No.66 EUの統合環境地理情報データベース
EU諸国の合意でINSPIRE構築が前進
●データベース構築の経緯
今日では様々な情報を地理情報システムに載せたデータベースや地図が作成され,て公開されている。しかし,多くの加盟国から構成されているEUではそうしたデータベースを構築するには,全ての加盟国がデータの取り方を統一し,完成したデータベースの公開を合意することが必要になる。
データの取り方の統一の必要性について次の事例が紹介されている。例えば,ルクセンブルクとドイツでは標高の基準点の違いによって,山の標高に2.3 mのずれが生じている。また,ドイツとスイスの国境のライン川に橋を建設した際に,橋の中間点で27 cmの高さのずれが生じてしまった。
欧州委員会は2004年にINSPIRE(INfrastructure for SPatial InfoRmation in the European Union:ヨーロッパ連合空間情報基盤)(inspireの通常の意味である「鼓舞する」に引っかけている)を構築する法律(指令)を提案したが,一部加盟国が一部情報の公開に躊躇し,指令案の審議が停滞していた。しかし,2006年11月25日夜に欧州議会と閣僚理事会でINSPIREを構築する指令を作成することが合意された。この結果,指令案は2007年早々に承認され,2年以内に加盟国が関係法律を整備することになる 。
●INSPIRE構築指令案
2004年に提案されたINSPIRE構築指令案は,EUの環境政策および環境にインパクトを与える他の分野の政策や活動に資することを目的にして,INSPIREを構築する際の一般的規則を定めるものである。
地理情報システムに盛り込むデータとして,行政単位,交通網,水系,自然保護地区,標高,土地台帳,衛星・航空映像,建築物,土壌,地質,土地利用,環境汚染に起因した疾病の発生状況,遺伝子組換体の導入状況,行政組織の所在地,鉱工業施設の所在,農業施設の所在,硝酸脆弱地帯や廃棄物処分場などの管理・規制地,災害危険地域,大気汚染状況,気象データ,生態系区分,生息地・ビオトープ,動植物の分布などが上げられている。こうした情報を公開して,環境保全に役立てることを意図している。
公開された情報を見たり検索したりするのは無料だが,情報をダウンロードするのは有料とすることが考えられている。
●INSPIREの試行
既にINSPIREは実際の作業を開始しており,一部データの試行的提供を行っている。
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