月刊 現代農業 > 「現代農業」用語集

暮らし・経営・地域

ドブロク(どぶろく)

辞書的にいうと「発酵させただけの白く濁った酒」で片付いてしまう。しかし、それは農家の暮らしに根ざした「文化」そのもの。わが家のお米を使って晩酌用のお酒を毎年仕込むことは、農家として至極当たり前の「自給」の一環である。
連綿と受け継がれてきたことであると同時に、発展進化中のものでもある。........

ドクダミ酒(どくだみしゅ)

ドクダミの茎葉の搾り汁を発酵させて作るお酒。門外不出の家伝薬として千葉県の農家で作られてきたものを崇城大学の村上光太郎さんが本誌で紹介するやいなや、爆発的な人気を巻き起こした。
ドクダミと聞いてまっさきに浮かぶのはあの独特のニオイだが、発酵させると不思議なことにリンゴ酒のような芳しい香........

柿酢(かきす)

カキからつくる果実酢。皮のまわりについている野生酵母が果実の糖分を分解してアルコールをつくり、それをやがて酢酸菌がゆっくり酢に変えていく。だからカキは、なるべくなら熟して糖度の高いほうがいい。
もっとも、農家なら材料に事欠かない。甘柿渋柿問わず、庭の樹に成りすぎた分を使ってもいいし、熟........

米粉(こめこ)

うるち米を挽いてつくる米粉は、昔から団子などに使われてきたものの、米はご飯として「粒」で食べるのが中心だった。それを変える可能性を秘めているのが、米粉パンや米粉麺、米粉スイーツなどへの米粉の利用だ。米粉でつくったパンやケーキはもっちり、しっとり、麺はもちもちして弾力があるなど、食感に優れている。<........

固くならないもち(かたくならないもち)

もちは普通、つきたてはやわらかいが、冷めればカチカチになってしまう。ところが岩手県の川村恵子さんが販売する大福もちは、冷めても二日間は固くならない。秘密は、昔のおばあちゃんのもちつきを参考にした「水さらし・二度つき法」。ついている途中で一度もちを取り出し、水に浸けてから、再度もちつき機へ戻してつく........

産地レシピ(さんちれしぴ)

本誌の長期連載「これならたくさん食べられる 産地農家の食卓レシピ」の略称。
世の中にはたくさんの料理レシピがあるが、産地レシピとは、その素材を知り尽くした農家だからこそ知る、素材の味が引き立つレシピ・とにかくたくさん食べられるレシピ・簡単にできる身体にいいレシピのことをいう。
........

つぼみ菜療法(つぼみなりょうほう)

春先にとう立ち(開花抽苔)するフキノトウやハクサイ、ダイコン、ナタネ(ナバナ)、ホウレンソウなどの花が咲く前の花茎(つぼみ)を食べることで、花粉症を治す療法のこと。福島県いわき市の薄上秀男さんが紹介したところ、問い合わせが殺到。まったく症状があらわれなくなったという喜びの声も寄せられた。効果の理由........

酵素風呂(こうそぶろ)

オガクズに土着菌や米ヌカ、糖蜜などを加えて混ぜれば、それだけでもう六〇~七〇度、微生物の力で爆発的に温度が上がる。そこに砂風呂の要領で“入酵”すれば、身体の芯から温まる。自然治癒力もジンワリと引き出されていく。
この酵素風呂を本誌で最初に紹介してくれたのは、千葉県のイチゴ農家・大久保義........

地あぶら(ぢあぶら)

ナタネやヒマワリ、エゴマやシソ、ツバキや大豆……、地あぶらを味わうと、その作物独特の個性的風味に圧倒されて「ああ、油って農作物だったんだな」と改めて思う。市販の無味無臭のサラダ油とは全然違う。
油作物は花もきれいだし、手間がそれほどかからないので大規模生産にも向く。今、耕作放棄地を使っ........

地エネ(じえね)

地元のエネルギー、地域のエネルギー、地方分散型エネルギー……、定義はなんでもいいのだが、「地に足のついたエネルギー」ではありたい。
かつて農村は食べものだけでなく、エネルギーも自給していた。今からだって、不可能ではないはずだ。電気を生み出すための水の流れや太陽の光、地熱や風だって豊富に........

ヌカ釜(ぬかがま)

ヌカ釜とは、元祖自動炊飯器。モミガラを燃料にしたかまどのこと(「ヌカ」とはモミガラのこと)。着火剤のスギからモミガラへと火が燃え移ると、一気に強火になる。炊飯の定石ともいえる「はじめチョロチョロなかパッパ」が自然と再現されるのだ。
この方法なら、燃料代もかからなければ、手もかからない。........

ロケットストーブ(ろけっとすとーぶ)

現在、大ブレイク中の燃焼効率が抜群にいい手作り薪ストーブ。ドラム缶燃焼室で薪を燃やし、ベンチ形の煙道を室内にグルリと這わせて暖房するストーブタイプと、一斗缶などで主に煮炊き用に簡易に作るコンロタイプとがある。
少ない薪で効率よし、着火が簡単、一度火がつけばうちわや火吹き竹も不要、白煙は........

BDF・SVO(びーでぃーえふ・えすぶいおー)

軽油の代わりに天ぷら油でトラクタや車を走らせる、転作田でナタネをつくって「油田」に……こんな燃料自給の取り組みが、東日本大震災以降いよいよ盛んになってきた。
BDF(バイオディーゼル燃料)は、主に廃食用油(天ぷら油)に、メチルアルコール(メタノール)と水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)を加........

小水力発電(しょうすいりょくはつでん)

文字どおり小さい規模の水力発電のこと。家のまわりの小川などを利用して水力発電に取り組む農家は『現代農業』に数多く登場してきた。個人で行なう水力発電は出力が数kWレベルの場合が多いが、一般には最大出力一〇〇〇kW以下を「小水力発電」と呼んでいる。一〇〇kW以下を「マイクロ水力発電」、一kW以下を「ピ........

バイオガス(ばいおがす)

酸素がまったくないか、あるいはきわめて少ない条件のもとで有機物が分解したときに出てくるガス(主成分はメタンガス)。この方法で有機物を分解させると、①発生したガスを調理や動力用エンジンに使ったり、発電ができる。また、②肥効が高く、土壌改良・病害虫防除効果のある「バイオガス液肥」を手に入れることができ........

一株増収術(ひとかぶぞうしゅうじゅつ)

「たくさん植えてたくさんとる」のは当たり前でおもしろくない。一株に思いっきり手をかけたら、どこまでとれるか? 農家の腕が鳴る増収術。
「ソラマメの盆栽仕立て」や「トマトの連続摘心栽培」などは、野菜が潜在的に持っている一株の力を、あますことなく引き出すための、疎植・摘心・捻枝・大胆なわき芽か........

寒だめし(かんだめし)

「小寒(寒の入り)から立春までの三〇日間の気候に、その年一年間の気候が凝縮されている」という考え方に基づいた天気予測法。テレビやインターネットで天気予報を気軽に見られる環境でなかった江戸時代の人たちは、この方法で一年の天気を予測し、計画を立てていたという(日本農書全集第一巻「耕作噺」に詳しい)。........

葉っぱビジネス(はっぱびじねす)

「葉っぱビジネス」と聞くと、徳島県上勝町のつまもの事業を思いだすかもしれない。おじいちゃんおばあちゃんたちが「タダの葉っぱ」で稼いで、生きがいを見出す、映画にもなったあの有名な話だ。
ただ、全国の農家に目を向けると、つまものに限らず、じつはみんなすでにいろんな葉っぱを販売している。長野県........

小さい流通(ちいさいりゅうつう)

農業が儲からないのは流通のせいであることが多い。ものの値段が、つくった人の都合とは関係なく、流通の都合で決まったりするからだ。
値段を一番上手につけることができるのは、そのものの価値をよく知っている農家自身だろう。曲がったキュウリを市場に出荷したら「規格外」と買いたたかれて二束三文だが........

集落営農(しゅうらくえいのう)

農家は、先祖から預かって次の世代へ渡す田・畑・山をいかに活用して自分たちの生活を続けるかを考えている。自分がいま預かっている農地や山を守ることが第一。そのために、できる限りの管理を続けている。ところが、米をはじめとした農産物の価格低下と高齢化でそれが難しくなった。そこで、個々の農家に代わって農地を........

集落ビジョン(しゅうらくびじょん)

島根県では「集落の将来のあるべき姿、あるいはこうありたいという姿をイメージしたもの」と定義している。「荒廃地にソバを播いて、廃校をそば屋にしよう。6次産業化だ」「水車をつくって発電を」「子供達が挨拶をする集落に」……何でもいい。自分たちで考えた自分たちの集落の夢を持つと、みんなが元気になる。........

地元出身者(じもとしゅっしんしゃ)

その土地で生まれ育ったが、進学や就職などを機に都会に出ていった人のことをいう。
過疎が進んだ村で地域を活性化するためには外から人を呼ぶのもいいが、まったく縁のない人よりは、まずは地域とつながりのある地元出身者に声をかけてみるほうが、面白い展開に結びつきやすいことを、数々の事例が証明している。 ........

反TPP(はんてぃーぴーぴー)

日本がTPP(環太平洋経済連携協定)に参加すれば、関税撤廃によりアメリカなどからの輸入農産物が急増して農業生産が大幅に落ち込むほか、所得によって受けられる医療に格差が生じたり、食の安全を守る制度が外国企業の都合で変えられるなど、重大な悪影響が予想されている。それにもかかわらず、安倍首相はTPP交渉........

農家力(のうかりょく)

『現代農業』編集部をやっていて一番楽しいのは、「農家のしたたかさ」に出会ったときだ。語弊があるようなら「たくましさ」と言い換えてもいい。世の中が不景気だとか、農村は高齢化だとか限界集落だとか、いくら外から言われても、農家は日々田畑を耕し、作物や自然と向き合いながら工夫を重ね、したたかに勝手に前進する........