イギリスは,国の持続可能な開発指標の一つに,野鳥個体群の動向を加えており,その2007年の動向を2008年10月31日に公表した(DEFRA Statistical Release: Wild bird populations 2007 – Sustainable Development Strategy and Public Service Agreement Indicators と報告の詳細:DEFRA (2008) Wild Bird Populations 2007 ~ Sustainable Development Strategy and Public Service Agreement Indictors )。
●野鳥は野生動物の優れた指標
野鳥は,様々な生息地を占有していて,かつ,食物連鎖のトップの位置をしめている。イギリスでは生息数などのデータが比較的古くからそろっているので,野生生物の状態を示す優れた指標となっている。日本も見習いたいものである。
●農地を繁殖地とする野鳥が減少し続けている
△ 指標対象の全鳥類(115種)の個体数は,その種類構成を問わなければ,1970年から2007年の間にほぼ安定していた(図参照)。
△ 農地を繁殖地とする野鳥(農地系鳥類)(19種)は,全体として1970年代中頃から1990年代中頃に激しく減少し, 2007年には1970年の52%に減少した(図参照)。
△ 農地系鳥類の中では,スズメ,ハタホオジロ,コキジバト,ヨーロッパヤマウズラなどが激しく減少したが,ニシコクマルガラス,モリバト,ゴシキヒワ,ヒメモリバトなどは逆に増加した。
△ こうした農地系鳥類の減少は,農業方法の変更,なかでも,複合経営の減少,穀物の秋播きへの移行による,多くの野鳥が活発に活動する夏に穀物がないなどの生息環境の変化,農薬使用の増加,草地管理の集約化,圃場周縁地や生垣の減少に起因していると考えられるが,モリバトの増加はナタネの栽培面積の増加によると考えられる。
△ 森林を繁殖地とする野鳥(森林系鳥類)(38種)は,1980年代後半から1990年代始めに激しく減少したが,最近ではおおむね安定し,2007年には1970年の78%に減少した(図参照)。
△ 水辺や湿地を繁殖地にする野鳥(26種)は,1975年の94%であった(図なし)。
△ 海辺を繁殖地とする野鳥(海洋系鳥類)(19種)は,1970年から増加し,1980年代後半のピークの後,若干減少しているが,2007年には1970年よりも31%増であった(図参照)。
△ イギリスで越冬する水鳥(46種)は,1975-76年に比べて増加して,1996-97年にピークに達して後,若干減少しているが,2007年には1975-76年の57%増であった(図なし)。