環境保全型農業レポート > No.164 家畜ふん堆肥製造過程での悪臭低減と窒素付加堆肥の製造
記事一覧
  • No.219 日本農業のエネルギー消費構造 12/12/17
  • No.218 アメリカの有機農業者への金銭的直接支援の概要 12/12/16
  • No 217 道路に近い市街地で栽培された野菜の重金属濃度 12/11/26
  • No.216 未熟堆肥は作物の土壌からの重金属吸収を促進する? 12/11/25
  • No.215 全米有機プログラム(NOP)規則ハンドブック2012年版 12/11/24
  • No.214 ソイル・アソシエーションの有機施設栽培基準 12/10/26
  • No.213 イギリスではポリトンネルが禁止に? 12/10/25
  • No.212 EUの有機農業における家畜飼養密度と家畜ふん尿施用量の上限 12/09/24
  • No.211 有機と慣行農業による収量差をもたらしている要因 12/09/23
  • No.210 EU加盟国の有機農業に対する公的支援の概要 12/08/24
  • No.209 窒素安定同位体比は有機農産物の判別に使えるのか 12/07/20
  • No.208 デンマーク農業における窒素・リンの余剰量の削減 12/07/19
  • No.207 有機農業の理念と現実 12/07/02
  • No.206 EUが有機農業規則の問題点を点検 12/07/01
  • No.205 イングランドの農業者は持続可能な土壌管理の知識を十分持っているか 12/06/05
  • No.204 バイオ素材をベースにしたプラスチックの持続可能性評価 12/06/04
  • No.203 OECD加盟国における水質汚染 12/05/08
  • No.202 ヨーロッパの河川における水質汚染の動向 12/05/07
  • No.201 有機農産物の日本農林規格が改正 12/03/31
  • No.200 薬用石鹸成分,トリクロサンの生物への影響 12/03/30
  • No.199 EUにおけるバイオガス生産の現状と規制の現状 12/03/06
  • No.198 トウモロコシのエタノール蒸留粕の飼料価値と飼料供給に与える影響 12/03/05
  • No.197 コスト効果の高い余剰窒素削減政策は何か 12/02/01
  • No.196 世界の食料生産のための農地と水資源の現状と課題 12/01/31
  • No.195 福島県の農林地除染基本方針とその問題点 11/12/19
  • No.194 アメリカの養豚 ふん尿管理の動向 11/12/18
  • No.193 IAEA調査団(2011年10月)の最終報告書 11/11/24
  • No.192 岡山・香川両県から瀬戸内海への窒素とリンの負荷量 11/11/23
  • No.191 IAEA調査団(2011年10月)の予備報告書 11/10/31
  • No.190 放射能汚染事故時に如何に対処すべきか 11/10/12
  • No.189 農林水産省が農地土壌除染技術の成果を公表 11/10/11
  • No.188 アメリカの有機と慣行のリンゴ生産 11/09/20
  • No.187 有機JAS以外の有機農業の実態調査結果 11/08/22
  • No.186 カドミウム関係法律の改正とコメの濃度低減指針 11/08/21
  • No.185 イギリスが国土の生態系サービスを評価 11/08/20
  • No.184 西ヨーロッパと他国の農業生物多様性の概念の違い 11/07/21
  • No.183 中央農研が総合的雑草管理マニュアルを刊行 11/07/20
  • No.182 ビニールハウスは放射能をどの程度防げるのか 11/07/19
  • No.181 大気からの放射性核種の作物体沈着 11/06/13
  • No.180 放射性汚染土壌を下層に埋設する表層埋没プラウ 11/06/06
  • No.179 チェルノブイリ原子力発電所事故20年後のIAEA報告書 11/05/20
  • No.178 農薬の使用状況と残留状況調査の結果(国内産農産物) 11/04/19
  • No.177 キャッチクロップ導入と硝酸溶脱軽減効果 11/04/18
  • No.176 イギリスが世界の食料・農業の将来展望を刊行 11/04/17
  • No.175 2011年度から環境保全型農業実践者に支援金を直接支払い 11/03/28
  • No.174 経済不況は割高な環境保全農産物需要を抑制するのか 11/02/26
  • No.173 施設ギク農家の肥料投入行動とその技術的意識 11/02/25
  • No.172 世界の有機農業の現状(2) 11/01/14
  • No.171 OECDが日本の環境パフォーマンスをレビュー 11/01/13
  • No.170 有機JAS規格の改正論議が進行 10/12/23
  • No.169 都市農業は地下水の硝酸性窒素汚染を起こしていないか 10/12/22
  • No.168 アメリカで不耕起栽培が拡大中 10/12/21
  • No.167 アメリカが有機農業ハンドブック2010年秋版を刊行 10/12/03
  • No.166 EUが土壌生物多様性に関する報告書の第二弾を刊行 10/12/02
  • No.165 春先に深刻な農地の風食とその抑制策 10/11/04
  • No.164 家畜ふん堆肥製造過程での悪臭低減と窒素付加堆肥の製造 10/11/03
  • No.163 固液分離装置を用いた塩類濃度の低い乳牛ふん堆肥の製造 10/09/14
  • No.162 アジアではリン肥料の利用効率が低い 10/09/13
  • No.161 EUでは農地を良好な状態に保つのが直接支払の条件 10/08/26
  • No.160 OECD加盟国の農業環境問題に対する政策手法 10/08/25
  • No.159 ダイズ栽培輪換畑土壌の窒素肥沃度維持技術 10/07/20
  • No.158 アメリカが飼料への抗生物質添加禁止に動き出す 10/07/19
  • No.157 有機質肥料による養液栽培 10/06/22
  • No.156 EUが土壌生物の多様性に関する報告書を刊行 10/06/21
  • No.155 EUで土壌指令成立のめどたたず 10/06/20
  • No.154 全国の農耕地土壌図をインターネットで公開 10/05/27
  • No.153 EUのCAPに関する世論調査結果 10/05/26
  • No.152 農林水産省がGAPの共通基盤ガイドラインを策定 10/05/06
  • No.151 イギリスの有機質資材の施用実態 10/05/05
  • No.150 EUの第4回硝酸指令実施報告書 10/03/29
  • No.149 有機栽培水稲のLCAの試み 10/03/28
  • No.148 アメリカの有機食品の生産・販売・消費における最近の課題 10/03/04
  • No.147 アメリカの家畜ふん尿の状況 10/03/03
  • No.146 IPMを優先させたEUの農薬使用の枠組指令 10/02/01
  • No.145 甘い日本の農地への養分投入規制 10/01/31
  • No.144 欧米における農地へのリン投入規制の事例 09/12/28
  • No.143 米国が土壌くん蒸剤の安全使用強化に動き出す 09/12/27
  • No.142 英国の企業等の環境法令遵守支援ツール 09/11/28
  • No.141 米国が農薬ドリフト削減のためのラベル表示変更検討 09/11/27
  • No.140 農水省が米国有機農業法に基づく国内認証機関認定へ 09/10/31
  • No.139 家畜ふん堆肥窒素の新しい肥効評価方法 09/10/30
  • No.138 バイオ燃料作物の生産にどれだけの水が必要か 09/09/30
  • No.137 有機と慣行の農畜産物の栄養物含量に差はない 09/09/29
  • No.136 日本の輸入食品の残留動物用医薬品の概要 09/08/27
  • No.135 日本が輸入した農産物中の残留農薬の概要 09/08/26
  • No.134 日本の輸入食品監視統計の概要 09/08/25
  • No.133 アメリカ農務省が中国輸入食品の安全性を分析 09/08/24
  • No.132 黒ボク土のpHと可給態リン酸上昇が外来雑草を助長 09/08/03
  • No.131 施肥改善に対する意欲が不鮮明 09/08/02
  • No.130 イギリスが農業用資材に含まれる園芸用ピートを明確に表示するよう指示 09/06/26
  • No.129 国内でのナタネ栽培とバイオディーゼル生産の環境保全的意義は? 09/06/25
  • No.128 土壌の炭素ストックを高める農地の管理方法 09/05/26
  • No.127 意外に事故の多い石灰イオウ合剤 09/05/25
  • No.126 食品のカドミウム新基準値設定の動き 09/04/17
  • No.125 EUの水に関する世論調査 09/04/16
  • No.124 アメリカはエタノール蒸留穀物残渣の利用を研究 09/03/03
  • No.123 石灰質資材添加で家畜ふん堆肥の電気伝導度を下げる 09/03/02
  • No.122 イングランドが土・水・大気の優良農業規範を改正 09/02/17
  • No.121 イングランドが硝酸汚染防止規則を施行 09/02/16
  • No.120 カドミウム濃度の低い玄米とナスを生産する新技術 09/01/19
  • No.119 日本農業のエネルギー効率は先進国で最低クラス 09/01/18
  • No.118 家畜排泄物の利用促進を図る都道府県計画 08/12/12
  • No.117 鶏ふんのエネルギー利用とリンの回収 08/12/11
  • No.116 イギリスで農地系の野鳥が引き続き減少 08/11/26
  • No.115 世界の農業普及の流れ 08/11/25
  • No.114 OECDの指標でみた先進国農業の環境パフォーマンス 08/10/16
  • No.113 養豚場を除く畜産事業場からの排水規制が強化 08/10/15
  • No.112 望まれるリンの循環利用 08/09/16
  • No.111 人工衛星画像を利用した新しい世界の土地劣化情報 08/09/15
  • No.110 イギリス(イングランド)が自国の硝酸指令を強化 08/08/13
  • No.109 OECDがバイオ燃料の過熱に警鐘 08/08/12
  • No.108 農林水産省が8作物のIPM実践指標モデルを公表 08/08/11
  • No.107 「土壌管理のあり方に関する意見交換会」報告書 08/07/19
  • No.106 EU環境総局が土壌と気候変動に関する会合を主宰 08/07/18
  • No.105 EUとアメリカの農業環境政策の違い 08/07/17
  • No.104 超強力な生分解性プラスチック分解菌 08/06/03
  • No.103 ダイズの作付頻度を高めると土壌が硬くなる 08/06/02
  • No.102 農業がミシシッピー川の水と炭素の排出量を増やした 08/04/06
  • No.101 日本も農地土壌の炭素貯留機能を考慮 08/04/05
  • No.100 「今後の環境保全型農業に関する検討会」報告書 08/04/04
  • No.99 茨城県の「エコ農業茨城」構想 08/03/06
  • No.98 EUの生物多様性に関する世論調査 08/03/05
  • No.97 EUで土壌保護戦略指令案が合意に至らず 08/01/18
  • No.96 八郎潟を指定湖沼に追加 08/01/17
  • No.95 イギリスの下水汚泥の土壌影響に関する研究報告書 08/01/16
  • No.94 低濃度エタノールを用いた新しい土壌消毒法 07/12/19
  • No.93 飼料イネへの家畜ふん堆肥施用上の問題点 07/12/18
  • No.92 環境保全型農業に関する意識・意向調査結果 07/11/08
  • No.91 バイオ燃料製造拡大が農産物価格と環境に及ぼす影響 07/11/07
  • No.90 減農薬からIPMへ 07/10/11
  • No.89 中国における農業環境問題 07/10/10
  • No.88 ユーレップギャップがグローバルギャップに改称 07/10/09
  • No.87 超臨界水処理による家畜ふん尿のエネルギー利用技術 07/09/14
  • No.86 有機農業用家畜ふん堆肥の品質基準の必要性 07/09/04
  • No.85 気候緩和評価モデル 07/09/03
  • No.84 EUの第3回硝酸指令実施報告書 07/07/23
  • No.83 まだ続く土壌残留ディルドリンの作物吸収 07/05/31
  • No.82 EUREPGAP(ユーレップギャップ)の概要 07/05/30
  • No.81 農林水産省が基礎GAPを公表 07/04/28
  • No.80 抗生物質の代わりに茶葉で豚を飼育 07/04/27
  • No.79 MPSの環境にやさしい花の生産が日本でも開始 07/04/26
  • No.78 畜産事業所からの排水基準 07/04/25
  • No.77 日本での井戸水が原因の新生児メトヘモグロビン血症事例 07/03/26
  • No.76 有機農業の推進に関する基本的な方針(案) 07/03/25
  • No.75 家畜排泄物の利用の促進を図るための基本方針案 07/03/24
  • No.74 EUのLCAに基づいた環境政策 07/03/23
  • No.73 硝酸は人間に有毒ではない!? 07/02/15
  • No.72 形だけの農林水産省環境報告書2006 07/01/20
  • No.71 2005年度地下水の硝酸汚染の概要 07/01/19
  • No.70 「持続性の高い農業生産方式」の追加案 07/01/18
  • No.69 EUの環境および農業に関する世論調査結果 07/01/17
  • No.68 有機農業推進法が成立 06/12/17
  • No.67 野菜畑と河川底性動物との関係 06/12/16
  • No.66 EUの統合環境地理情報データベース 06/12/15
  • No.65 特別栽培農産物ガイドラインの一部改正案 06/12/14
  • No.64 亜鉛の排水基準が改正 06/12/13
  • No.63 コシヒカリへの地力窒素発現量予測 06/11/30
  • No.62 EUが農薬使用に関する戦略を提案 06/11/23
  • No.61 化学肥料の硝安も爆発物の材料 06/11/22
  • No.60 EUが「土壌保護戦略指令案」を提案 06/10/13
  • No.59 国内未登録除草剤残留牛ふん堆肥による障害 06/10/12
  • No.58 高塩類・高ECの家畜ふん堆肥への疑問 06/10/11
  • No.57 水稲有機農業の経済的な成立条件 06/10/10
  • No.56 キャベツおよびカンキツのIPM実践指標モデル案 06/09/10
  • No.55 環境にやさしいバラの生産技術 06/09/09
  • No.54 対象範囲の狭い「農地・水・環境保全向上対策」 06/08/12
  • No.53 朝取りホウレンソウは硝酸含量が高い 06/08/11
  • No.52 イギリスの食品保証制度 06/08/10
  • No.51 イギリスの葉菜類の硝酸含量調査結果 06/08/09
  • No.50 食品のカドミウム規制に終止符! 06/07/14
  • No.49 日射制御型拍動自動灌水装置の開発 06/07/13
  • No.48 EUでは農業が水質汚染の主因 06/07/12
  • No.47 花き生産における国際環境認証プログラム:MPS 06/06/15
  • No.46 アメリカ 耕地からの土壌侵食の実態 06/06/14
  • No.45 コンニャク根腐病対策の新展開 06/06/13
  • No.44 ヘアリーベッチ栽培に補助金を交付 06/05/11
  • No.43 亜鉛の基準に関する動き 06/05/10
  • No.42 食品中カドミウムの国際基準案最終段階 06/05/09
  • No.41 長崎県版GAP(適正農業規範) 06/04/06
  • No.40 イギリスの農薬使用規範 06/04/05
  • No.39 成分表示と消費者の価格許容調査 06/03/15
  • No.38 環境保全に関する意識・意向調査結果 06/03/14
  • No.37 福島県の「環境にやさしい農業」 06/02/27
  • No.36 流出水への監視強化へ 06/02/26
  • No.35 持続農業法施行規則の一部改正 06/02/25
  • No.34 欧州の水系汚染対策 06/02/24
  • No.33 家畜ふん堆肥施用量計算ソフト 06/01/19
  • No.32 JAS規格が一部改正 06/01/18
  • No.31 残留農薬ポジティブリスト制度の導入 06/01/17
  • No.30 EUの農業環境支払事務の会計監査 05/11/29
  • No.29 有機畜産関連の日本農林規格告知 05/11/28
  • No.28 牛ふん堆肥によるコシヒカリ栽培技術 05/11/08
  • No.27 福岡県「農の恵み事業」 05/11/07
  • No.26 フードチェーン・アプローチ 05/09/23
  • No.25 輪換畑ダイズ収量低下の原因 05/09/22
  • No.24 有機農業に対する政府の取組姿勢 05/09/21
  • No.23 定植前リン酸苗施用法 05/08/31
  • No.22 輸入蓄養マグロのダイオキシン類濃度 05/08/30
  • No.21 フード・マイル計算の難しさ 05/08/29
  • No.20 続・コメのカドミウム基準情報 05/07/26
  • No.19 殺菌剤耐性いもち病菌の出現 05/07/25
  • No.18 総合的病害虫・雑草管理(IPM)実践指針案 05/07/23
  • No.17 精米カドミウム含量の動向 05/05/19
  • No.16 家畜ふん堆肥中の抗生物質耐性菌 05/05/18
  • No.15 水田の汚濁物質排出量 05/05/17
  • No.14 北海道「遺伝子組換え」条例 05/04/21
  • No.13 北海道「食の安全・安心条例」 05/04/20
  • No.12 「農業生産活動規範」とは 05/04/19
  • No.11 湖沼の水質保全はどうなる 05/04/18
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  • No.164 家畜ふん堆肥製造過程での悪臭低減と窒素付加堆肥の製造

    ●背景

     2009年に全国の畜産経営体数の1.9%に苦情が寄せられたが,苦情の56.2%は悪臭に関連したものであった(農林水産省畜産企画課 (2009) 畜産経営に起因する苦情発生状況)。悪臭の大部分はふん尿に起因し,ふん尿の堆肥化,浄化処理,散布などの過程で悪臭発生を低減させることが大切になっている。これまでにもいろいろな対策技術が開発されて実践されているが(家畜ふん尿の悪臭対策技術については次を参照:福森功 (1993) 脱臭の原理と方法.農業技術大系 畜産編 第8巻環境対策 p.基礎編ふん尿処理・基本101〜111.農文協),より安価で手間のかからない技術が望まれている。

     また,製造した家畜ふん堆肥に含まれている窒素,リン酸,カリの構成割合が,作物の養分要求に合致していないという問題がある。例えば,牛ふん堆肥ではカリが過剰なので,作物栽培に牛ふん堆肥を連用しているとカリ過剰が生じやすいといった問題が生じている。このため,牛ふん堆肥を粉末にして,カリの少ない油粕粉末を添加して,3要素の組成を作物要求に合致するように調整した上で,取り扱い易いペレット状に成型した堆肥(成分調整成型堆肥)技術も,九州沖縄農業研究センターで作られている(環境保全型農業レポート.2004年12月8日号.成分調整をして成型した家畜ふん堆肥の製造と利用技術)。しかし,この成分調整成型堆肥の製造では,油粕費用として窒素1 kg当たり1,100円以上を要するので,より安価な代替技術が望まれている。

     なお,「肥料取締法」によって,普通肥料の油粕粉末などと特殊肥料の堆肥などを混合して販売することが禁止されているが,例外として腐熟促進のために普通肥料を特殊肥料に混合することが認められている。上記の成分調整成型堆肥の場合,油粕粉末の混合は牛ふん堆肥の腐熟促進のためでなく,成分調整のためであり,販売すれば肥料取締法違反となる。ただし,油粕粉末は普通肥料であっても,油粕の塊はそのままでは微生物分解が遅いので特殊肥料である。このため,生油粕(油粕塊)を牛ふん堆肥に混合した状態で粉砕した場合は違法でない。こうしたややこしい問題もある。

     こうした背景から,九州沖縄農業研究センター(九州沖縄農研)は,牛ふん堆肥製造時に,完成した牛ふん堆肥を悪臭成分の吸着材として使用し,安価で特段のメンテナンス不要な悪臭軽減装置を開発し,さらに悪臭成分のアンモニウムを捕捉して窒素濃度の高まった堆肥を,油粕の代わりに使用して,成分調整型堆肥の製造コストを引き下げて,その利用技術も開発した。

    ●堆肥への悪臭成分の吸着による窒素付加堆肥の製造技術

     この技術の概要を,次の資料に基づいて紹介する。

     (1)田中章浩・薬師堂謙一・嶋谷智佳子 (2003) 堆肥吸着による脱臭システム.平成14年度九州沖縄農業研究成果情報

     (2)九州沖縄農研a.堆肥脱臭による臭気低減化と窒素付加堆肥の製造.

     (3) 田中章浩 (2009) 堆肥脱臭による臭気低減と高窒素濃度堆肥の製造.農業技術大系.土壌施肥編 第7-1巻(資材の特性と利用)p.資材64-1-29-2〜64-1-29-8

     (4) 田中章浩(2009) 出来上がり堆肥による悪臭の除去と堆肥の窒素成分調整.におい・かおり環境学会誌. 40 (4) 229-234

    (1)製造システム

     研究対象としたのは,オガクズと混合した乳牛ふんを原材料にして,ローダ切返し方式の通気型堆肥舎での堆肥化過程(図1)である。原材料を1次発酵槽に入れ,1週間ごとにローダで切り返して,別の1次発酵槽に移し,4つの発酵槽で4週間かけて1次発酵を行なう。その後, 3か月以上2次発酵を行なって,牛ふん堆肥を完成させる。これは一般的な堆肥製造プロセスである。

     この製造プロセスを冬期に実施した場合,1次発酵過程におけるアンモニアの発生量が堆肥原材料1トン当たり4週間で925 gであった。その発生経過は,1週目81%,2週目18%,3週目1%,4週目0.1%で,1週目と2週目を合わせると約99%に達した(表1)。悪臭成分はアンモニアだけではないが,実際の臭い程度からみて,他の悪臭成分も類似の経過をへていると推定し,1週目と2週目のアンモニアなどの悪臭成分の捕集を試みた。

     排気を捕集するために,1週目と2週目の1次発酵槽を密閉構造とした。それにともなって生ずる結露に耐えられるように,コンクリート壁の上に木製骨組みを組み,壁を耐水・耐腐食性のある材料とした。2つの1次発酵槽内の排気をターボファンで吸い込み,別々の悪臭吸着槽に吹き込むようにした。2つの悪臭吸着槽は1次発酵槽と同程度の大きさで,堆肥化原材料と同体積の6か月程度をかけて完成させた堆肥を入れおき,発酵槽の床面から空気を吹き込んで,堆肥の山をくぐらせて上昇させた。これによって,揮散したアンモニアの98%が捕集された(表1)。ただし,一次発酵槽から悪臭吸着槽までの通気パイプ内で臭気が冷却されて,アンモニア濃度800 ppm程度の結露水が発生する。結露水は,夏期には堆肥化3,4週目の材料,冬期には無臭化槽内の吸着堆肥に混合して有効利用する。

     悪臭吸着槽でアンモニアなどを吸着した直後の堆肥は,まだアンモニア臭を発していていた。そこで,アンモニアなどを吸着した堆肥を無臭化槽に1週間入れて,弱く通気しながら,堆肥に生息している硝化細菌によってアンモニアを硝酸イオンに酸化させた。1週間でアンモニアの90%が硝酸イオンに酸化されて,硝酸イオン濃度の高い堆肥ができた。これによってアンモニアの揮散がなくなり,堆肥のpHも低下した。この状態の堆肥は土壌に施用できる。この後,弱く通気した状態で堆肥を貯蔵しておくと,堆肥の水分含有率が50%と低く,好気性が維持されるため,硝酸イオンが嫌気的条件で活動する脱窒細菌によって,脱窒されることはほとんどなかった。そして,堆肥の有機物が有機栄養微生物に徐々に分解されるのにともなって,硝酸イオンが有機栄養微生物に取り込まれて,タンパク質や核酸などの細胞成分に合成されて,有機態窒素に変換される。こうして,硝酸態窒素や有機態窒素の濃度が高まった窒素付加堆肥ができあがった。

     通常の牛ふん堆肥の標準的価格はトン当たり3500円程度だが,これに脱臭経費を加算した堆肥価格は,窒素負荷堆肥が乾物で窒素4%を含有するとして,7000円/t程度となり,この価格以上で販売すれば脱臭経費を回収できることになる。通常の牛ふん堆肥に比べて高価格と思えるが,窒素負荷堆肥には通常の堆肥よりも高濃度の窒素,リン酸,カリが含まれ,3要素の化学肥料換算価値は約10,600円/tとなる(田中,2009)。このため,この分の化学肥料を減肥できるので,堆肥価格(7000円/t)と化学肥料換算価格(10,600円/t)の間で価格決定をすれば,畜産側と耕種側の両者にメリットが生まれることになる。

    (2)脱臭効率

     この堆肥脱臭システムは,アンモニアやイオウ化合物を高率で除去し,除去率は季節によってあまり変動せず,年間を通じて安定した除去率を示した(図2)。しかし,イソ吉草酸などの低級脂肪酸の除去率は60%以下と低く,プロピオン酸ではわずかながら増加する傾向も見られた。だが,好気的な堆肥化過程では低級脂肪酸の生成が大きな問題となるケースは少ない。このため,通気や切り返しによって好気性を維持すれば,実用的な脱臭システムとして使用できる。

    ●窒素付加堆肥の利用技術

     この堆肥脱臭技術で生産された窒素濃度が高められた堆肥は,窒素付加堆肥または高窒素濃度堆肥と呼ばれる。そして,作物要求と比べると,牛ふん堆肥は3要素のなかでカリを相対的に過剰に含有しており,窒素濃度を高めた牛ふん堆肥は,通常のものよりも養分バランスが良くなった成分調整型堆肥でもある。

     この窒素付加牛ふん堆肥の利用技術の概要を,次の資料に基づいて紹介する。

     (1) 荒川祐介・田中章浩・原口暢朗・草場敬・山田一郎・薬師堂謙一 (2008) 速効性の窒素成分を多く含み,窒素とカリの養分バランスが良い窒素付加堆肥の特性.平成19年度九州沖縄農業研究成果情報

     (2) 荒川祐介・大津善雄・藤山正史 (2009) 成分調整成型堆肥を用いた諫早湾干拓地での春作バレイショの減化学肥料栽培.平成20年度九州沖縄農業研究成果情報

     (3)荒川祐介・田中章浩・原口暢朗・草場敬・村上尚穂・田中修作・岩本孝夫 (2010a) 窒素付加堆肥の窒素肥効率と野菜栽培への利用.平成21年度九州沖縄農業研究成果情報

     (4) 九州沖縄農研b.窒素付加堆肥の利用について

     (5)荒川祐介・田中章浩・原口暢朗・草場敬・薬師堂謙一・山田一郎 (2010b) 堆肥脱臭法により産生した窒素付加堆肥の利用に関する研究(第1報)コマツナ栽培試験による肥料効果の検証.日本土壌肥料学雑誌.81: 153-157

    (1)窒素付加牛ふん堆肥の化学的特性

     副資材などによって異なるが,平均的には,全窒素が,通常の牛ふん堆肥では2%前後だが,窒素付加堆肥では約4%と倍増している(表2)。そして,通常の牛ふん堆肥では,無機態窒素は全窒素の数パーセントを占めるだけだが,窒素付加堆肥ではアンモニアを吸着して全窒素濃度を高めていて,無機態窒素が全窒素の60%前後を占めている。アンモニアのままではpHがアルカリ性になって,アンモニアは再び揮散してしまうが,硝化菌によって硝酸イオンに酸化されてpHが弱酸性になっているため,残存しているアンモニアも揮散せずにアンモニウムとして保持されている。

     硝酸イオンやアンモニウムが多量に存在しているために,窒素付加堆肥の電気伝導度(EC)が15 dS/m (mS/cm)前後の非常に高い値となっている。堆肥の電気伝導度は5 dS/m未満であることが望ましいとされている。窒素付加堆肥は,いわば家畜ふん堆肥に窒素肥料を混和したような組成で,電気伝導度が高い。これを土壌に施用すれば,堆肥中の無機態窒素が急速に作物に吸収されて,電気伝導度が直ぐに低下してゆく。他方,通常の家畜ふん堆肥では,作物に吸収されやすい無機イオンが少なく,作物の生育にともなう電気伝導度の低下は少ないので,高い電気伝導度の堆肥は作物生育に危険である。コマツナのポット栽培などで,窒素付加牛ふん堆肥を施用しても作物の発芽や生育に悪影響がないことが確認されている。

    (2)窒素付加牛ふん堆肥中の3要素の肥効率

     窒素付加牛ふん堆肥中の3要素の作物による吸収割合の値は,適正な施肥量を計算する上で必要である。作物に施用した養分量のうち,作物に実際に吸収された割合を「利用率」という。実際の吸収量を計算する際には,養分吸収量から土壌養分由来の吸収を差し引くことが必要である。土壌養分由来の吸収量の概算値として,無肥料区あるいは3要素のなかの当該要素だけを施用しない区での吸収量が用いられることが多い。

     荒川ら (2010b) は,ガラス室内でコマツナを,施肥量をいろいろなレベルに設定して,約50日間ポット栽培し,3要素の吸収量を測定した。化学肥料窒素として硝安を使用したが,硝安の施用量を最大の599 mg N/ポットにしたときには,高い無機態窒素濃度のために,生育が若干阻害されて,窒素吸収量が低下した。ただし,ペレット化した窒素付加堆肥だけを599 mg窒素/ポット施用した際には,当初の無機態窒素量が,表2に示すように全窒素の6割程度で,約400 mg程度しかないため,生育や窒素吸収量が阻害されることはなかった(表3)。

    窒素(N)肥効率

     硝安や堆肥で施肥したコマツナの窒素吸収量から,無肥料区の窒素吸収量を差し引いた値を,窒素投入量で除した値(C/A)のパーセント値が利用率である。599 mg N/ポット区を除く,3つの施肥レベルの硝安区の窒素利用率の平均値は96.3%で,堆肥区での窒素利用率はいずれも60%台であった。

     化学肥料養分の利用率に対する,堆肥養分の利用率のパーセント値を「肥効率」と呼ぶ。堆肥中の養分総量に肥効率を乗ずると,堆肥中の化学肥料相当養分量を計算できるという便利さがあるので,肥効率を計算する。硝安区での窒素の利用率96.3%で堆肥区の窒素利用率を除すと,堆肥窒素の肥効率が平均66.8%となった。

     表3では,化学肥料で3要素を全く施用しない無肥料区とともに,無窒素区(化学肥料で標準量のリン酸とカリを施用するが,窒素を施用しない区)を設けている。無肥料区よりも無窒素区の方が,通常,作物生育が促進されて,土壌から供給される無機態窒素の吸収量も増える。この無窒素区での窒素吸収量を用いて同様な計算をすると,堆肥窒素の肥効率の平均値は66.2%となり,無肥料区での値を用いた場合とほぼ同じ値となった。無窒素での生育量や窒素吸収量が無肥料区よりも増えるといっても,わずかにすぎなかったため,こうした結果になった。

    リン酸とカリの肥効率

     では,堆肥中のリン酸やカリの肥効率はどうであろうか。無リン酸区や無カリ区は設けられなかったので,無肥料区での値を用いて,窒素の場合と同様に計算すると,平均で,堆肥のリン酸の肥効率は88.5%,カリでは92.8%となった。

     こうした結果から,窒素付加牛ふん堆肥の肥効率は,窒素で約70%,リン酸とカリではそれぞれ90%とするのが妥当といえよう。ただし,50日間栽培しただけのコマツナよりも栽培期間の長い作物の場合には,堆肥中の有機態窒素から無機化された窒素の吸収も加わって,肥効率は上昇するはずであり,肥効率は栽培条件で変わりうることに留意する必要がある。

     なお,荒川らは,窒素付加堆肥の3要素の肥効率について,窒素については実験値に基づいて70%としたものの,リン酸とカリについては,実験値からの計算値を用いず,リン酸で60%,カリで100%とした(荒川ら,2008の表1脚注)。しかし,他の資材で求められた既往の研究での値をアプリオリに用いるよりも,窒素付加堆肥での値を用いるべきであったろう。

    (3)ペレット化した窒素付加牛ふん堆肥からの無機態窒素放出パターン

     ペレット化した窒素付加牛ふん堆肥から,無機態窒素はどのような経過をへて作物に供給されるのだろうか。荒川ら (2010a) は,窒素付加堆肥とナタネ油粕をそれぞれ混和した土壌を,ガラス繊維ろ紙で作った円筒に充填して圃場に埋設した。そして,経時的に掘り出して,円筒内の土壌中の全窒素量を測定し,その減少量を追跡した(図3)。

     円筒内土壌に当初から存在した無機態窒素やその後に無機化された窒素は,土壌水に溶解し,やがて円筒外部に移動して次第に減少する。つまり,円筒内土壌での全窒素の減少は,堆肥や有機質肥料の無機化による有機態窒素の減少ではなく,円筒内土壌から外に移動した量である。このため,荒川らは,円筒内土壌の全窒素の減少を「溶出」,当初の全窒素量に対する減少量の割合を「溶出率」と表現した。

     ナタネ油粕は微生物に無機化され,100日目あたりまで継続的に円筒内土壌から溶出された。これに対して,窒素付加堆肥では,速やかに土壌中に溶出され,1か月以降の溶出はほとんど認められなかった。

     このときに溶出した窒素の圧倒的大部分は,窒素付加堆肥に当初から存在していた無機態窒素で,堆肥の有機物部分の無機化によって生じた窒素のは事実上無視できると考えられる。例えば,堆肥や有機質肥料からの無機態窒素の放出経過を,細かい時間間隔で計算できる温度変換日数法を用いて追跡した結果(例えば,郡司掛則昭 (1999) 有機質肥料中心の施肥法.農業技術大系.野菜編.第4巻メロン類.p.基275〜278.農文協の第2図参照)をみると,通常の牛ふん堆肥では施用直後から無機態窒素を少しずつ100日間以上,ナタネ油粕では50日間にわたって長期に放出し続ける。しかし,通常の牛ふん堆肥からは,図3で問題にしたように30日間で無機化される量は少なく,当初から存在した無機態窒素量に比べてごくわずかにすぎない。

     では,なぜ無機態窒素が円筒内土壌から一気に溶出しなかったかといえば,畑状態で土壌水が多くなかったこと,ペレット(径5 mm,長さ8 mm)から無機態窒素が円筒内土壌に溶け出て,さらに円筒外に溶出するのにも時間がかかったことなどが考えられる。

     ところで,窒素付加堆肥中の窒素の肥効率の値が,窒素付加堆肥の全窒素に占める無機態窒素の割合(表3の実験では68%と66%:表2の荒川ら,2010b)と近似していることが注目される。そして,コマツナのように短い栽培期間には堆肥から無機化で生ずる無機態窒素がわずかにすぎないことから,生育期間の短い作物では,窒素付加堆肥に当初から存在した無機態窒素を利用していると考えられる。つまり,生育期間の短い作物では,全窒素に占める無機態窒素の割合を肥効率の近似値として使えるといって良いであろう。ただし,2作,3作と連用していけば,土壌に蓄積した堆肥から生成する無機態窒素量が次第に増え,土壌の窒素肥沃度を高めることになるはずである。

    (4)窒素付加牛ふん堆肥による作物栽培

     荒川らは,コマツナ以外にも,上述したように窒素付加堆肥の3要素の肥効率を,窒素70%,リン酸60%,カリ100%として,窒素付加堆肥のみ,あるいはそれに化学肥料を補完して,(1)スイートコーン,冬どりハクサイ,秋レタスを栽培し(荒川ら,2008),(2) 冬・春ニンジン,スイカを栽培し(荒川ら,2010a),(3)土壌有機物の乏しい諫早湾干拓地で,窒素付加堆肥と牛ふん堆肥を混合して作成した成分調整成型堆肥(全窒素含量3〜3.5%)を乾物1トン/10aと硫安窒素(6 kg/10a)を併用して,春作バレイショを栽培した(荒川ら,2009)。そして,いずれの場合も,化学肥料によって3要素を施用した場合と遜色ない収量と品質が得られることが確認され,しかも,通常の牛ふん堆肥施用で起きるカリの蓄積も生じず,さらに,土壌の全窒素含量が増加して,次作以降の土壌の窒素肥沃度が向上することが期待できた。

     窒素付加堆肥中の当作の作物に吸収される窒素の主体は無機態窒素で,しかも硝酸イオンが多い。このため,窒素付加堆肥の施用は播種の直前に行なうことが必要で,施用後に播種までに長い時間が経過すると,降雨で硝酸イオンが流亡してしまう。

    ●窒素付加牛ふん堆肥の購入

     窒素付加牛ふん堆肥は,熊本県合志市にある堆肥センター(合志バイオX(エックス)堆肥センター)(5 mm径のペレットで,窒素は現物当たり3.5 %以上,乾物4%以上)から販売されている。堆肥窒素濃度の制御は難しいが,脱臭用堆肥の窒素濃度を随時分析しながら窒素付加堆肥の取り出しを行なうことで,ロット毎の窒素濃度が一定になるよう努めている。「肥料取締法」の堆肥の品質表示基準では,窒素について,全窒素量のパーセントを表示することが規定されている。しかし,通常の堆肥では無機態窒素量が多くないため,その表示は義務になっていない。窒素付加堆肥では無機態窒素濃度が高いため,その表示が不可欠であり,全窒素と無機態窒素の両含有量を表示して耕種農家の利便性を高めている。

    ●窒素付加牛ふん堆肥の有機栽培や特別栽培での利用

     有機農産物の日本農林規格では,家畜ふん堆肥について,家畜の餌の内容物や使用投薬は問題視せず,堆肥化段階での化学合成された凝集剤や悪臭防止剤の使用は不適合としている。この規定は,日本では有機畜産がほとんど存在しないので,欧米のように,有機飼養された家畜の排泄物に由来するものだけを有機栽培で認めると,日本では家畜ふん堆肥のほとんどが有機栽培に利用できなくなってしまうことを回避するための便法といえる(環境保全型農業レポート.No.86 有機農業用家畜ふん堆肥の品質基準の必要性)。

     とはいえ,日本国内で販売する有機農産物には窒素付加堆肥を使用することができる。窒素付加堆肥に含まれる無機態窒素は,化学反応によって生じたものでなく,微生物によって生成されたものである。そして,特別栽培農産物の生産では,化学肥料窒素の使用量を地域の使用量の半分以下に削減することが求められている。窒素付加堆肥は,無機態窒素を多く含むとはいえ,化学肥料ではないので,その使用は削減対象外である。

     生育期間が短い作物や,初期生育を旺盛にすることが必要な作物を,有機栽培や特別栽培する際には,便利な資材であろう。

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