「持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律」(持続農業法,1999年7月)によって,都道府県が定めた持続農業導入指針に準拠した営農を行うと認定された農業者(エコファーマー)は,機械・装置導入のための有利な融資や税制上の優遇措置を受けることができる。
持続農業導入指針の中核は,次の3つのカテゴリーに分けられた「持続性の高い農業生産方式」であり,持続農業法の施行規則で指定される(括弧内は現在指定されている技術)。
(1)土づくり技術:堆肥,その他の有機質資材の施用に関する技術であって,土壌の性質を改善する効果が高いもの(堆肥等有機質資材施用技術,緑肥作物利用技術)
(2)化学合成肥料低減技術:肥料の施用に関する技術であって,化学的に合成された肥料の施用を減少させる効果が高いもの(局所施用技術,肥効調節型肥料施用技術,有機質肥料施用技術)
(3)化学合成農薬低減技術:有害動植物の防除に関する技術であって,化学的に合成された農薬の使用を減少させる効果が高いもの(温湯種子消毒技術,機械除草技術,除草用動物利用技術,生物農薬利用技術,対抗植物利用技術,抵抗性品種栽培・台木利用技術,熱利用土壌消毒技術,光利用技術,被覆栽培技術,フェロモン剤利用技術,マルチ栽培技術)
指定されたものの中から技術を選択して,3つのカテゴリーの技術を1つ以上実施することが求められている。
農林水産省生産局の環境保全型農業対策室は,2006年12月26日付けで,持続農業法の施行規則で指定技術を追加する案をパブリックコメントにかけ,2007年1月25日までに意見を求めている。
追加する指定技術は2つある。
(1) 有機質肥料施用技術に堆肥などの特殊肥料を加える。
(2) 化学合成農薬低減技術に,「土壌還元消毒技術」(土壌中の酸素の濃度を低下させることにより,土壌中の有害動植物を駆除する技術)を追加する。
前者は,これまで堆肥は土壌改良材としてしか認めていなかったのを,有機質肥料としても認めるもので,実態に合わせたものであり,後者も他の化学合成土壌消毒剤代替技術と同様に位置づけるものであり,提案自体に恐らく異論はないであろう。
しかし,改めて指定された技術をみると,オーソドックスな輪作(3〜5年あるいはそれ以上)が化学合成農薬低減技術に指定されていないのは奇異に思える。土壌伝染性病害虫の集積防止の基本技術でありながら,実際には特定品目の連作が多いために,実施されているケースが少ない。指定されている化学合成農薬低減技術は,連作か短期輪作を前提したものばかりに思える。連作によるゆがんだ野菜生産から他品目の輪作に切り替えるのは,持続的な生産方式ではないのだろうか。
★ 「輪作」に関連する「農業技術大系」の記事を検索 → 検索結果