防除大潮防除(おおしおぼうじょ)月のリズム(月齢)を意識して、満月か新月の前後にあたる大潮の時に防除する方法。虫(害虫)はこの時期に産卵することが多く、孵化直後のまだ弱い一齢幼虫をねらえることから、害虫の防除に効果が高いと言われている。 尿素混用(にょうそこんよう) チッソ肥料である尿素を農薬の薬液に少量混ぜると防除効果が高まる。ハンドクリームに浸透力の高い「尿素入りクリーム」があるが、同じような原理なのか、尿素が葉の表面のワックス層やクチクラ層の細胞をゆるめ、農薬を浸達しやすくする作用があるようだ。 砂糖混用(さとうこんよう)殺虫剤に少量の砂糖を混ぜて散布すると、花弁やガクに隠れていたスリップス(アザミウマ)が砂糖におびき寄せられ出てくるので殺虫効果が高まる。バラ農家の間で密かに広がっていた不思議な裏技。トルコギキョウやアスターなどバラ以外の花や、ナスなど野菜類でも同様の効果を実感する農家が増えている。愛知県のバラ農家........ 雨量計(うりょうけい) 文字通り降雨量を調べるための道具だが、自分の圃場における防除適期がわかるので、「ミカンの黒点病が防げた」「カキの炭そ病を撃退できた」という農家続出。じょうごとポリタンクで自作できる「防除器具」と位置づけたい。 雨前散布(あめまえさんぷ)せっかく散布した薬剤が流されないように、防除は雨上がりに。しかし、これは必ずしも正しくない。佐賀県上場営農センターの田代暢哉さんによると、殺菌剤の場合は雨前散布が原則だという。そもそも、病原菌の大部分は雨で拡散し、感染する性質を持っている。その前に殺菌剤で樹体を保護しておかなければならない。あるい........ キリナシノズル(きりなしのずる) 農薬散布に使われる噴口のひとつ。一般に使われる「霧ありノズル」は薬液が細かい霧状になって噴き出すが、「キリナシノズル」は霧よりもっと大粒の薬滴が噴き出す。 静電防除(せいでんぼうじょ) 薬液の粒子を帯電させ、静電気の力で作物体に付着させることで防除効果を高めたり、農薬使用量を減らす方法。農薬がかかりにくい葉裏や茎葉の混み入ったところにも、重力に逆らって薬液を付着させられる。周囲へのドリフト(飛散)を減らす効果もある。 光防除(ひかりぼうじょ) 光の波長は色として表われるが、特定の波長(色)の光を照射したりカットしたりすることで、害虫を忌避もしくは誘殺、また、病気に対する作物の抵抗力を引き出すことができる。 煙防除(けむりぼうじょ)ハウスの中でモミガラや薪などを燃やし、煙を充満させることで病害虫の発生を抑える方法。エンドウやイチゴのウドンコ病、灰色カビ病などカビ性の病気予防に効果があるほか、ダニやスリップスなど害虫の発生も少なくなるという報告もある。また、煙でハウスの中に霧をつくったような状態になり放射冷却を防げるため、厳寒........ 高温処理(ヒートショック)(こうおんしょり(ひーとしょっく)) 栽培中の作物を一時的に高温にさらすことで病害虫を減らす「温度防除」法。温度コントロールだけで農薬使用量を大幅に減らせてしまうじつに画期的な方法だ。高温処理は、病害抵抗性誘導により作物の抗菌活性を高めることがわかっている。 病害抵抗性誘導(びょうがいていこうせいゆうどう) 植物は、病原菌の攻撃から自分の体を守るしくみを備えている。しかし、その防壁のようなしくみをかいくぐる菌がいるために作物に病気が出るのだが、病原菌の侵入前にあらかじめ体内に「指令」を出して防壁を強化しておく(抵抗性を増す)方法が「病害抵抗性誘導」である。 太陽熱処理(たいようねつしょり)『現代農業』では、「太陽熱消毒」とはよばず「太陽熱処理」とよぶことが多い。臭化メチル全廃や脱土壌消毒剤の動きが強まる中で改めて注目を集めている技術だ。 土壌還元消毒(どじょうかんげんしょうどく)大量の有機物と水で畑を還元状態にして土壌病害を防除する方法。北海道の道南農試がネギの根腐萎ちょう病(フザリウム菌)対策として開発した方法から始まった。土に米ヌカやフスマなど、微生物のエサになりやすい有機物を約一tまいて耕耘、タップリかん水してからビニール被覆すると、バクテリア(細菌)などが急増し、........ ペタペタ農薬(ぺたぺたのうやく)デンプン液剤(粘着くんなど)やデンプン還元糖化物液剤(エコピタなど)のこと。粘着成分で、ダニ、アブラムシ、コナジラミなどの動きを封じたり、気門を塞いで窒息させたりするほか、ウドンコ病の子のう胞子や分生子の拡散も抑える。物理的な作用で防除するので連続散布が可能、天敵への影響が少なく、抵抗性がつく心配........ スギナ汁(すぎなじる)雑草のスギナから抽出したエキス。その自然農薬としてのデビューは華々しかった。たとえば、鹿児島県の山下勝郎さんは、スギナを乾燥させて煮出した液をキュウリに散布。ウドンコ病など「ほとんど見ていない」という。茨城県の米川二三江さんは、スギナを水に漬け込んで発酵させた液のおかげで減農薬に成功。アオムシが寄........ ミカンの皮(みかんのかわ)野菜や果物の皮には、外界(紫外線や病害虫)から身を守るためにフラボノイド(抗酸化成分)などの機能性成分が多く含まれている。その不思議なパワーを農業に利用する例として、ミカンの皮の人気は根強い。たとえば、ネギの植え穴や土寄せするときに乾燥させて細かくしたミカンの皮を入れることで赤サビ病を防いでいる農........ カラシナすき込み(からしなすきこみ)カラシナのように辛味成分を持つアブラナ科作物をすき込んで土壌病害を抑制する新しい防除法。辛味成分のグルコシノレートが土中で加水分解すると、イソチオシアネートというガスが発生する。イソチオシアネートは、肺ガンや直腸ガンなどのガンを抑えるという研究もある機能性成分だが、土壌消毒剤のバスアミドの成分と同........ センチュウ対抗植物(せんちゅうたいこうしょくぶつ) センチュウに対する有害物質を含有あるいは分泌し、土中または植物組織内外のセンチュウの発育を阻害するか死に至らせる作用をもち、その栽培や施用がセンチュウ密度の積極的な低減をもたらす植物。混植や輪作で活用する。 輪作(りんさく) 同じ作物を毎年同じ畑につくる連作に対し、異なる作物を順につくること。輪作することで土の養分の偏りを防ぐことができ、土壌病害虫の防除効果も期待できる。 混植・混作(こんしょく・こんさく)自然の野山では一つの植物だけが広範囲に植わっていることはあまりなく、雑多な混植・混作状態でお互いバランスをとっている。人為的に「栽培」するとなると、ある程度決まった作物を作付けせざるを得ないわけだが、そんな中になるべく他の作物も取り入れて、多自然型・複雑系の畑にしようという工夫が各地で生まれている........ コンパニオンプランツ(こんぱにおんぷらんつ)「共栄作物」ともいう。自然の中で植物は、お互いに影響し合って生きている。私たち人間の社会と同じように、作物の世界にも好き嫌いがあり、混植・混作などでこれを利用したもの。組み合わせにはいろいろな型があるが、性格がちがう作物を混植しお互いに補い合うやり方が代表的。たとえば、日照を好むものと、日陰を好むも........ おとり作物(おとりさくもつ)「蓼食う虫も好き好き」とはよくいったもので、農作物に大きな被害をもたらす害虫や病原菌にも食物に対する好みがあり、おとり作物は、それを活用するもの。以下の三つの活かしかたがある。 バンカープランツ(ばんかーぷらんつ)天敵を増やしたり温存する作物・植物のこと。バンカーは「銀行」の意味で、天敵を畑の銀行に貯金しておき、作物に害虫が発生したときにはいつでもこの銀行から天敵を払い戻せるようにするわけだ。無防除だと害虫増加の後を追うように天敵が増加するのが自然の摂理だが、それでは被害抑制に間に合わず、収穫が激減する。バ........ 土着天敵(どちゃくてんてき) 天敵を活用した防除には、資材化されている購入天敵を利用する場合と、地域にもともといる土着天敵を捕まえて利用する場合がある。 ただの虫(ただのむし) 虫といえば、まず頭に浮かぶのが「害虫」。作物を加害する困った虫である。その次に思いつくのは天敵などの「益虫」。害虫を食べてくれるありがたい虫である。だが、虫見板などを使って田畑の虫を見てみると、じつは害虫でも益虫でもない「ただの虫」が圧倒的に多い。 リサージェンス(りさーじぇんす) ハダニが発生してきたので農薬を散布したら、かえってハダニがふえてしまったというように、害虫防除のために農薬を散布すると、害虫が散布前よりも、かえって多くなる現象のこと。 虫見板(むしみばん) 田んぼにいる「虫(生きもの)」を見るための板(プラスチック製の下敷きのようなもの)。一九七八年に福岡県の農家が考案したもので、その後、農業改良普及員だった宇根豊さんを中心に全国的に広まった。 フェロモントラップ(ふぇろもんとらっぷ)昆虫の多くは成熟した雌成虫が性フェロモンを分泌し、これに雄成虫が誘引されて交尾をする。性フェロモンを人工的に合成して、ゴムやプラスチックなどに吸着させたものが誘引剤。誘引剤を捕獲器(トラップ)の中に入れたものがフェロモントラップで、これに誘殺された雄成虫の数を調査することによって、目的とする害虫の........ 防虫ネット(ぼうちゅうねっと)露地野菜にトンネル被覆したり、ハウスのサイドや妻面に張って害虫を防ぐネットのことで、無・減農薬栽培に最適の資材。〇・二?などと非常に目合いの細かいものまで販売されているが、目合いが細かいほど防げる害虫の種類は増えるものの、通気性が悪くなるというのが通説。だが、じつは、通気性の良し悪しはネットの密閉........ ストチュウ(すとちゅう)酢、焼酎、糖を混ぜて発酵させたもの。水で薄めて葉面散布すると、酢による酢防除効果や焼酎による殺菌・消毒効果に加え、糖分により葉の光沢が増すなど、病気に対する抵抗力が高まる。材料はいずれも人が飲めるもので、安全そのもの。使用する農家のなかには、毎日おちょこ一杯程度を健康飲料として飲んでいる人もいる。........ キチン・キトサン(きちん・きとさん) キチンはカニの甲羅やエビの殻を構成する成分で、昆虫や多くの微生物の表皮もキチンで構成されている。キチンを水酸化ナトリウムで処理したものがキトサンで、キチンとキトサンを総称してキチン質という。 活性酸素(かっせいさんそ)活性酸素は、生物にとって害になるものとして説明されることが多いが、毒はまた薬としての働きもする。活性酸素の一種、過酸化水素は、植物の生長過程では積極的につくり出されていて、過酸化水素を適当な濃度に薄めて施用すると生長促進効果が見られるという研究もある。適量の活性酸素を植物に与えると、抗酸化物質(グ........ アレロパシー(あれろぱしー)訳して「他感作用」という。植物に含まれる化学物質によって、他の植物(自分自身や動物を含めてもよい)が何らかの影響を受けること。植物にはいろいろな物質が含まれ、それらのなかには殺菌作用をもったり、虫を誘引あるいは忌避する作用をもったり、あるいはホルモンのように、生長をコントロールするものなどがある。........ 雑草の高刈り(ざっそうのたかがり) 高刈りとは、地面すれすれではなく、ある程度高い位置で草を刈る方法。「刈った~」という作業の達成感に欠け、人の目も気になるが、それを差し引いても、お釣りがくるほどの利点がある。静岡県農林技術研究所・稲垣栄洋さんが田んぼのアゼ草を例に説明してくれている。 |