イナ作・水田活用_栽培体系への字稲作(へのじいなさく)田植え後はさみしい姿、ゆっくりした生育で、出穂四〇~三〇日前ごろの生育中期にもっとも旺盛になり、収穫期に向けておだやかに色がさめていく こうした生育パターンを、その文字の形状になぞらえて「への字」稲作と呼ぶ。故・井原豊さんが提唱したイネつくりで、一九八八年の本誌連載以来、全国にこの名称が広まった........ 堆肥稲作(たいひいなさく) 堆肥を「肥料」として使い、足りない分を化学肥料で補う堆肥栽培の稲作版。 疎植(そしょく) 単位面積当たりの株数を多く植えるのを密植、少なく植えるのを疎植という。坪当たり何株植え以下なら疎植か?の定義はないが、地域平均と比べて少なければ疎植といっている場合が多い。 直播栽培(ちょくはさいばい(じかまきさいばい))別の場所で苗を育てたりせず、種モミを直接水田に播種してイネを育てる方法。「稲作作業のうち、育苗の占める割合は七〇%」という人もいるほど、苗つくりは労力のかかる仕事であり、これを省略できれば、忙しい春作業がうんとラクになる。規模拡大も容易になるので大きい農家から注目されることが多いが、苗箱運びなどの........ 深水栽培(ふかみずさいばい)過剰な分けつを抑えたり、倒伏しにくくしたり、はたまたヒエなどの雑草を水没させて抑えるなどの目的で、田んぼの水位を一定期間深く保つ栽培法。水位の目安は、いちばん上の葉の葉耳。するとイネは、酸素を求めて上へ伸びることを優先するため、分けつには養分が回りにくくなる。無効分けつの発生が抑えられるため、一本........ 水根・畑根(みずね・はたね) 水生植物であるイネの根には通気組織が発達する。そのため湛水状態の土中にある根の先端まで酸素を送ることができるのだが、水管理のしかたによって、その通気組織の発達度合いが変わるのではないかという観察が、多くの農家によってなされている。 溝切り(みぞきり)田面に凸凹があると、落水しても窪んだところは水がたまり根腐れしやすい。そこで、中干し前の出穂四〇日前ころに、四~一〇条おきに、深さ一〇~一五cm、幅約二〇cmの溝を切り、枕地もぐるりと切って各溝を排水口に繋げておく。排水だけなら一〇条おきくらいでよいが、溝に水をためて飽水管理をするには四~六条おきでな........ 茎肥(くきごえ)出穂四五~四〇日前に施す追肥のこと。肥効ムラをなくす「つなぎ肥」とよばれることもあるが、この時期の追肥は本来もっと積極的な意味を持つ。三六~五〇株/坪の疎植にし、元肥を減肥して初期茎数をゆっくりとり、このころに目標茎数の三~五割を確保する稲作(井原豊さんの「への字稲作」、稲葉光國さんの「太茎大穂のイ........ 穂肥(ほごえ)出穂前二〇~一〇日に施す追肥。イネは出穂三〇日前頃の穂首分化期から出穂前後までの期間が一番旺盛に肥料を吸収する。肥料が少ないと分けつが退化したり、幼穂の穎花が分化できなくなったり退化して穂が小さくなってしまう。増収するには、この間の追肥の効果が高い。しかし、出穂三〇~二〇日前までは下位節間(第四・第........ 実肥(みごえ)出穂前後から穂揃い期(出穂一〇日後くらい)辺りまでに施す追肥のこと。出穂後のチッソ不足は、光合成能力の低下や稲体の老化を招く。その結果、登熟歩合や千粒重の低下、倒伏、イモチ病の発生を助長する。ただ近年は、実肥を施すと玄米のチッソ含量(タンパク含量)が増えて食味が悪くなるといわれ、敬遠される。実際には........ チェーン除草(ちぇーんじょそう)田植え直後の苗の上からチェーンを引っ張ることで、条間・株間を問わず田んぼ全体の表土をかき混ぜて除草する技術。普通の除草機では入れないほど早い時期(田植え三日後から一週間後)から始められるので、雑草が根を張る前に退治することができる。自然栽培の第一人者・青森県の木村秋則さんの提案をヒントに、宮城県の........ 二回代かき(にかいしろかき) 田んぼの雑草発生を減らすための代かきの仕方。ポイントは、一回目の代かき(荒代かき)後、水を張ったまま一〇日以上おくこと。水温を上げて雑草(とくにコナギ)をできるだけ発芽させる。出てきた草を二回目の代かき(植え代かき)で浮かせる、もしくは練り込む。 米ヌカ除草(こめぬかじょそう) 田植え後、水田の表面に米ヌカをまくことで草を抑える除草法。たんに草を抑えるだけでなく、水田の生きものを豊かにしたり、米の食味を上げる効果がある。 トロトロ層(とろとろそう)水田の表層数cmにできる、文字どおりトロトロの粒子の細かい泥の層。米ヌカなどの有機物が水田の表面・表層に集中して入ると土ごと発酵が起こり、微生物や小動物(イトミミズ)が増殖・活性化してトロトロ層が形成される。土壌の粒子が粉々に細かくなるだけでなく、土壌中のミネラル成分、肥料成分が溶け出して、イネや微........ イトミミズ(いとみみず) 頭を土中に入れ、尾を水中でゆらゆら動かしている水生ミミズの総称。水田でよく見られるのは、水中に突き出した尾の部分に細かい毛があるエラミミズと、毛のないユリミミズ。いずれも体長は一〇cmに満たない、細くて小型のミミズ。 紙マルチ・布マルチ(かみまるち・ぬのまるち) 畑ではマルチを敷いて草を抑えるのは普通だが、これを水田にも応用してしまったのが、元鳥取大学の津野幸人さん。田んぼ全面を紙や布のマルチで覆うと、日光が遮られ、雑草が生えてこない。 冬期湛水(とうきたんすい)冬の間にも水を張っておく田んぼの管理方法。イネ刈り後、ワラの散らばる田んぼに、米ヌカやボカシ肥、さらにミネラルなど、微生物のエサになるものをまいてから湛水する。するとどうやら「土ごと発酵」が起きるらしく、春先には土がすっかりトロトロになってワラの上まで盛り上がるのが観察される。田植え後の米ヌカ除草........ 二山耕起(ふたやまこうき) 秋から翌春にかけて、ロータリの中央に培土板をつけて数回耕し、田んぼの中にウネ(二山)を立てて土を乾かす。青森県で自然農法に取り組んできた故・山道善次郎さんは、このやり方で寒冷地でもワラの分解が進み、田んぼに雑草が生えにくくなることを発見。各地に広まった。 レンゲ・ヘアリーベッチ(れんげ・へありーべっち)かつて化学肥料が貴重だった時代、春先の田んぼは一面紅色のレンゲの花に覆われていたものだ。マメ科であるレンゲのチッソ固定力はじつに強力で、一〇cmの生育でだいたい一〇a一tの生草重、四~五kgのチッソが供給できる。普通は一五cmや二〇cmくらいには育つので、もっと多くなる計算だ。最近は、同じマメ科で同様にチ........ 菜の花稲作(なのはないなさく) 黄色い菜の花を春、田んぼ一面に咲かせ、緑肥としてすき込む稲作。「菜の花男」とも名乗る実践農家・岡山市の赤木歳通さんは、その効果を、①憩いの場が提供できる ②景観は圧巻だ ③見に来る人に米が売れるかも ④抑草効果は絶大だ ⑤究極の「への字生育」になる ⑥最強の土づくりになる、とまとめている。 アイガモ水稲同時作(あいがもすいとうどうじさく) アイガモを使って、田んぼの除草をする方法として知られている。除草剤がいらなくなることとアイガモの可愛さもあいまって、農家だけでなく、学校や消費者にもとても人気がある。 「白い根」稲作(しろいねいなさく) ジャパンバイオファームの小祝政明さんがすすめているイネつくり。真っ白な根が特徴的なことからこう呼ぶ。小祝さんは、白い根=根のまわりに酸化鉄の膜ができないので、ミネラルも肥料分も吸いやすい状態、と見る。秋落ちしにくく、食味がよく、タンパク値も低いイネができる。 藻にマツ(もにまつ)「田んぼの藻にマツが効く」縮めて「藻にマツ」。田植え後アオミドロなどの藻が繁殖すると、田んぼの水温が上がりにくい。風に吹き寄せられて、まだ小さいイネを倒してしまうこともある。そんなやっかいな藻が、どこにでもあるマツの枝を挿すだけで消えるという驚きの技術だ。農文協の農家普及でも定番の話題となり........ 地下かんがい(ちかかんがい)田んぼの暗渠を利用し、排水はもちろん、用水を引き込むことで地下から水を供給できるようにする仕組み。入水時は水が暗渠管を通って田んぼの隅々まで速やかに広がり、逆に落水時は暗渠から排水路へと速やかに抜けるので、入排水が画期的に速くなる。水口・水尻に水位調節装置をつけることで、水田の水位調節はもちろん、........ 小ウネ立て(こうねたて) 耕耘と同時に高さ一〇cmほどのウネを立てながら播種すること。小さいウネを多数立てることで、転作作物が生育初期に受けやすい湿害を回避することができる。幅の狭い小さいウネは、幅の広い大きいウネよりも、ウネの上面に水が停滞しにくく、タネの周囲の排水性がよくなるからだ。 ダイズの摘心栽培(だいずのてきしんさいばい) ダイズの生長点を摘むことで分枝を増やし、多収する栽培方法。着莢数が増えるとともに茎が太くなって倒伏しにくくなり、収穫ロスも減らすことができる。 |