穀物残渣の利用を研究 09/03/03
  • No.123 石灰質資材添加で家畜ふん堆肥の電気伝導度を下げる 09/03/02
  • No.122 イングランドが土・水・大気の優良農業規範を改正 09/02/17
  • No.121 イングランドが硝酸汚染防止規則を施行 09/02/16
  • No.120 カドミウム濃度の低い玄米とナスを生産する新技術 09/01/19
  • No.119 日本農業のエネルギー効率は先進国で最低クラス 09/01/18
  • No.118 家畜排泄物の利用促進を図る都道府県計画 08/12/12
  • No.117 鶏ふんのエネルギー利用とリンの回収 08/12/11
  • No.116 イギリスで農地系の野鳥が引き続き減少 08/11/26
  • No.115 世界の農業普及の流れ 08/11/25
  • No.114 OECDの指標でみた先進国農業の環境パフォーマンス 08/10/16
  • No.113 養豚場を除く畜産事業場からの排水規制が強化 08/10/15
  • No.112 望まれるリンの循環利用 08/09/16
  • No.111 人工衛星画像を利用した新しい世界の土地劣化情報 08/09/15
  • No.110 イギリス(イングランド)が自国の硝酸指令を強化 08/08/13
  • No.109 OECDがバイオ燃料の過熱に警鐘 08/08/12
  • No.108 農林水産省が8作物のIPM実践指標モデルを公表 08/08/11
  • No.107 「土壌管理のあり方に関する意見交換会」報告書 08/07/19
  • No.106 EU環境総局が土壌と気候変動に関する会合を主宰 08/07/18
  • No.105 EUとアメリカの農業環境政策の違い 08/07/17
  • No.104 超強力な生分解性プラスチック分解菌 08/06/03
  • No.103 ダイズの作付頻度を高めると土壌が硬くなる 08/06/02
  • No.102 農業がミシシッピー川の水と炭素の排出量を増やした 08/04/06
  • No.101 日本も農地土壌の炭素貯留機能を考慮 08/04/05
  • No.100 「今後の環境保全型農業に関する検討会」報告書 08/04/04
  • No.99 茨城県の「エコ農業茨城」構想 08/03/06
  • No.98 EUの生物多様性に関する世論調査 08/03/05
  • No.97 EUで土壌保護戦略指令案が合意に至らず 08/01/18
  • No.96 八郎潟を指定湖沼に追加 08/01/17
  • No.95 イギリスの下水汚泥の土壌影響に関する研究報告書 08/01/16
  • No.94 低濃度エタノールを用いた新しい土壌消毒法 07/12/19
  • No.93 飼料イネへの家畜ふん堆肥施用上の問題点 07/12/18
  • No.92 環境保全型農業に関する意識・意向調査結果 07/11/08
  • No.91 バイオ燃料製造拡大が農産物価格と環境に及ぼす影響 07/11/07
  • No.90 減農薬からIPMへ 07/10/11
  • No.89 中国における農業環境問題 07/10/10
  • No.88 ユーレップギャップがグローバルギャップに改称 07/10/09
  • No.87 超臨界水処理による家畜ふん尿のエネルギー利用技術 07/09/14
  • No.86 有機農業用家畜ふん堆肥の品質基準の必要性 07/09/04
  • No.85 気候緩和評価モデル 07/09/03
  • No.84 EUの第3回硝酸指令実施報告書 07/07/23
  • No.83 まだ続く土壌残留ディルドリンの作物吸収 07/05/31
  • No.82 EUREPGAP(ユーレップギャップ)の概要 07/05/30
  • No.81 農林水産省が基礎GAPを公表 07/04/28
  • No.80 抗生物質の代わりに茶葉で豚を飼育 07/04/27
  • No.79 MPSの環境にやさしい花の生産が日本でも開始 07/04/26
  • No.78 畜産事業所からの排水基準 07/04/25
  • No.77 日本での井戸水が原因の新生児メトヘモグロビン血症事例 07/03/26
  • No.76 有機農業の推進に関する基本的な方針(案) 07/03/25
  • No.75 家畜排泄物の利用の促進を図るための基本方針案 07/03/24
  • No.74 EUのLCAに基づいた環境政策 07/03/23
  • No.73 硝酸は人間に有毒ではない!? 07/02/15
  • No.72 形だけの農林水産省環境報告書2006 07/01/20
  • No.71 2005年度地下水の硝酸汚染の概要 07/01/19
  • No.70 「持続性の高い農業生産方式」の追加案 07/01/18
  • No.69 EUの環境および農業に関する世論調査結果 07/01/17
  • No.68 有機農業推進法が成立 06/12/17
  • No.67 野菜畑と河川底性動物との関係 06/12/16
  • No.66 EUの統合環境地理情報データベース 06/12/15
  • No.65 特別栽培農産物ガイドラインの一部改正案 06/12/14
  • No.64 亜鉛の排水基準が改正 06/12/13
  • No.63 コシヒカリへの地力窒素発現量予測 06/11/30
  • No.62 EUが農薬使用に関する戦略を提案 06/11/23
  • No.61 化学肥料の硝安も爆発物の材料 06/11/22
  • No.60 EUが「土壌保護戦略指令案」を提案 06/10/13
  • No.59 国内未登録除草剤残留牛ふん堆肥による障害 06/10/12
  • No.58 高塩類・高ECの家畜ふん堆肥への疑問 06/10/11
  • No.57 水稲有機農業の経済的な成立条件 06/10/10
  • No.56 キャベツおよびカンキツのIPM実践指標モデル案 06/09/10
  • No.55 環境にやさしいバラの生産技術 06/09/09
  • No.54 対象範囲の狭い「農地・水・環境保全向上対策」 06/08/12
  • No.53 朝取りホウレンソウは硝酸含量が高い 06/08/11
  • No.52 イギリスの食品保証制度 06/08/10
  • No.51 イギリスの葉菜類の硝酸含量調査結果 06/08/09
  • No.50 食品のカドミウム規制に終止符! 06/07/14
  • No.49 日射制御型拍動自動灌水装置の開発 06/07/13
  • No.48 EUでは農業が水質汚染の主因 06/07/12
  • No.47 花き生産における国際環境認証プログラム:MPS 06/06/15
  • No.46 アメリカ 耕地からの土壌侵食の実態 06/06/14
  • No.45 コンニャク根腐病対策の新展開 06/06/13
  • No.44 ヘアリーベッチ栽培に補助金を交付 06/05/11
  • No.43 亜鉛の基準に関する動き 06/05/10
  • No.42 食品中カドミウムの国際基準案最終段階 06/05/09
  • No.41 長崎県版GAP(適正農業規範) 06/04/06
  • No.40 イギリスの農薬使用規範 06/04/05
  • No.39 成分表示と消費者の価格許容調査 06/03/15
  • No.38 環境保全に関する意識・意向調査結果 06/03/14
  • No.37 福島県の「環境にやさしい農業」 06/02/27
  • No.36 流出水への監視強化へ 06/02/26
  • No.35 持続農業法施行規則の一部改正 06/02/25
  • No.34 欧州の水系汚染対策 06/02/24
  • No.33 家畜ふん堆肥施用量計算ソフト 06/01/19
  • No.32 JAS規格が一部改正 06/01/18
  • No.31 残留農薬ポジティブリスト制度の導入 06/01/17
  • No.30 EUの農業環境支払事務の会計監査 05/11/29
  • No.29 有機畜産関連の日本農林規格告知 05/11/28
  • No.28 牛ふん堆肥によるコシヒカリ栽培技術 05/11/08
  • No.27 福岡県「農の恵み事業」 05/11/07
  • No.26 フードチェーン・アプローチ 05/09/23
  • No.25 輪換畑ダイズ収量低下の原因 05/09/22
  • No.24 有機農業に対する政府の取組姿勢 05/09/21
  • No.23 定植前リン酸苗施用法 05/08/31
  • No.22 輸入蓄養マグロのダイオキシン類濃度 05/08/30
  • No.21 フード・マイル計算の難しさ 05/08/29
  • No.20 続・コメのカドミウム基準情報 05/07/26
  • No.19 殺菌剤耐性いもち病菌の出現 05/07/25
  • No.18 総合的病害虫・雑草管理(IPM)実践指針案 05/07/23
  • No.17 精米カドミウム含量の動向 05/05/19
  • No.16 家畜ふん堆肥中の抗生物質耐性菌 05/05/18
  • No.15 水田の汚濁物質排出量 05/05/17
  • No.14 北海道「遺伝子組換え」条例 05/04/21
  • No.13 北海道「食の安全・安心条例」 05/04/20
  • No.12 「農業生産活動規範」とは 05/04/19
  • No.11 湖沼の水質保全はどうなる 05/04/18
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  • No.75 家畜排泄物の利用の促進を図るための基本方針案

     農林水産省生産局畜産部は家畜排泄物の利用促進を図るために,学識経験者等からなる「家畜排泄物の利用促進のための意見交換会」で意見交換を行ってきたが,それを踏まえて作成した「家畜排泄物の利用の促進を図るための基本方針案」について,2007年1月27日から2月27日までパブリックコメントを募集した。その結果を踏まえて基本方針が確定されるが,確定の前に,2007年3月8日付けで食料・農業・農村政策審議会会長から農林水産大臣に出された畜産物の価格等に関する答申書では,前提の一つとして『「家畜排泄物の利用の促進を図るための基本方針」を踏まえ,耕畜連携の推進等により家畜排泄物の利活用の一層の推進を図ること』が記載されていた。どうやら「基本方針案」を変更する意志がないと推察される。

    ●基本方針(案)の概要

     家畜排泄物の処理・利用が日本の畜産業発展の隘路となっている。基本方針(案)はこれを何とか解決する今後の施策の基本となるものである。

     国,都道府県,市町村,農業者,農業団体,その他の関係者はこの基本方針(案)に基づいて,相互に連携・協力を図りながら,家畜排泄物の利用促進を図る。その際,国は,都道府県,市町村,畜産業を営む者をはじめとする関係者に経費の補助、金融上の措置等必要な支援の実施に努めることが記されている。基本方針(案)は4つの部分からなる。

    ?.基本的な方向

     基本的な方向として,家畜排泄物の堆肥化の推進と家畜排泄物のエネルギーとしての利用等の推進が掲げられている。

    1.家畜排泄物の堆肥化の推進

     1)分離して発展してきた畜産と耕種の連携を強化する。このために,都道府県,市町村,農業団体等は,堆肥の利用促進のための協議会の機能強化に努め,地域における堆肥の供給者と需用者が必要とする情報(家畜排泄物の畜種別供給量,副資材の種類,処理期間,成分,時期別需用量,施用する作物の種類,運搬・散布の有無など)を収集・整理して,関係者が手軽に検索・活用できるようにネットワーク化に努める。

     2)家畜排泄物が過剰な地域では地域を越えた堆肥の流通の円滑化を図る。このために,都道府県,市町村,農業団体等は,堆肥センターの機能強化,堆肥の品質向上やペレット化,コントラクターの育成・充実等を通じて,堆肥の生産・運搬・散布の円滑化に努め,さらに必要に応じ,堆肥の調製・一時貯蔵・成分分析を耕種地域で行える体制を整備する。

     3)耕種農家によって堆肥に対するニーズの内容が異なるため,ニーズに即した堆肥を生産・供給する。このために,堆肥生産者は,需用者のニーズを的確に把握してニーズに即して堆肥を生産・供給するように努め,都道府県,市町村,農業団体等は,そのために必要な情報の提供などに努める。

    2.家畜排泄物のエネルギーとしての利用等の推進

     家畜排泄物が堆肥の需用量を超えて過剰に発生している地域では,必要に応じ,他のバイオマスの活用を含め,家畜排泄物の炭化・焼却処理,メタン発酵などを推進することによって,堆肥の需給状況の改善やエネルギー利用を図る。

    ?.処理高度化施設の整備目標の設定

     「家畜排泄物法」によって家畜排泄物の処理施設は整備されてきたが,処理施設をより高度なものにしてゆくために,「家畜排泄物法」において,都道府県が処理高度化施設(送風装置を備えた堆肥舎,その他の家畜排泄物の処理の高度化を図るための施設)の整備計画を作ることとされている。その計画の目標年次が基本方針(案)で平成27年(2015年)とされた。そもそも送風装置によって水分蒸発を早めて堆肥化を迅速にしても,それにともなって悪臭が飛散するなら,送風装置を備えているだけで処理高度化施設というのは奇妙であった。

     基本方針(案)では,処理高度化施設は,1)攪拌・通気装置を備えた大型の堆肥化施設や家畜排泄物のエネルギー利用施設などを主体とする施設で,2)ペレット化装置,混合装置,袋詰め装置、堆肥成分分析装置,マニュアスプレッダー,一時貯蔵施設等を整備して,堆肥の成分を明確にし,堆肥散布を支援できる施設であることが望ましく,3)汚水処理施設や脱臭装置を整備した施設が望ましいと記載された。

     都道府県は2015年を目標として,こうした設備を備えた処理高度化施設の整備計画を作成する。次の段階で,国や都道府県が計画に沿って畜産業者の施設を高度化するために支援することになろう。

    ?.家畜排泄物の利用の促進に関する技術の向上に関する基本的事項

     国,独立行政法人,公立試験研究機関等は,大学,民間企業等との連携を図りながら,次の技術開発に努める。1)耕種部門のニーズに即した堆肥調製技術,2)メタン発酵,炭化・焼却等による家畜排泄物のエネルギー利用技術,3)汚水処理技術(活性汚泥浄化処理技術,排泄物中の窒素量・リン量の低減技術等),4)堆肥化過程で発生する悪臭の低減技術,5)家畜排泄物の発生量を抑制するための飼養管理技術,6)堆肥の肥効特性を考慮した肥培管理技術。

     都道府県,市町村,農業団体の職員や地域内の指導的農業者に対して,中央,都道府県,地域の各段階において,畜産関係者には家畜排泄物の管理の適正化および利用の促進について,耕種関係者には堆肥の利用方法について,技術研修会,シンポジウム,現地実証試験等の実施に努める。また,畜産業者および耕種農業者はこれらに積極的に参加して技術習得に努める。

    ?.その他家畜排泄物の利用の促進に関する重要事項

     資源循環型畜産を推進する。このために,都道府県,市町村,農業団体等は,草地の整備,耕作放棄地,野草地,林地などの未利用土地資源を自給飼料基盤として利活用し,土地利用調整などによって,自給飼料基盤の一層の強化を図る。

     消費者への知識の普及啓発を行う。このために,都道府県や市町村は,家畜排泄物の管理の適正化および利用の促進が資源循環型社会の構築に果たす意義等について,消費者や地域住民への普及啓発に努める。また,畜産に関する食育の一環として,「ふれあい牧場」や「酪農教育ファーム」の活用,堆肥を使った地場農産物の学校給食への供給等を積極的に推進することにより,資源循環を基本とした畜産について,その理解の醸成に努める。

    ●基本方針(案)の問題点

     上記の基本方針(案)は一見無難なように思える。しかし,そのベースになった「家畜排泄物の利用促進のための意見交換会」では一部の委員から畜産サイドのエゴイスチックな意見が出されていたように(環境保全型農業レポート.No.58.高塩類・高ECの家畜ふん堆肥への疑問),基本方針(案)は畜産サイドの都合だけから構築されているといえる。今日の農政は,農業生産の持続可能性,食の安全・安心,環境の保全を同時に達成することを目指しているはずである。以下,その問題点をあげる。

    (1)食の安全・安心への配慮の欠如

     基本方針(案)には食の安全・安心という文言は全く出てこない。家畜排泄物やその未熟な堆肥には,人畜共通の病原体や抗生物質耐性菌(環境保全型農業レポート.No.16.家畜ふん堆肥中の抗生物質耐性菌の蔓延のリスクが存在する。

     農林水産省消費・安全局の補助事業で日本施設園芸協会(2003)がまとめた「生鮮野菜衛生管理ガイド」には,病原性大腸菌O-157などの病原体が家畜ふん堆肥から野菜に付着するのを防止するために,1)堆肥の水分を30%以下にすることが望ましい,2)ローダー,スコップなどの器具を原料用と製品用で区別する,3)製造過程で60℃以上の温度を2週間以上確保することが望ましいなど,これまでの常識からみると異常なまでに厳しい条件が記されている。

     これに対して,基本方針(案)は『発酵熱により雑草種子や寄生虫卵等の殺滅効果が期待できるという点で有利である』だけ記して,堆肥化したものは安全であるとの前提に立っている。消費者や耕種農業者に対して,安全な堆肥の供給を確保するために,堆肥の品質評価基準を策定して,基準を達成した堆肥を流通させるといった食の安全確保への姿勢がうかがえない。

    (2)環境の保全への配慮の不足

     基本方針(案)に出てくる環境問題は,畜産事業所からの排水規制への対応と悪臭防止だけである。耕種と畜産の双方によって表流水や地下水の汚染が深刻な地域が少なくない。そうした汚染が生じている地域については,都道府県および市町村が地域堆肥流通利用計画を策定し,家畜排泄物の発生量を抑制するための飼養管理技術を普及させる一方,地域内における耕種農家による堆肥利用を地域の堆肥受容量の範囲で積極的に推進し,それを超える堆肥については炭化・焼却やメタン発酵による家畜排泄物のエネルギー利用を図り,それでも過剰が生ずる場合には,地域の家畜飼養頭数の削減計画を立てるなど,地域の環境を保全する積極的な姿勢が打ち出される必要がある。

    (3)形だけの資源循環型畜産

     草地の整備,耕作放棄地など,未利用土地資源を自給飼料基盤として利活用することに加えて,土地利用調整によって,自給飼料基盤の一層の強化を図って資源循環型畜産を推進することが記載されている。このスローガンは繰り返し打ち出されているものの,1991年をピークに100万haを超えていた飼料作物の作付面積は,2006年度で89万8,100haに減少している。飼料生産基盤を強化するために,具体的にどのような措置を講ずるのか。それがない限り,絵に描いた餅にすぎない。このままではさらに飼料作物作付面積が減少し続けよう。

     
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