No.238 EUがリンの持続可能な利用についての意見を公募

●EUのリンの持続可能な利用についての意見公募

環境保全型農業レポートでは,これまでにEUなどにおける農業におけるリンの施用量の規制についての動きを紹介してきた(「No.232 OECDが2010年までの農業環境状態を公表」,「No.208 デンマーク農業における窒素・リンの余剰量の削減」,「No.203 OECD加盟国における水質汚染〜農業による水質汚染に対処する政策」,「No.202 ヨーロッパの河川における水質汚染の動向」,「No.144 欧米における農地へのリン投入規制の事例」)。

EUの多くの地表水(河川,沿岸海水など)でリン濃度が高い最大の原因は,農業からの流出であるケースが多い。リンは農業で肥料や家畜飼料添加物として広く利用されており,作物や家畜に利用されなかった部分が,農地から水系に流入して水質汚染を起こしているケースが多い。また,リン鉱石に含まれていた重金属による土壌汚染も併発されている。

欧州委員会は,こうした環境汚染を減らして持続可能な農業生産を目指して,リンの効率的利用と循環使用について法的規制を行なうことを考え,市民や利害関係者の意見を公募することにした。公募期間は2013年7月8日〜12月1日。リンの持続可能な利用に関する意見公募を行なう旨の下記連絡文書の概要を紹介する。

European Commission: Communication from the Commission to the European Parliament, the Council, the European Economic and Social Committee and the Committee of the Regions

Consultative Communication on the Sustainable Use of Phosphorus. Brussels, 8.7.2013.COM(2013) 517 final 19p.

●リンの持続可能な利用がなぜ必要か

連絡文書は冒頭で,リンの持続可能な利用が必要な理由として下記を指摘している。

(1) リンは生命体の必須構成元素であり,他の元素で代替できない。

(2) 飼料や肥料として利用したリンの利用効率が低く,水や土壌の汚染が生じている。

(3) リンの利用効率向上やリサイクリングによって,リンの持続可能な使用に向けて大きな歩みを踏み出すことができる。

(4) リンはEUの安全保障に強くかかわっている。

EU内のリン含有鉱石埋蔵量はごくわずかにすぎない。

2008年にリン鉱石価格が1年強で700%も上昇し,肥料価格の高騰が生じた。

採掘したリン量の約90%は,不可欠な飼料と肥料に利用されており,切り詰める余地がほとんどない。

(5) 作物生産地帯でリン肥料が使用され,港湾など特定地域に集中している集約的家畜生産地帯で飼料にリンが添加され,大都市で多量の下水汚泥や食品廃棄物にリンが排出され,地域間での循環利用がなされていない。

●リンのロスの実態とロス削減やリンのリサイクリングに対する施策の取組状況

(1) リンは,主に土壌侵食と溶脱,家畜ふん尿,他の有機性廃棄物や生活排水によって環境に放出されており,例えば,フランスの例では,使用されたリン総量の約20%が生活排水,20%が土壌侵食と溶脱,10%が食品廃棄物や他の有機性廃棄物の形でロスされ,その割合は合計50%にのぼる。

(2) 一部の加盟国は,水質汚染防止を目的にして,リンの利用効率向上や回収に焦点を当てた施策を開始している。

スウェーデンは,2015年までに排水中に存在するリン化合物の少なくとも60%を回収し,この量の少なくとも半分を耕地に還元することを目標にしている。

オランダは,2011年に製造業企業,NGO(農業者のものを含む),研究所,政府機関など20の組織が共同して,排出されたリンを原料化し,環境にやさしい形でリンを循環利用・輸出する持続可能なマーケットを創出する取組を行なう「リンの価値の鎖協定」(Phosphate Value Chain Agreement)を結成した。

ドイツは,目下,リン廃棄物量の削減を図る法案の作業中である。

EUは2013年3月に「ヨーロッパ持続可能なリン会議」を開催し,ヨーロッパにおけるリサイクルしたリンのマーケットを創出し,リンの持続可能な利用を達成するために「ヨーロッパリンプラットフォーム」を設立した。

(3) EUでは,現在使用されているリンを,リサイクルしたリンで完全に置き換えることは不可能だし,予見できる将来にも不可能である。しかし,リンのリサイクリングと有機リンの利用を高めることが,リン鉱石の採掘量を増やさず,土壌汚染や水質汚染問題を緩和させる。このことは,リン資源の物理的制約がますます厳しくなったときには,一層必要になる。

●リンの需要と供給の現状と今後の見通し

(1) 歴史的にリン肥料は,まず家畜ふん尿で,その後,骨粉やグアノが加わり,さらにリン鉱石から製造した無機リン肥料が加わった。現在、無機リン肥料がリン肥料の主体になっているが,EUでは毎年,肥料として210万トンのリンが家畜ふん尿で,130万トンのリンが化学肥料で施用されている。

(2) EUではフィンランドでリン鉱石が少量採掘されているが,2011年におけるEUのリン鉱石の輸入依存率は約92%であった。

(3) 世界のリン鉱石埋蔵量の2/3はモロッコ/西サハラ地域,中国,アメリカに集中しており,世界のリン鉱石採掘稼働量は最大限に近い状態に達している。こうしたなかで,2008年に中国はリン鉱石に110-120%の輸出税を課した。その後数段階を経て35%に削減したが,この輸出税が現在も適用されている。中国での今後の国内需要の増加を考えると,今後,中国からはかなりの量のリン鉱石が輸出に回される可能性は少ないと考えられる。また,現在の技術と環境条件の下では,アメリカの鉱脈は50年間の採掘が限度で,それを超える寿命は持っていないだろうと予想されている。このため,リン鉱石資源が近い将来に枯渇し,年間のリン鉱石生産量が既にピークに達しているか,間もなく低下し始めると論議された。

(4) 最近,モロッコ/西サハラ地域で莫大な埋蔵量が確認され,今後,数世代にわたって十分な量を供給できることが確認された。このため,リン資源の近い将来における枯渇をめぐる論議は意味をなくした。ただし,新たな鉱脈の採掘には莫大な投資が必要であり,リン鉱石価格は今後とも上昇し続けると予測されている(環境保全型農業レポート「No.234 リン鉱石埋蔵量の推定値が大幅に増加」参照)。

(5) MacDonaldaら(2011)は2000年時点で,世界のリン肥料使用量が年間1,420万Pトン(3,254万P2O5トン),家畜ふん尿によるリンの施用量が960万Pトン(2,200万P2O5トン)で,収穫作物による収奪量が1,230万トン(2,818万P2O5トン)で,かなりの量が土壌に残っており,13 kg P/ha(29.8 P2O5 kg/haを超える過剰地帯がヨーロッパ,東アジア,南アメリカに存在する一方,リン不足地帯が世界の農地面積の約30%を占めていると推定した(G. K. MacDonalda, E.M. Bennetta, P.A. Potterc, and N. Ramankuttyd (2011) Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 108(7): 3086-3091)。

(6) FAO(2008)の世界の肥料に対する需要予測は,世界の肥料使用量は拡大し続けると予測しており,リン酸肥料についてはP2O5で2015年の年間4,380万トンが2030年には5,290万トンに増えると予測している。世界人口は2050年までに90億人を超えると予測されている。これが食習慣の変化と結びついて,現在の非持続可能なトレンドが続くとして,FAOは世界の食料需要量が70%増加すると予測している。そして,2050年にはリン鉱石から製造するリン酸肥料の需要が40%増加するとともに,飼料添加用リンの需要も増加すると予測している。

●リン鉱石採掘とリン酸肥料施用にともなう環境汚染

連絡文書はこの問題について,下記を指摘している。

(1) リン鉱石は一般に,有毒元素のカドミウムをある程度含有している。フィンランド,ロシア,南アフリカで採掘されるリン鉱石は火成岩質でカドミウム含量が非常に低い(10 mg Cd/kg P2O5未満のことも多い)。対照的に北・西アフリカや中東で採掘されるものは堆積性で,カドミウムレベルがはるかに高く,最悪のものは60 mg Cd/kg P2O5超である。リン肥料施用による土壌のカドミウム汚染を防止する必要性から,きれいなリン鉱石資源が枯渇してしまうと,経済的に使えるカドミウム除去技術が開発されない限り,(a)土壌保護基準を満たす肥料を製造するコストが大幅に上昇するか,(b)EUの土壌保護基準値を高くして,カドミウム含量の高いリン鉱石を使うかになろう。EUは現在きれいな資源から作ったリン酸肥料を使用しているが,現在のように非効率的に使用していると,この2者を選択する時期の到来が早まることになる。

(2) ある研究は,リン酸1トンを生産するのに,9.5トンのリン鉱石が必要で,廃棄物が21.8トンと選鉱くず6.5トンが生産されることを報告している。リン鉱石に硫酸を加えてリン酸を溶かし,生じた石膏(硫酸カルシウム)を除去する。この石膏はリン酸石膏と呼ばれているが,リン酸を取り出す際に作られる石膏の意味で,リン酸を含有していない。リン酸石膏のなかには放射能レベルの高いものもあり,放射能規制のために多量に堆積貯蔵されているケースもある。また,リン鉱石を処理した強い酸性の水が漏出して,水生生態系の汚染を引き起こすリスクも存在する。

(3) 主に集約的な農業からのリンの排出が湖沼や河川の富栄養化の大きな原因であるが,この他に人間の排泄物や他の生活排水,工業からの汚染も大きく寄与している。

(4) 農業からのリンの表流水への放出量は,ヨーロッパ全体で年間ha当たり0.1 kg Pを超え,ホットスポットでは1.0 kg P/ha/年を超えている。その結果,EUのいくつかの海洋や沿岸海水域で,リン濃度が高いまたは非常に高くなっている。河川流域の82%で農業が水系にかなりのリン圧力を掛けていることが示されている。

(5) 表流水に排出されたリンや他の養分よって富栄養化が起き,植物や藻類の生育が促進され,水生生物の多様性や,人間の使用する水の持続可能性に悪影響が生じている。また,異常繁殖した藻類のなかには魚や他の海生動物を死に至らせる種も存在する。動物遺体が分解されると,有毒な硫化水素が発生する。遺体が除去されたとしても,リンは水底堆積物の一部となって,リンの溶出と堆積のプロセスをくり返し,修復に長い年数を要することになる。

(6) 2002年に欧州委員会の「毒性,生態毒性および環境に関する科学委員会」は,カドミウム(Cd)を60 mg/kg P2O5以上を含むリン酸肥料は,EUの大方の土壌にCd蓄積をもたらし,Cdを20 mg/kg P2O5以下のリン酸肥料は,他の資材によるCdの投入がなければ,100年以上施用しても土壌蓄積は問題になるレベルに達しないと推定した(Scientific Committee on Toxicity, Ecotoxicity and the Environment (CSTEE) (2002) Opinion on ‘Member State assessments of the risk to health and the environment from cadmium in fertilizers’. 9p. )。

(7) EUのCdに関する健康リスクアセスメントによって,Cdの大きな健康リスクは食品摂取や喫煙による腎臓被害であり,リスク軽減戦略として,食品原料,タバコのブレンド,リン酸肥料のCd含量を減らす方策が勧告されている(European Union Risk Assessment Report Cadmium Oxide and Cadmium Metal (2007) 1395p. )。この勧告の妥当性は2010年に食品添加物に関するFAO/WHOのジョイント専門家委員会(JECFA)によっても確認されている。これらを受けて,食品や飼料中の最大残留レベルに基づいてリスク管理がなされている。

●リンの効率的使用の可能性と障害要因

(1) 「2050年における世界の資源効率に関するEUの展望」(Maurits van den Berg et. al. (2011) EU Resource Efficiency Perspectives in a Global Context. 110p. )は,その可能性について,次のように報告している。

世界の農業で使用されている,リン鉱石から製造したリン肥料の使用量は現在年間17,000万Pトン(39,000万P2O5トン)だが,現状のまま伸び続ければ2050年には23,000万Pトン(52,700万P2O5)に増加すると予測される。人間や家畜から回収したリンをリサイクルすれば,2050年におけるリン肥料の必要量を22%削減でき,EU27か国では32%削減できと結論している。

(2) EUは,農業におけるリンの利用効率向上とロスの削減に貢献する施策として,(1)「硝酸指令」に基づく優良規範や行動プログラム,(2)農村開発政策に基づく農業環境事業,(3)共通農業政策におけるクロス・コンプライアンスによって,農地の農業的環境的に良好な状態での維持がなされている。また,法的拘束力を持ってはいないが,「土壌保護のための問題別戦略」も,土壌の適正な管理への意識向上に貢献している。

(3) 農業におけるリンの作物による利用効率向上に貢献する技術として,土壌診断や家畜ふん尿の分析に基づいた施肥の適正化,家畜ふん尿の土壌注入や化学肥料の土壌混和などがある。また,根系発達や微生物利用による肥料の利用効率向上技術などは今後期待される。また,中小家畜の飼料への無機リン酸の添加の代わりにフィターゼを添加する技術は一層普及されることが期待されている。これらの技術の広範囲な採択にとって主な障害になっているのは,コスト低下と実用性の向上である。フィターゼの使用は広範囲に受け入れられているが,他の技術では,標準技術にするには,圃場試験を含めたしっかりした研究が必要となっている。

(4) 家畜ふん尿管理の向上は,これまで「硝酸指令」によってなされてきた。圃場が既に養分飽和状態にある家畜生産地帯では,体積をスラリーの約30%に減らして外部へ輸送して販売できる堆肥化への関心が高まっている。堆肥の販売では,コスト(輸送,エネルギー),受取農場の確保などの多数の障害が残されている。

(5) EUでは住民1人当たり毎年平均180 kgの食品を廃棄しており,EUは2020年までに食品廃棄物量を半減するというターゲットを設定した。現在,多量の食品や他の有機廃棄物が焼却されているが,灰の中のリンは再利用されていない。かなりの量のリンが埋立地に失われている。「埋立指令」は,加盟国に2016年までに有機性都市廃棄物の埋立量を,1995年の総量の35%に段階的に減らし,バイオガス生産,土壌改良材,農業用養分にリサイクリング量を大幅に増やすことを規定している。しかし,リンなどの資源を必ずしも最高の価値を持った利用に振り向けているわけではない。

(6) 骨粉や肉骨粉など,以前からリン資材としてリサイクル利用されてきているものもあるが,牛海綿状脳症(BSE)で危険視された。安全性が確認できる利用については,BSEの伝搬防止を図る法律を改正して利用可能にすることができる。

(7) 「都市下廃水処理指令」は,処理プラントが流入下水のリンを最低75%削減することを規定しているが,リンを利用可能な形で抽出することを要求していない。このため,鉄を使ってリンを凝集することが認められているが,これによって過剰な鉄のなかにリンが強く結合した化合物が作られ,リンは商業的に容易には回収できず,植物にも十分利用可能なものではなくなってしまう。EUでは年間約30万トンのリン(P)回収が可能だが,現在はその約25%が再利用されており,一般的な方法は下水汚泥の圃場への直接施用である。

(8) 現在の「下水汚泥指令」では,特にカドミウムなどの汚染物質の最大許容値が高すぎると考えられており,16の加盟国は指令に規定よりも厳しい基準を採用している。この基準と,下水汚泥の施用基準や製品品質基準の調和を図ることが必要になっている。目下,下水汚泥堆肥の基準を目下策定中である。

(9) 有機廃棄物からリンを抽出して利用することによって,カドミウム,銅や亜鉛による土壌汚染を防止できる。家畜ふん尿,下水汚泥などの有機廃棄物からリンを回収する技術はいろいろ開発されているが,再生資源の農業者による利用を助長する戦略が存在していない。回収リン資材の価格は一般に無機リン酸肥料の価格よりも高い。リサイクルリンのマーケットや使用量を増やし,既に利用できる技術の採用を図る際の障害を確認することが必要である。

●農業の生産性と持続可能性に関するヨーロッパ革新的パートナーシップ

(1) 欧州委員会の農業・農村開発総局は,2020年の共通農業政策(CA)の改革に向けて,必要な研究や技術革新を推進する中核機関として,農業の生産性と持続可能性に関するヨーロッパ革新的パートナーシップ(European Innovation Partnership: EIP-AGRI)を2012年に設置した(European Commission (2012) Communication from the Commission to the European Parliament and the Council on the European Innovation Partnership ‘Agricultural Productivity and Sustainability’ COM(2012) 79 final )。そして,その実行組織の1つとして,2013年4月にヨーロッパ革新的パートナーシップ・サービスポイント(European Innovation Partnership Service Point: EIP-AGRIサービスポイント)を設置した。このEIP-AGRIサービスポイントは,農業者,普及指導者,農業ビジネス関係者,市民,研究者などが参加して,農業の革新にかかわる政策手段,研究,資金配分,実践的プロジェクトの成果情などの情報を収集・交換し,EU,国および地域レベルで,セミナー,会議,出版,ウェブサイト,ソーシャルメディアを通して,参加者だけなく,EU全体に広報する。

(2) EIP-AGRIは,(1)有機農業(耕種農業の最適化),(2)蛋白質作物,(3)家畜飼養(養豚での抗生物質使用量の削減),(4)遺伝資源(協力モデル),(5)土壌有機物(地中海地域),(6)総合的有害生物管理(IPM)(アブラナ科作物)について,問題を整理して課題を摘出するフォーカスグループを編成するために,専門家候補の公募を行なっている。

●欧州委員会の設問

連絡文書は,EUにおける今後のリンの政策を構築するために,下記の設問に対する意見を2013年12月1日までに公募した。提出された意見を参考にして,今後の持続可能なリンの戦略に関する論議を行なうこととしている。

Q1 EUにとってリン鉱石供給の安全保障は重要問題と考えるか? そうだとすると,この問題に取り組むために生産国とどのような連携をなすべきか?

Q2 ここに示した供給と需要の像は正確と思うか? 持続可能な採掘や新しい採掘技術の使用などによって,供給リスクの緩和を支援するために,EUは何をなすことができるか?

Q3 リン鉱石や肥料の世界的な供給と需要に関する情報は,十分に利用でき,透明で信頼できると考えられるか? そうでないとすると,EUや世界レベルで,より透明性が高くて信頼できる情報を得るために,何をなすのが最良か?

Q4 EUにおけるリン使用にともなう土壌汚染リスクに,どのように対処すべきか?

Q5 どの技術がリンの持続可能な使用を最も良く向上させる全体的な可能性を持っているか? コストと利益はどうか?

Q6 リンの持続可能な使用に向けて,EUは今後どんな研究や技術革新を推進すべきか?

Q7 農業におけるリンの使用やリサイクルされたリンの効率についての情報を十分利用できる状態になっていると考えるか? そうでないとしたら,どのような統計情報が必要と考えるか?

Q8 「農業の生産性と持続可能性に関するヨーロッパ革新的パートナーシップ」は,どうすればリンの持続可能な使用を前進させるのに役立つか?

Q9 過剰供給地帯における家畜ふん尿の管理向上と加工増加,ならびに,当該地帯外部における加工家畜ふん尿の使用増加を助長するために,何を行なうことができるか?

Q10 食品廃棄物や他の生分解性廃棄物からのリンの回収を向上させるために,何ができるか?

Q11 廃水処理からのリンの何らかの形での回収を義務化ないし助長すべきか? 下水汚泥や生分解性有機廃棄物を耕種農業にもっと利用され受け入れられるようにするには,何をすべきか?

●終わりに

日本には,強酸性で,リン酸固定能力が高く,有毒なアルミニウムイオンが多い土壌が多い。そのために,多量のリン酸資材を施用する土壌改良がなされて,今日の高い単収を実現できている。しかし一方で,リン酸資材の多量施用をくり返し実施してきたために,異常なまでにリン酸が蓄積した土壌が多くなっている。こうしたリン酸過多の土壌を放置しておくことは,表流水や地下水の水質をますます悪化させてしまう。EUの動きも参考にして,日本でも持続可能なリンの施用に向けた動きを,技術の問題だけにせず,法的および行政的措置を考える時期に来ていると思う。