環境保全型農業レポート > No.134 日本の輸入食品監視統計の概要
記事一覧
  • No.219 日本農業のエネルギー消費構造 12/12/17
  • No.218 アメリカの有機農業者への金銭的直接支援の概要 12/12/16
  • No 217 道路に近い市街地で栽培された野菜の重金属濃度 12/11/26
  • No.216 未熟堆肥は作物の土壌からの重金属吸収を促進する? 12/11/25
  • No.215 全米有機プログラム(NOP)規則ハンドブック2012年版 12/11/24
  • No.214 ソイル・アソシエーションの有機施設栽培基準 12/10/26
  • No.213 イギリスではポリトンネルが禁止に? 12/10/25
  • No.212 EUの有機農業における家畜飼養密度と家畜ふん尿施用量の上限 12/09/24
  • No.211 有機と慣行農業による収量差をもたらしている要因 12/09/23
  • No.210 EU加盟国の有機農業に対する公的支援の概要 12/08/24
  • No.209 窒素安定同位体比は有機農産物の判別に使えるのか 12/07/20
  • No.208 デンマーク農業における窒素・リンの余剰量の削減 12/07/19
  • No.207 有機農業の理念と現実 12/07/02
  • No.206 EUが有機農業規則の問題点を点検 12/07/01
  • No.205 イングランドの農業者は持続可能な土壌管理の知識を十分持っているか 12/06/05
  • No.204 バイオ素材をベースにしたプラスチックの持続可能性評価 12/06/04
  • No.203 OECD加盟国における水質汚染 12/05/08
  • No.202 ヨーロッパの河川における水質汚染の動向 12/05/07
  • No.201 有機農産物の日本農林規格が改正 12/03/31
  • No.200 薬用石鹸成分,トリクロサンの生物への影響 12/03/30
  • No.199 EUにおけるバイオガス生産の現状と規制の現状 12/03/06
  • No.198 トウモロコシのエタノール蒸留粕の飼料価値と飼料供給に与える影響 12/03/05
  • No.197 コスト効果の高い余剰窒素削減政策は何か 12/02/01
  • No.196 世界の食料生産のための農地と水資源の現状と課題 12/01/31
  • No.195 福島県の農林地除染基本方針とその問題点 11/12/19
  • No.194 アメリカの養豚 ふん尿管理の動向 11/12/18
  • No.193 IAEA調査団(2011年10月)の最終報告書 11/11/24
  • No.192 岡山・香川両県から瀬戸内海への窒素とリンの負荷量 11/11/23
  • No.191 IAEA調査団(2011年10月)の予備報告書 11/10/31
  • No.190 放射能汚染事故時に如何に対処すべきか 11/10/12
  • No.189 農林水産省が農地土壌除染技術の成果を公表 11/10/11
  • No.188 アメリカの有機と慣行のリンゴ生産 11/09/20
  • No.187 有機JAS以外の有機農業の実態調査結果 11/08/22
  • No.186 カドミウム関係法律の改正とコメの濃度低減指針 11/08/21
  • No.185 イギリスが国土の生態系サービスを評価 11/08/20
  • No.184 西ヨーロッパと他国の農業生物多様性の概念の違い 11/07/21
  • No.183 中央農研が総合的雑草管理マニュアルを刊行 11/07/20
  • No.182 ビニールハウスは放射能をどの程度防げるのか 11/07/19
  • No.181 大気からの放射性核種の作物体沈着 11/06/13
  • No.180 放射性汚染土壌を下層に埋設する表層埋没プラウ 11/06/06
  • No.179 チェルノブイリ原子力発電所事故20年後のIAEA報告書 11/05/20
  • No.178 農薬の使用状況と残留状況調査の結果(国内産農産物) 11/04/19
  • No.177 キャッチクロップ導入と硝酸溶脱軽減効果 11/04/18
  • No.176 イギリスが世界の食料・農業の将来展望を刊行 11/04/17
  • No.175 2011年度から環境保全型農業実践者に支援金を直接支払い 11/03/28
  • No.174 経済不況は割高な環境保全農産物需要を抑制するのか 11/02/26
  • No.173 施設ギク農家の肥料投入行動とその技術的意識 11/02/25
  • No.172 世界の有機農業の現状(2) 11/01/14
  • No.171 OECDが日本の環境パフォーマンスをレビュー 11/01/13
  • No.170 有機JAS規格の改正論議が進行 10/12/23
  • No.169 都市農業は地下水の硝酸性窒素汚染を起こしていないか 10/12/22
  • No.168 アメリカで不耕起栽培が拡大中 10/12/21
  • No.167 アメリカが有機農業ハンドブック2010年秋版を刊行 10/12/03
  • No.166 EUが土壌生物多様性に関する報告書の第二弾を刊行 10/12/02
  • No.165 春先に深刻な農地の風食とその抑制策 10/11/04
  • No.164 家畜ふん堆肥製造過程での悪臭低減と窒素付加堆肥の製造 10/11/03
  • No.163 固液分離装置を用いた塩類濃度の低い乳牛ふん堆肥の製造 10/09/14
  • No.162 アジアではリン肥料の利用効率が低い 10/09/13
  • No.161 EUでは農地を良好な状態に保つのが直接支払の条件 10/08/26
  • No.160 OECD加盟国の農業環境問題に対する政策手法 10/08/25
  • No.159 ダイズ栽培輪換畑土壌の窒素肥沃度維持技術 10/07/20
  • No.158 アメリカが飼料への抗生物質添加禁止に動き出す 10/07/19
  • No.157 有機質肥料による養液栽培 10/06/22
  • No.156 EUが土壌生物の多様性に関する報告書を刊行 10/06/21
  • No.155 EUで土壌指令成立のめどたたず 10/06/20
  • No.154 全国の農耕地土壌図をインターネットで公開 10/05/27
  • No.153 EUのCAPに関する世論調査結果 10/05/26
  • No.152 農林水産省がGAPの共通基盤ガイドラインを策定 10/05/06
  • No.151 イギリスの有機質資材の施用実態 10/05/05
  • No.150 EUの第4回硝酸指令実施報告書 10/03/29
  • No.149 有機栽培水稲のLCAの試み 10/03/28
  • No.148 アメリカの有機食品の生産・販売・消費における最近の課題 10/03/04
  • No.147 アメリカの家畜ふん尿の状況 10/03/03
  • No.146 IPMを優先させたEUの農薬使用の枠組指令 10/02/01
  • No.145 甘い日本の農地への養分投入規制 10/01/31
  • No.144 欧米における農地へのリン投入規制の事例 09/12/28
  • No.143 米国が土壌くん蒸剤の安全使用強化に動き出す 09/12/27
  • No.142 英国の企業等の環境法令遵守支援ツール 09/11/28
  • No.141 米国が農薬ドリフト削減のためのラベル表示変更検討 09/11/27
  • No.140 農水省が米国有機農業法に基づく国内認証機関認定へ 09/10/31
  • No.139 家畜ふん堆肥窒素の新しい肥効評価方法 09/10/30
  • No.138 バイオ燃料作物の生産にどれだけの水が必要か 09/09/30
  • No.137 有機と慣行の農畜産物の栄養物含量に差はない 09/09/29
  • No.136 日本の輸入食品の残留動物用医薬品の概要 09/08/27
  • No.135 日本が輸入した農産物中の残留農薬の概要 09/08/26
  • No.134 日本の輸入食品監視統計の概要 09/08/25
  • No.133 アメリカ農務省が中国輸入食品の安全性を分析 09/08/24
  • No.132 黒ボク土のpHと可給態リン酸上昇が外来雑草を助長 09/08/03
  • No.131 施肥改善に対する意欲が不鮮明 09/08/02
  • No.130 イギリスが農業用資材に含まれる園芸用ピートを明確に表示するよう指示 09/06/26
  • No.129 国内でのナタネ栽培とバイオディーゼル生産の環境保全的意義は? 09/06/25
  • No.128 土壌の炭素ストックを高める農地の管理方法 09/05/26
  • No.127 意外に事故の多い石灰イオウ合剤 09/05/25
  • No.126 食品のカドミウム新基準値設定の動き 09/04/17
  • No.125 EUの水に関する世論調査 09/04/16
  • No.124 アメリカはエタノール蒸留穀物残渣の利用を研究 09/03/03
  • No.123 石灰質資材添加で家畜ふん堆肥の電気伝導度を下げる 09/03/02
  • No.122 イングランドが土・水・大気の優良農業規範を改正 09/02/17
  • No.121 イングランドが硝酸汚染防止規則を施行 09/02/16
  • No.120 カドミウム濃度の低い玄米とナスを生産する新技術 09/01/19
  • No.119 日本農業のエネルギー効率は先進国で最低クラス 09/01/18
  • No.118 家畜排泄物の利用促進を図る都道府県計画 08/12/12
  • No.117 鶏ふんのエネルギー利用とリンの回収 08/12/11
  • No.116 イギリスで農地系の野鳥が引き続き減少 08/11/26
  • No.115 世界の農業普及の流れ 08/11/25
  • No.114 OECDの指標でみた先進国農業の環境パフォーマンス 08/10/16
  • No.113 養豚場を除く畜産事業場からの排水規制が強化 08/10/15
  • No.112 望まれるリンの循環利用 08/09/16
  • No.111 人工衛星画像を利用した新しい世界の土地劣化情報 08/09/15
  • No.110 イギリス(イングランド)が自国の硝酸指令を強化 08/08/13
  • No.109 OECDがバイオ燃料の過熱に警鐘 08/08/12
  • No.108 農林水産省が8作物のIPM実践指標モデルを公表 08/08/11
  • No.107 「土壌管理のあり方に関する意見交換会」報告書 08/07/19
  • No.106 EU環境総局が土壌と気候変動に関する会合を主宰 08/07/18
  • No.105 EUとアメリカの農業環境政策の違い 08/07/17
  • No.104 超強力な生分解性プラスチック分解菌 08/06/03
  • No.103 ダイズの作付頻度を高めると土壌が硬くなる 08/06/02
  • No.102 農業がミシシッピー川の水と炭素の排出量を増やした 08/04/06
  • No.101 日本も農地土壌の炭素貯留機能を考慮 08/04/05
  • No.100 「今後の環境保全型農業に関する検討会」報告書 08/04/04
  • No.99 茨城県の「エコ農業茨城」構想 08/03/06
  • No.98 EUの生物多様性に関する世論調査 08/03/05
  • No.97 EUで土壌保護戦略指令案が合意に至らず 08/01/18
  • No.96 八郎潟を指定湖沼に追加 08/01/17
  • No.95 イギリスの下水汚泥の土壌影響に関する研究報告書 08/01/16
  • No.94 低濃度エタノールを用いた新しい土壌消毒法 07/12/19
  • No.93 飼料イネへの家畜ふん堆肥施用上の問題点 07/12/18
  • No.92 環境保全型農業に関する意識・意向調査結果 07/11/08
  • No.91 バイオ燃料製造拡大が農産物価格と環境に及ぼす影響 07/11/07
  • No.90 減農薬からIPMへ 07/10/11
  • No.89 中国における農業環境問題 07/10/10
  • No.88 ユーレップギャップがグローバルギャップに改称 07/10/09
  • No.87 超臨界水処理による家畜ふん尿のエネルギー利用技術 07/09/14
  • No.86 有機農業用家畜ふん堆肥の品質基準の必要性 07/09/04
  • No.85 気候緩和評価モデル 07/09/03
  • No.84 EUの第3回硝酸指令実施報告書 07/07/23
  • No.83 まだ続く土壌残留ディルドリンの作物吸収 07/05/31
  • No.82 EUREPGAP(ユーレップギャップ)の概要 07/05/30
  • No.81 農林水産省が基礎GAPを公表 07/04/28
  • No.80 抗生物質の代わりに茶葉で豚を飼育 07/04/27
  • No.79 MPSの環境にやさしい花の生産が日本でも開始 07/04/26
  • No.78 畜産事業所からの排水基準 07/04/25
  • No.77 日本での井戸水が原因の新生児メトヘモグロビン血症事例 07/03/26
  • No.76 有機農業の推進に関する基本的な方針(案) 07/03/25
  • No.75 家畜排泄物の利用の促進を図るための基本方針案 07/03/24
  • No.74 EUのLCAに基づいた環境政策 07/03/23
  • No.73 硝酸は人間に有毒ではない!? 07/02/15
  • No.72 形だけの農林水産省環境報告書2006 07/01/20
  • No.71 2005年度地下水の硝酸汚染の概要 07/01/19
  • No.70 「持続性の高い農業生産方式」の追加案 07/01/18
  • No.69 EUの環境および農業に関する世論調査結果 07/01/17
  • No.68 有機農業推進法が成立 06/12/17
  • No.67 野菜畑と河川底性動物との関係 06/12/16
  • No.66 EUの統合環境地理情報データベース 06/12/15
  • No.65 特別栽培農産物ガイドラインの一部改正案 06/12/14
  • No.64 亜鉛の排水基準が改正 06/12/13
  • No.63 コシヒカリへの地力窒素発現量予測 06/11/30
  • No.62 EUが農薬使用に関する戦略を提案 06/11/23
  • No.61 化学肥料の硝安も爆発物の材料 06/11/22
  • No.60 EUが「土壌保護戦略指令案」を提案 06/10/13
  • No.59 国内未登録除草剤残留牛ふん堆肥による障害 06/10/12
  • No.58 高塩類・高ECの家畜ふん堆肥への疑問 06/10/11
  • No.57 水稲有機農業の経済的な成立条件 06/10/10
  • No.56 キャベツおよびカンキツのIPM実践指標モデル案 06/09/10
  • No.55 環境にやさしいバラの生産技術 06/09/09
  • No.54 対象範囲の狭い「農地・水・環境保全向上対策」 06/08/12
  • No.53 朝取りホウレンソウは硝酸含量が高い 06/08/11
  • No.52 イギリスの食品保証制度 06/08/10
  • No.51 イギリスの葉菜類の硝酸含量調査結果 06/08/09
  • No.50 食品のカドミウム規制に終止符! 06/07/14
  • No.49 日射制御型拍動自動灌水装置の開発 06/07/13
  • No.48 EUでは農業が水質汚染の主因 06/07/12
  • No.47 花き生産における国際環境認証プログラム:MPS 06/06/15
  • No.46 アメリカ 耕地からの土壌侵食の実態 06/06/14
  • No.45 コンニャク根腐病対策の新展開 06/06/13
  • No.44 ヘアリーベッチ栽培に補助金を交付 06/05/11
  • No.43 亜鉛の基準に関する動き 06/05/10
  • No.42 食品中カドミウムの国際基準案最終段階 06/05/09
  • No.41 長崎県版GAP(適正農業規範) 06/04/06
  • No.40 イギリスの農薬使用規範 06/04/05
  • No.39 成分表示と消費者の価格許容調査 06/03/15
  • No.38 環境保全に関する意識・意向調査結果 06/03/14
  • No.37 福島県の「環境にやさしい農業」 06/02/27
  • No.36 流出水への監視強化へ 06/02/26
  • No.35 持続農業法施行規則の一部改正 06/02/25
  • No.34 欧州の水系汚染対策 06/02/24
  • No.33 家畜ふん堆肥施用量計算ソフト 06/01/19
  • No.32 JAS規格が一部改正 06/01/18
  • No.31 残留農薬ポジティブリスト制度の導入 06/01/17
  • No.30 EUの農業環境支払事務の会計監査 05/11/29
  • No.29 有機畜産関連の日本農林規格告知 05/11/28
  • No.28 牛ふん堆肥によるコシヒカリ栽培技術 05/11/08
  • No.27 福岡県「農の恵み事業」 05/11/07
  • No.26 フードチェーン・アプローチ 05/09/23
  • No.25 輪換畑ダイズ収量低下の原因 05/09/22
  • No.24 有機農業に対する政府の取組姿勢 05/09/21
  • No.23 定植前リン酸苗施用法 05/08/31
  • No.22 輸入蓄養マグロのダイオキシン類濃度 05/08/30
  • No.21 フード・マイル計算の難しさ 05/08/29
  • No.20 続・コメのカドミウム基準情報 05/07/26
  • No.19 殺菌剤耐性いもち病菌の出現 05/07/25
  • No.18 総合的病害虫・雑草管理(IPM)実践指針案 05/07/23
  • No.17 精米カドミウム含量の動向 05/05/19
  • No.16 家畜ふん堆肥中の抗生物質耐性菌 05/05/18
  • No.15 水田の汚濁物質排出量 05/05/17
  • No.14 北海道「遺伝子組換え」条例 05/04/21
  • No.13 北海道「食の安全・安心条例」 05/04/20
  • No.12 「農業生産活動規範」とは 05/04/19
  • No.11 湖沼の水質保全はどうなる 05/04/18
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  • No.134 日本の輸入食品監視統計の概要

    ●日本の輸入食品の監視態勢

     港湾や空港に所在する検疫所(厚生労働省医薬食品局に所属)が,販売目的で日本に輸入しようとする食品の検査を行なっている。輸入しようとする者は所定書類(輸入届出書)を検疫所に提出する。まず食品衛生監視員が,(1)食品衛生法に規定される製造基準に適合しているか,(2)添加物の使用基準は適切であるか,(3)有毒有害物質が含まれていないか,(4)過去衛生上の問題があった製造者・所であるかを中心に書類審査を行なう(表1参照)。

     輸入農産食品と農産加工食品の検査についてもう少し詳しく述べると,次のような項目が検査対象となる。

     ▼抗生物質等(抗生物質,合成抗菌剤,ホルモン剤,飼料添加物等)

     ▼残留農薬(有機リン系,有機塩素系,カーバメイト系,ピレスロイド系等)

     ▼添加物(ソルビン酸,安息香酸,二酸化硫黄,着色料,ポリソルベート,サイクラミン酸,防黴剤等)

     ▼成分規格等(成分規格で定められている項目,細菌数,大腸菌群,腸炎ビブリオ等)  ▼病原微生物(腸管出血性大腸菌O157,リステリア菌等)

     ▼貝毒(下痢性貝毒,麻痺性貝毒)

     ▼割り箸の防黴剤等

     ▼カビ毒(アフラトキシン,デオキシニバレノール,パツリン等)

     ▼遺伝子組換え食品(安全性未審査遺伝子組換え食品等)

     ▼放射線の使用    書類審査によって検査(分析)が必要と判断されたものについては,検査を実施する。その際,過去に食品衛生法違反が多かった貨物や,輸入フグなどの違反の可能性の高い食品については,厚生労働大臣の命(検査命令制度)によって,輸入者自らが費用を負担し検査を実施し,適法と判断されるまで輸入手続きを進めることができない。その他の違反の可能性が通常と考えられるものは,検疫所がモニタリング検査を実施する。いずれの場合も,検査結果をもとに食品衛生法に適合しているか否かを確認する。

     厚生労働省は「輸入食品監視業務ホームページ」を開設し,検疫所の行なった食品輸入届出検査の結果などを提供している。そのなかの厚生労働省医薬食品局食品安全部「平成20年度輸入食品監視統計」(2009年8月) の概要を紹介する。

     なお,食品衛生法は,食品だけでなく,食品を製造・陳列などに使用する器具や食品の流通に使用する包装物,さらに乳幼児用のおもちゃなども対象にしていることを念頭に置いていただきたい。このため,以下の検疫所の統計値は,食品以外にもこれらを含んだ数値となっている。しかし,器具,包装容器や乳幼児用おもちゃは,違反の4.2%と全体のわずかで(表1),全体の統計値を食品だけの近似値と見なすことも可能である。

    ●輸入量と違反件数の多い品目群

     食料需給表によると,2008年度の日本の食料自給率は,供給エネルギーベースで41%,金額(生産額)ベースで65%にすぎないため,大量の食料を外国から輸入している。

     重量ベースで輸入量が最も多かった品目群は,小麦,うるち米(ミニマムアクセス),飼料用のトウモロコシや大麦,大豆や油糧用種子,野菜,果実など,未加工の農産物であった(表2)。そして,輸入重量全体の約20%を検査したが,違反件数の割合が最も高かったのも農産食品で,約37%を占めた。主な違反は,表1に略記してあるように,落花生,ハトムギ,とうもろこし,とうがらし,カカオ豆,ごまの種子,アーモンド等のアフラトキシンの付着,米,小麦等の輸送時における事故による腐敗・変敗・カビの発生,野菜の成分規格違反(農薬の残留基準違反)などであった。

     二番目に輸入重量が多かったのは,穀類,豆類,野菜,果実などの調整品や加工品,茶,デンプンなどの農産加工食品で,輸入重量全体の約10%を占めた。主な違反は,調整・加工食品の成分規格不適合(微生物汚染,農薬の残留基準違反),指定外添加物検出,アフラトキシン陽性などであった。

     三番目に輸入重量が多かったのは,その98%が生鮮肉類(内臓を含む)からなる畜産食品で,輸入量全体の約6%を占めた。この品目群の違反は0.7%と少なかった。ただし,BSEの危険から日本が20か月未満の牛に由来し,危険部位を混入していない牛肉に限定して輸入を認めているが,これに対する違反などがこの品目群での違反となっている。

     輸入重量は3.6%に過ぎないが,違反件数が三番目で19.2%を占めたのが,水産加工品(魚介類の肉・卵や海藻などの加工品)であった。主な違反は,有毒魚類の混入,下痢性・麻痺性貝毒の検出,シアン化合物の検出,成分規格違反(微生物汚染,動物用医薬品の残留基準違反),添加物の使用基準不適合(亜硝酸塩,二酸化硫黄など)となっている。

    ●輸入食品量の多い上位5か国

     (1)アメリカ

     表3に示すように,日本が重量で最も多くの食品を輸入している国はアメリカで,2008年に日本が輸入した食品全体の40%をアメリカから輸入している。そして,違反となった重量も最も多く,2008年における違反食品の総重量59,468トン(表2)の75%をアメリカが占めている。このアメリカの違反の97%はトウモロコシであり,そのほとんどがアフラトキシン汚染である。なお,表2で違反件数では農産食品が全体の37%を占めていたが,重量では95%であった。この大部分はアフラトキシン汚染のトウモロコシであり,検疫がアフラトキシン汚染トウモロコシの輸入のバリアーになっていることが理解できよう。

     (2)カナダ

     2008年度に輸入食品重量が二番目に多かった国はカナダである。カナダからの輸入量が最も多い食品は油糧用種子で,その大部分はナタネである。

     横道にそれるが,カナダのナタネについて少しコメントしておく。カナダのナタネは人体や家畜に有害な成分を含まないが,除草剤耐性の遺伝子組換え体である。種子から絞った油には遺伝子組換え遺伝子が混入するわけではなく,良質な食用油を生産することができる(カノーラ油)。しかし,輸入ナタネ種子が搬送途中でこぼれて道ばたなどで育ち,在来ナタネと交雑する危険性が以前から指摘されていた。そして,交雑ナタネが三重県松阪市の河川敷から採取した個体のなかに存在することが確認された(朝日新聞:2009年8月17日)。花粉の飛散によって交雑が生じて,野生のアブラナ科植物に除草剤耐性遺伝子が拡散すると,やがて広汎な雑草にも除草剤耐性遺伝子が拡散する危険がある。そうなると,除草のために除草剤を散布しても,その効き目が悪くなり,除草剤の使用量が増えたりすると,様々な環境影響が起きることが懸念される。

     (3)中国

     最近では食品輸入量が二番目に多いのは中国だが,2006年と2007年に残留農薬に汚染された野菜,メラミン混入ペットフード,動物医薬品の残留したウナギなど,中国産食品の安全性問題が起きた。このため,2007年度には約430万トンあった食品輸入量が2008年度には356万トンに減少し,中国は三番目の国になった。違反の内容は後述する。

     (4)オーストラリア

     食品輸入量が四番目に多いのはオーストラリアで,うどん用小麦や牛肉などの輸入量が多いが,違反が少ない点で際立っている。

     (5)タイ

     食品輸入量が五番目に多いのはタイだが,うるち米が輸入量と違反重量で一位となっている。これはミニマムアクセスのために輸入した米だが,籾殻のまま輸入せずに,玄米にして輸入したために,アフラトキシン産生のカビが繁殖するなどの違反が生じたと理解される。

    ●中国から輸入した食品

     貿易統計によると,2007年度に6兆408億1800万円の食料を輸入し,そのうち中国からは9213億300万円を輸入している。そして,食料需給表によると,2007年度において国内の食料供給量に占める輸入食料の割合は金額ベースで34%となる。つまり,金額ベースで輸入食料の15.3%を中国から輸入していて,中国からの輸入食料は国内食料供給量の5.2%を占めていることになる。他方,アメリカの国内食料供給量に占める中国からの輸入食料の割合はわずか0.4%だけなので,日本は金額ベースと国内食料供給量に占める割合のいずれでも,アメリカよりも多くの食料を中国から輸入している。

     ではどのような品目を中国から輸入しているのか。輸入食品監視統計は,国別にどのような品目を輸入しているかを整理した形で提供していなく,品目ごとに輸入重量の多い上位5か国からの輸入重量や違反重量などを提供している。そこで,2008年度について,輸入重量の多い上位5か国に中国が記されていて,かつ,違反のあった品目だけを集めたリストを作成した。したがって,上位5か国に中国が入っていない品目は分からず,対象外になっている点に留意する必要がある。

     こうした留意の上で,違反重量の多かった関連品目をまとめた品目グループでみると(表4),野菜類(せり科野菜,ゆり科野菜,その他の野菜)389トン,野菜の加工食品(乾燥野菜,野菜の漬け物,冷凍食品,容器包装詰加圧加熱殺菌食品)246トン,落花生とその加工製品227トン,加熱食肉製品(包装後加熱と加熱後包装)210トン,魚の加工食品(切り身・むき身の鮮魚類,魚の冷凍食品)79トン,貝の加工食品(切り身・むき身の鮮貝類,調理加工貝類,冷凍食品,容器包装詰加圧加熱殺菌食品)152トン,水産動物(エビ,カニ等)加工食品(切り身・むき身の鮮水産動物類,調理加工水産動物類,冷凍食品)159トンなどであった。

     中国からの輸入食品の違反理由は個々に記述されていない。全体としての違反理由は,上述の「輸入量と違反件数の多い品目群」を参照いただきたい。

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