No.136 日本の輸入食品の残留動物用医薬品の概要
抗生物質などの動物用医薬品は,罹病した動物の治療に使用されているだけでなく,汚濁された水での魚介類や水産動物の養殖や,過密な状態での家畜や家禽の飼養での疾病予防や動物の成長促進のためにも使用されている。動物用医薬品には発がん作用などの危険性があるものもあり,水産物や畜産物への残留が問題になっている。
わが国の輸入した食品中の残留動物用医薬品の検出状況については,国立医薬品食品衛生研究所安全情報部 (2008) 輸出国における農薬等の使用状況等に関する調査(平成19年度調査)に記されている。
1)動物用医薬品の全体での違反件数は,2002年度26件,2003年度63件,2004年度60件,2005年度50件であったが,ポジティブリスト制度が実施された2006年度は246件と前年度の約5倍に急増し,2007年度の違反件数も158件であった(表1)。
2)魚介類と魚介類以外の品目に分けると,2006年度以降の違反件数の急増は,主に魚介類およびその製品によるものであった。
3)国別でみた場合,2002〜2005年度の期間においては,中国の違反件数が圧倒的に多かったが,2006年度および2007年度はベトナムが最も多く,次いで中国であった。ベトナムと中国を合わせた違反件数は,2006年度は約73%,2007年度は約88%であった。
4)中国の違反件数は,年度で大きな違いがみられなかったのに対し,ベトナムの違反件数は2006 年度及び2007 年度に集中していた。
5)ベトナム,インドネシア,台湾,チリなどは大部分が魚介類による違反であった。一方,米国(花粉製品),ブラジル(鶏肉),フランス(ウサギ肉)は魚介類についての違反がなかった。
6)ポジティブリスト制度の導入によって,動物医薬品に新たに最大残留濃度や一律基準を定め,かつ,検査件数も増やしたために,違反件数が増加し,ポジティブリスト制度の導入は輸入食品の安全性監視の強化に貢献しているといえる。
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