環境保全型農業レポート「No.272 アメリカが有機水耕栽培に関する調査特別委員会を設置」に紹介したように,アメリカでは有機農業規則で水耕栽培が排除されておらず,同規則で認められた資材を使用した水耕栽培を,現在でも有機として認証している。アメリカ農務省は,それをきちんと条文化するための委員会を設置し,検討を開始している。
因みに有機の水耕栽培では,有機農業規則で禁止されていない有機性の養分源を溶かした水や,「堆肥茶」compost tea(腐熟した堆肥に多量の水を加えて,数日間ときどき撹拌しつつ放置した後,チーズ袋などの目の粗い布で濾した液)で水耕栽培する。
これに対してIFOAM(国際有機農業運動連盟)は,2015年10月23日にこうした動きに反対する意見書をアメリカ農務省に提出した(IFOAM (2015) Weighing in on soil-based crop production)。
かつて,アメリカの全米有機農業プログラム(NOP)で設置の承認されているNOSB(全米有機農業基準評議会)は,NOP事務局に対して,「コンテナおよび閉鎖施設内における陸生植物の生産基準」(Production Standards for Terrestrial Plants in Containers and Enclosures)を勧告した。このなかで,陸生植物を有機栽培するには土壌でなければならず,水耕栽培を有機と認めることはできないことを勧告した。IFOAMは,このNOSBの勧告をベースにして論議を行なうべきであると,意見書を提出したのである。