月刊 現代農業 > 「現代農業」用語集

畜産

放牧(ほうぼく)

家畜を屋外に放して飼うこと。温暖で雨が多い日本の無限の草資源を生かして家畜を養う技術。
戦後日本の畜産は大規模化・効率化が追求され、畜舎で集約的に飼う方法が主流となってきたが、近年、飼料価格が高騰し、糞尿処理問題などの矛盾も表面化してきた。放牧は、これらの課題を解決し、家畜を健康に飼え........

マイペース酪農(まいぺーすらくのう)

放牧を基本とし、化学肥料や濃厚飼料などの外部資源の投入を最小限に抑え、土、草、牛の関係・循環を良好に整えることを重視する酪農。北海道中標津町の酪農家・三友盛行さんが提唱し、北海道東部を中心に実践する人が増えている。単に自分(人間)のペースでのんびり酪農をするという意味ではない。規模拡大、濃厚飼料多給........

二本立て給与(にほんだてきゅうよ)

千葉県の獣医師・渡辺高俊さん(故人)が全二〇万頭の直腸検査から乳牛を健康に飼うために編み出した飼料給与法。名称の由来は飼料給与を粗飼料(基礎飼料)と濃厚飼料(変数飼料)に、乾乳期と泌乳期に分けて考えることから。
もともと牛は草を食べて、自分の健康を維持し、受精し、胎内で子どもを育て、産........

サンドイッチ交配・五元交配(さんどいっちこうはい・ごげんこうはい)

サンドイッチ交配とは、宮城県の獣医師・宮下正一さんが提唱する和牛(黒毛和種)の交配法。種雄牛の系統を、増体しやすい体積系と肉質が高まりやすい資質系の二つに分け、三代祖(父、母の父、母の母の父)が二系統の互い違いになるように(サンドイッチのように)交配する(体積系 資質系 体積系、または資質系 体積........

重曹給与(雌雄産み分け)(じゅうそうきゅうよ(しゆううみわけ))

和牛では母牛に重曹を毎日三〇g給与すると高値で売れるオスが生まれやすくなり、乳牛では重曹の給与を中止して第一胃のpHを下げると、後継牛となるメスが生まれやすくなる。獣医師・宮下正一さんがこの傾向を発見した。
理由はまだ明らかになっていない。重曹を与えると第一胃内のpHとともに母体、とり........

高タンパク育成(こうたんぱくいくせい)

昔から「子牛のハラは粗飼料で作る」といわれ、和牛の子牛のエサは長ワラ主体で濃厚飼料をほとんど与えないやり方が主流だった。だが、最近は枝肉重量で五〇〇?を超える大きい牛を出荷することが肥育生産者の目標となっている。そのためには、肥育に移っても食い止まらない胃袋(第一胃、ルーメン)を持っていることが必........

シマシマ牛舎(しましまぎゅうしゃ)

鹿児島県の家畜人工授精師、池之上祐二さんが考案した牛舎の様式。ドーム型牛舎、サンシャイン牛舎とも呼ばれる。屋根に畜産波板とポリカネート(透明な波板)を交互に張ってシマシマ状にすることが特徴。牛舎内に適度に日光が入るので床が乾きやすく、牛舎のニオイが減る。牛のストレスも減り、日光浴効果も加わって受胎........

飼料イネ(WCS)(しりょういね)

牛の飼料用にするイネのこと。乳熟期~黄熟期のイネ茎葉をモミごと収穫して密封し、乳酸発酵させたホールクロップサイレージ(WCS)の形で利用されることが多い。牛の嗜好性も高く、食いつきがよいといわれている。転作田で急速に生産が増加中(飼料米の項目を参照)。
乳を生産する乳牛用にはタンパクが........

飼料米(しりょうまい)

家畜の飼料として生産された米。栽培では食用イネ用の機械がそのまま使えるので新たな投資が必要なく、麦やダイズを栽培しにくい湿田でも転作作物として取り組みやすい。農業者戸別所得補償制度(現・経営所得安定対策)によって作付面積一〇a当たり八万円が交付されるようになったことをきっかけに、転作田を利用した生........

放牧養豚(ほうぼくようとん)

豚を野外で飼養すること。手間やコストが減らせるだけでなく、豚は土掘りや泥浴びなどの行動が自由にできるので、舎飼いに比べてストレスが大幅に減り、病気にかかりにくくなる。また、東北大学の佐藤衆介教授らの研究では、放牧豚の肉は舎飼いの豚に比べてオレイン酸などの不飽和脂肪酸が多く、肉色が濃く、豚臭さが少な........

自然卵養鶏(しぜんらんようけい)

岐阜県の中島正氏が提唱した小羽数平飼い養鶏のこと。一〇万、一〇〇万羽単位という大型ケージ養鶏のあり方に疑問を投げかけ、平飼いと自家配合飼料を基本に、ニワトリの生態にあった健全な生育と良質な卵の生産を目指す。
鶏卵は、産直を中心に付加価値を付けた価格で販売されるが、品質の高さから消費者に........

畜産の土着菌利用(ちくさんのどちゃくきんりよう)

土着菌の畜産利用は、韓国自然農業協会・趙漢珪さんによって提唱された。
今の畜舎は頻繁に殺菌することで微生物叢が貧困化し、家畜の腸内細菌も抗生物質の投与でバランスを失いがち。そのため、その土地に馴染んだ土着の微生物を近くの山野から採取・培養・拡大し、畜舎や家畜体内に取り込むことで、舎内環境........

家畜のお灸(かちくのおきゅう)

人間と同じように牛や豚にも多くのツボ(経穴)がある。そのツボにお灸をして家畜がもつ自然治癒力を発揮させ、病気や障害を治療する東洋医学的手法。速効性で副作用がなく、薬物も使わず、味噌とモグサさえあればいつどこでもできるのが魅力。獣医の安部敬一さんは、牛の繁殖障害のほか、第四胃変異、乳房炎、下痢症など........

下痢止め(げりどめ)

おもに牛や豚で、身の回りにあるものを生かしたさまざまな下痢止め、下痢予防の工夫が行なわれている。お金がかからず、抗生物質の多用による耐性菌の出現や副作用の心配がない。
下痢による脱水症状を予防・改善するものとしては、ポカリスエット粉末や塩と砂糖をお湯で溶いたものがある。下痢による低血糖........