●はじめに
グルコシノレート(辛子油配糖体:β-thioglucoside-N-hydroxysulfates)は,双子葉被子植物の16の科に存在し,120を超えるグルコシノレートがこれまでに同定されている。16の科とはいえ,アブラナ科,フウチョウソウ科,パパイア科の3つの科に大部分のグルコシノレートが集中している(Fahey.J.W., A.T.Zalcmann, P.Talalay (2001) The chemical diversity and distribution of glucosinolates and isothiocyanates among plants. Phytochemistry 56 (2001) 5-51 )。
グルコシノレートは植物体の柔組織に含まれ,その分解酵素のミロシナーゼは,篩部にある特殊なミロシン細胞に含まれている。植物体が昆虫などによって食害を受けると組織が破壊されて,グルコシノレートがミロシナーゼと接触して加水分解される。これにともなって,グルコースと硫酸塩に加えて,イソチオシアネート,ニトリル,イソチオシアン酸アリルなどの,刺激的な臭いや辛みを有する殺菌,殺虫作用を持った物質が遊離する。
農学的にはブロッコリー,キャベツ,クレソン,カラシナ,ワサビ等々の可食性のアブラナ科植物が最も注目されている。グルコシノレートは,側鎖によって,脂肪族,芳香族およびインドールグルコシノレートが区別される。側鎖が脂肪族と芳香族のグルコシノレートだけが,加水分解でイソチオシアネートを放出し,側鎖がインドールのものはイソチオシアネートを生じない。
イソチオシアネート(辛子油の辛み成分で,R-N=C=S(Rは側鎖)という構造を持つ物質グループ)は,ダイコン,クレス,カラシ葉,クレソンのようなサラダ野菜の独特の辛みや刺激のフレーバーや,調理したアブラナ科野菜の風味の主たる原因となっている。インドールはアブラナ科のフレーバーに貢献していない。
環境保全型農業レポートでは,これまでにイソチオシアネートが草食性昆虫に対する耐虫性メカニズムの一つになっていること(環境保全型農業レポート「No.229 有機栽培によるグルコシノレートの増加と害虫個体群の変化」),および,グルコシノレートを含有するアブラナ科作物を土壌に鋤き込んで,微生物分解で生じたイソチオシアネートによって土壌伝染性病害虫を防除するバイオくん蒸(環境保全型農業レポート「No.271 バイオくん蒸:グルコシノレートによる土壌伝染性病害虫の防除」)を紹介した。イソチオシアネートの第三話として,イソチオシアネートが人体に対して健康効果を持ち,作物体中のグルコシノレートやそれから生ずるイソチオシアネートの含量が栽培条件によって変動し,基本的には有機栽培の方が慣行栽培よりも含量が高いことを紹介する。
●ナタネ(従来品種)のグルコシノレートの有害作用
環境保全型農業レポート「No.129 国内でのナタネ栽培とバイオディーゼル生産の環境保全的意義は?」に記したように,古いナタネ品種で製造したナタネ油には,2つの有害成分が含まれていた。
一つは,ナタネ油に含まれる,心臓障害を起こす危険のある不飽和脂肪酸(エルシン酸。エルカ酸ともいう)残基である。もう一つは,搾り粕には,ナタネのグルコシノレート(2-hydroxy-3-butenylglucosinolate)とその分解酵素のミロシナーゼが含まれており,ナタネ粕を家畜の飼料に添加すると,グルコシノレートが分解されてコイトリンという分解産物が生ずる。これは,豚や鶏に甲状腺障害を起こす危険がある。このため,食用油の摂取量の多いアメリカは,ナタネ油の食用使用を禁止していた。他方,カナダは,エルシン酸を含まないと同時に,グルコシノレートも削減した品種を育成した。こうした品種はエルシン酸とグルコシノレートの双方がないか低いので,「ダブルロー」の品種と呼ばれている。
カナダが伝統的な交配法で育成したダブルロー品種には,除草剤耐性遺伝子を組換え技術で導入してあり,キャノーラと呼ばれている。それから製造したナタネ油のキャノーラ油が流通するようになって,アメリカも1985年からナタネ油の食用使用を認可した。日本でも最近,ダブルローのナタネ品種を開発している(山守誠 (2008) キラリボシ,ななしきぶ,菜々みどり,タヤサオスパン―最近育成されたナタネ品種.農業技術大系.作物編 第7巻 ナタネ.p.基80-6〜80-8.農文協)
●イソチオシアネートの抗ガン作用
グルコシノレートについては上記の有害作用がまず注目されたが,最近では,グルコシノレートから生ずるイソチオシアネートの抗ガン作用が注目されている。特に世界保健機関(WHO)傘下のIARC(国際ガン研究機関: International Agency for Research on Cancer)が,2004年に,アブラナ科野菜とそれが含有しているイソチオシアネートやインドールのガン予防効果に関する既往の研究をまとめた下記のハンドブックを刊行して,アブラナ科野菜摂取を奨励した。これによってアブラナ科野菜が世界的に注目された。
発ガン物質は,3つの段階(フェーズ)を経てガンを生ずる。すなわち,
フェースⅠ:イニシエーション(化学物質などによって細胞のDNAが障害を受けて変異する過程)
フェースⅡ:プロモーション(イニシエーションされた細胞がプロモーターによって細胞増殖を促進される過程)
フェースⅢ:プログレッション(さらに遺伝子が障害を受けてガン化して発達していく過程)
この3つのフェースが区別されている。グルコシノレートには生物活性がなく,抗ガン作用はない。これと対照的にその分解産物のイソチオシアネートは非常に強力で,発ガン作用の3つのフェースのいずれにも作用する能力をもっている。最も良く研究されているイソチオシアネートは,ブロッコリー由来のスルフォラファンsulforaphaneである(M.Traka and R.Mithen (2009) Glucosinolates, isothiocyanates and human health. Phytochemistry Reviews 8: 269-282 )。なお,グルコシノレートから生じたインドールも抗ガン作用を有している。
これまでのガンの発生とアブラナ科野菜摂取との関係を調べた疫学調査で,アブラナ科野菜の摂取が統計的にガンの発生を有意に低下させた調査事例(有意な低下を生じなかった事例もあるが)が,胃,結腸と直腸,膵臓,肺,乳房,頸部,子宮内膜,前立腺,膀胱,腎臓,甲状腺,非ホジキンリンパ腫で報告されている (IARC, 2004)。
イソチオシアネートのガン予防の可能性については,1970年代後半から動物実験でデータが集積された。その後,疫学的研究からも,キャベツ,ハクサイ,ブロッコリーといったアブラナ科野菜の摂取は,様々な臓器での発がんリスクを軽減しうることが示唆された。さらに,最近の分子疫学研究から,尿中に排泄されたイソチオシアネートの代謝産物量と肺ガンや乳ガンなどのリスク低下との間に有意な相関が報告された。そして,イソチオシアネートを含むアブラナ科野菜の摂取によるガン予防効果が,様々な研究の蓄積により信頼性の極めて高いものになりつつあるとまとめられている(中村宜督 (2004) イソチオシアネートによるがん予防の可能性─細胞増殖の選択的制御とその分子機構.環境変異原研究.26; 253-258 )。
●国や地域によるアブラナ科野菜摂取量の違い
IARC (2004)がこれまでの摂取量に関する調査をまとめたところによると,国や地域でアブラナ科野菜の摂取量には大きな差が存在する。
アブラナ科野菜を最も多く消費しているのは,中国の成人で1日当たり100 g超と報告されている。アジアの他の国の人達も比較的多量のアブラナ科野菜を消費しており,1日当たり40〜80 gである(日本人についてはアブラナ科野菜摂取量として,1日当たり59.8 gと83.5 gの2つの調査結果が記載されている)。北アメリカの平均アブラナ科野菜の摂取量は1日当たり25〜30 g,中央および北ヨーロッパでは30 g超だが,南ヨーロッパの国には15 g未満のものもある(ヨーロッパでは総野菜消費量は南で多く,北ほど少ない傾向があるのと対照的である)。南アフリカや南アメリカの一部の国では,アブラナ科野菜消費量が1日当たり15 gかそれよりも少なく,インドでは1日当たり20 g未満である。そして,野菜の総摂取量に占めるアブラナ科野菜の割合は,約25%の摂取量の多い国から,たった5%の少ない国まで幅があるが,世界全体としては野菜の総摂取量の10〜15%といえる。
●施肥レベルがグルコシノレート含量に及ぼす影響
グルコシノレートは窒素とイオウを含んでおり,両者の施肥がグルコシノレート含量に大きく影響する。
例えば,Schonhof らは(Schonhof,I., D.Blankenburg, S.Müller and A.Krumbein (2007) Sulfur and nitrogen supply influence growth, product appearance, and glucosinolate concentration of broccoli. Journal of Plant Nutrition and Soil Science. 170: 65-72. ),ブロッコリーを6 kgの良く洗浄したケイ砂をベースにした培地でポット栽培し(1個体/ポット:施肥条件ごとに10個体を栽培,3反復),他のミネラル施用量を同じとして,イオウ (S) をポット当たり0.2 g(花蕾生産の観点で不足),0.6 g(適量)と1.0 g(過剰),窒素 (N) を1 g(不足)と4 g(適量)を施用して栽培した。
花蕾のグルコシノレートの総濃度は,窒素供給量が不十分だと,イオウ供給レベルに関係なく高く(0.33〜0.39 g/個体),窒素供給量が至適で,イオウ供給量が不十分だと0.05 g/個体に激減し,適量だと0.24 g/個体に低下し,過剰でだと0.33 g/個体に回復したことを観察した。
花蕾のグルコシノレートを脂肪族グルコシノレート,芳香族グルコシノレートとインドールグルコシノレートに分けて,その代表的なグルコシノレートの濃度を調べると,窒素施用量を不足から適量に増やすと,脂肪族グルコシノレートが最も大きく減少し,インドールグルコシノレートはイオウが不足でない限り,濃度は同じか多少増加した。このため,グルコシノレートの総濃度の変化は脂肪族グルコシノレートの変化を最も大きく反映し,窒素施用量が多いと,全グルコシノレートに占める脂肪族グルコシノレートの割合が低下し,インドールグルコシノレートの割合が増加した。なお,芳香族グルコシノレートは量的にごくわずかで,窒素やイオウの施肥量に関係なく,ほぼ一定であった。
ルッコラでの同様な施肥試験の結果でも,過剰な窒素施用下(1.04 g N/個体)で,乾物生産量は一定であったが,硝酸性窒素が有意に増加し,全グルコシノレート量が有意に減少し,なかでも脂肪族グルコシノレートが有意に減少したことが観察されている (Omirou, M., C.Papastefanou, D.Katsarou, I.Papastylianou, H.C. Passam, C.Ehaliotis and K.K.Papadopoulou (2012) Relationships between nitrogen, dry matter accumulation and glucosinolates in Eruca sativa Mills. The applicability of the critical NO3-N levels approach. Plant Soil 354:347-358. )。
●有機栽培がアブラナ科野菜のグルコシノレート含量に及ぼす影響
有機栽培がアメリカ野菜のグルコシノレート含量に及ぼす影響は,まだ断片的にしか研究されていない。アブラナ科野菜の種類によって影響が異なるだけでなく,同じ種類でも品種や施肥条件の違いなどによって,グルコシノレート含量が異なるが,まだあまり系統的に研究されていない。これまでに行なわれた研究のいくつかの概要を下記に紹介する。
A.慣行と有機栽培したアブラナ科野菜の全グルコシノレート濃度の違い(1)
ブラジルのサンパウロ州の圃場で,アブラナ科野菜(ブロッコリー,クレソン,コラードグリーン(キャベツの原種に近い結球しないキャベツの若葉),ルッコラ)を栽培した。施肥は,慣行栽培で無機肥料(120 g/m2)を2回施用し,有機栽培で有機肥料(トウゴマ油粕8 kg /m2)を定植時に施用した。灌漑は1日に2回実施した。
全グルコシノレート含量は,ブロッコリーの花蕾では,慣行(0.35±0.2μmol/g 新鮮重)よりも有機(0.75±0.05μmol/g 新鮮重)で2倍も高かった。コラードグリーンでは,慣行(0.64±0.24μmol/g)よりも有機(5.02±1.55μmol/g)で8倍も高く,ルッコラでは慣行(0.26±0.02μmol/g)よりも有機 (0.39±0.014μmol/g)で1.5倍高かった。しかし,クレソンでは,慣行(1.13±0.11μmol/g)のほうが有機(0.30±0.23μmol/g)よりも高かった。
筆者の感想を述べれば,施肥水準が慣行と有機でそれぞれ1水準だけであり,窒素施肥水準を変えてその影響を解析していないので,この結果が慣行と有機に一般的なのかには疑問がある。
B.慣行と有機栽培したアブラナ科野菜の全グルコシノレート濃度の違い(2)
ルーマニアの圃場で,アブラナ科野菜(ブロッコリー,カリフラワー,コールラビ(カブカンラン),白キャベツ,赤キャベツ)を慣行と有機で栽培した(筆者注:施肥条件などは当該地域のやり方にしたがったとの記載のみ)。
全グルコシノレート濃度(単位はμmol/g乾物)が,慣行に比べて有機で増加したのは,カリフラワー(慣行3.55,有機4.84),コールラビ(慣行2.51,有機4.89),赤キャベツ(慣行2.79,有機6.28)であったのに対して,慣行に比べて有機で減少したのは,ブロッコリー(慣行14.24,有機9.19),白キャベツ(慣行3.13,有機1.05)であった。
上述のブラジルでの結果と比べると,慣行と有機の全グルコシノレート濃度の関係がブロッコリーで逆転した。筆者の感想を述べれば,両研究とも1つだけの施肥水準や品種でしか行なっておらず,結果の違いが何に起因するかは判然としない。
C.カリフラワーの慣行と有機でのグルコシノレート含量の品種による違い
緑色のイタリア・カリフラワーの2つの品種を,圃場において慣行と有機で栽培して,グルコシノレートなどの二次代謝産物含量を比較した。成熟期の早い品種(Emeraude)では,抗ガン作用の点で特に注目されている脂肪族グルコシノレートのシグニリンsinigrin とグルコラファニンglucoraphaninやインドールグルコシノレートのグルコブラシシン glucobrassicinを含めたグルコシノレート含量が,慣行栽培で高く,有機栽培で低下した。これに対して成熟期の遅い品種(Magnifico)では,有機栽培でもグルコシノレート含量が低下しなかった。したがって,慣行と有機のいずれで栽培するかによって,適切な品種を選択することが大切なことが指摘された。
D.市販の慣行と有機のブロッコリーと赤キャベツのグルコシノレート含量
ドイツで販売されている慣行と有機栽培のブロッコリーと赤キャベツを,2001年12月から2002年11月の1年間,毎月1回サンプリング(サンプリングは1日で完了させた)。慣行は3つのスーパーマーケット,有機は3つの有機農産物販売店で購入して収集し,ブロッコリーの花蕾と赤キャベツのグルコシノレート含量を測定した。両野菜は様々なところで生産されたもので,年間を通してみると,ブロッコリーは収穫から1週間以内のもので,慣行ではドイツ産32%,スペイン産56%,イタリア産12%,有機ではドイツ産41%,イタリア産27%,スペイン産27%であった。また,赤キャベツは,寒冷期には数か月貯蔵されたものが販売され,慣行では全てドイツ産,有機では大部分はドイツ産だが,一部がフランス,イタリア,オランダ産であった。
ブロッコリーの主要グルコシノレートは,脂肪族グルコシノレートのグルコラファニンGlucoraphanin(4-MethylsulWnylbutyl-glucosinolate)と,インドールグルコシノレートのグルコブラシシンGlucobrassicin(3-Indolymethyl-glucosinolate)とネオグルコブラシシンNeo-glucobrassicin(1-Methoxy-3-indolylmethyl-glucosinolate)であった。
ブロッコリーの花蕾の脂肪族グルコシノレートのグルコラファニン濃度は,年間をとおして,慣行で平均4.3(1.6〜9.1 )mmol/kg,有機で平均5.4(2.1〜19.7)mmol/kgで,多少有機のほうが高いように見えたが,慣行と有機で統計的に有意差はなかった。これに対して,インドールグルコシノレートのグルコブラシシン濃度は,年間をとおして,慣行で平均3.7 mmol/kg,有機で平均5.2 mmol/kgであった。また,ネオグルコブラシシン濃度は,年間をとおして,慣行で平均1.7 mmol/kg,有機で平均3.6 mmol/kgであった。この2つのインドールグルコシノレート濃度は,有機のほうが慣行よりも有意に高かった。
赤キャベツのグルコラファニン濃度は,ブロッコリーと同様に,慣行と有機で差がなく,グルコブラシシン濃度は,有機で慣行よりも有意に高かった。
このように抗ガン作用で注目されている抗ガン作用の高いイソチオシアネートを生ずるグルコラファニン濃度が有機と慣行で差がなく,インドールグルコシノレート濃度が有機で高かった。
なお,筆者の感想を述べれば,原著者は記していないが,この結果は,「●施肥レベルがグルコシノレート含量に及ぼす影響」に記したように,窒素施肥レベルが高いと,脂肪族グルコシノレート濃度が低下し,インドールグルコシノレート濃度が同じか若干増加するとの結果と符合する。したがって,筆者は,上記の調査で用いた有機のブロッコリーや赤キャベツに供給された可給態窒素レベルは,慣行に比べてむしろ若干高かった可能性も考えられると思う。いずれにせよ有機栽培したアブラナ科野菜のグルコシノレートやイソチオシアネートを分析した研究は,栄養化学の研究者のものが多く,有機栽培の条件をあまり詳しく記述していないし,施肥レベルを複数設けていない。したがって,上述した研究で見られた有機の結果が一般化できるとは思えない。有機質肥料とはいえ,過剰施用すれば,グルコシノレートやイソチオシアネートが減少することは容易に推定される。
●おわりに
抗ガン作用の点で注目されている,イソチオシアネートのスルフォラファンの含量の高いブロッコリーの育種が研究されている (Sarikamis,G., J.Marquez, R.Maccormack, R.N.Bennett, J.Roberts and R.Mithen (2006) High glucosinolate broccoli: a delivery system for sulforaphane. Molecular Breeding. 18: 219-228. )。
今日,健康によい食品への関心が高いが,そうした食品を多く食べれば健康になると考えるのは安易すぎる。そうした食品を摂取する前に,総カロリー摂取量の制限,バランスのとれた多様な食品素材の摂取と,適切な運動量が少なくとも必要である。
上記で紹介したIARCの「アブラナ科野菜,イソチオシアネート,インドールに関するハンドブック」p.265.では,その10章で勧告を行なっている。アブラナ科野菜の摂取によって人体で急性影響が生じた証拠はないが,アブラナ科野菜の種子,根や葉に甲状腺腫誘発化合物が存在し,世界の多くの地域での風土病性甲状腺腫に対する貢献している可能性が排除されていない。こうしたことから,公衆衛生に関する勧告として,次を記している。
『政府および非政府組織は,ガンリスクの削減と健康増進のために,多様な果実や野菜を含む食事の一部として,アブラナ科野菜の摂取を助長し支援することを,勧告する。そして,さらに次を勧告する。
- 公教育や農業政策で,他の野菜に対してアブラナ科野菜を優先して推進してはならない。
- 毒性や不確かな便益に関する懸念から,アブラナ科野菜または合成の類似化合物に由来する高レベルの化合物を含む栄養サプリメントを消費することは勧められない。そうした化合物の濃度を大幅に高めるように改良したアブラナ科野菜を消費する際には,同様な注意を払うべきである。』