No.010-2 世界の有機農業の現状

ドイツのSOEL(「生態学及び農業基金」)が毎年世界の有機農業の現状に関する統計を整理して,IFOAM(国際有機農業運動連盟)から刊行している。2005年2月に2005年版が刊行された。全文を入手するには16ユーロを要するが,第1章と有機農業面積に関する第2章は無料で入手できる(Helga Willer and Minou Yussefi (Editors) (2005) The World of Organic Agriculture – Statistics and Emerging Trends – 2005. IFOAM.197p)。なお,2004年版は無料で入手できる。2005年版による2003年時点での有機農業の行われている面積に関する統計を紹介する。なお,ここで示されている面積は,認証を受けた有機農業の行われている面積(転換中の農地を含む)に限定されている。

●有機農業の行なわれている面積

 2003年時点における有機農業を行っている農地の総面積は世界全体で2646万haに達する。このうちの1130万haをオーストラリアが占めている(表1)。このため,有機農業の農地面積の地域別シェアをみると,オセアニアが全体の約43%を占めており,次いでヨーロッパと中南米が約24%ずつを占めている。オセアニアに中南米とヨーロッパのシェアを加えると全体の90%に達し,残りの地域のシェアはわずかに過ぎない。

 

 オーストラリアとアルゼンチンでは,有機農地の大部分が粗放的な放牧地であるため,世界の有機栽培の耕地面積は,表の総面積の半分以下と推定される。そして,有機栽培の行なわれている耕地面積が最も多いのはヨーロッパであると推定されている。

●主要地域の状況

有機農産物は世界中で生産されているが,その大部分が北アメリカとヨーロッパで購入・消費されており,オセアニア,中南米,アジア,アフリカの有機農産物の大部分は輸出されている。
オーストラリアは,野菜,果実,乳製品,コメ,ハーブ,ワイン,野菜種子,羊肉を生産して,その大部分を輸出しており,ドイツ,オランダおよびイギリスへの輸出が全輸出額の70%を超えている。オーストラリアとニュージーランドでは有機農業に対して何らの補助金も支給していない。
中南米も補助金なしで,輸出型の有機農業を行っており,主なところでは,中米諸国がコーヒーとバナナ,パラグアイが砂糖,アルゼンチンが穀類と肉を輸出している。
ヨーロッパ全体の有機農業を行っている面積は620万haだが,EUの15か国がその多くを占めている。EU(15)における有機農業面積は570万ha(全農地の3.4%)で,有機農場数は14.3万戸(2%)に達している。オーストリアとスイスでは有機農業面積が全農地の10%を超えている。
北アメリカではアメリカが有機農産物の生産と消費の主体をなしている。北アメリカの有機農業面積は150万haで農地の0.3%に達している。2003年における世界全体の有機農産物の総販売額は250億ドルだが,北アメリカでの販売額はヨーロッパを超え,108億USドルに達している。
アジア全体の有機農業面積は73.6万haで,農場数は6.6万戸とまだわずかだが,急速に伸びてきている。そのなかで主要な生産国は,中国,インド,インドネシア,日本である。有機の生産基準を定めている国は,インド,日本,韓国,台湾,タイの外,多数あるが,自国の認証組織を持っている国は中国,イスラエル,日本だけで,その他の国は外国の認証組織の認証を受けている。国内での販売額が最も大きいのは日本だが,中国,マレーシア,フィリピン,シンガポール,タイでも国内販売額が増加しつつある。
アフリカの有機農業面積は43.5万haで,農場数は11.8万戸に達し,主にヨーロッパに輸出している。アフリカで有機農業が拡大している背景には,先進国での有機農産物の需要が拡大していることと,劣化した土壌の肥沃度を回復させるのに有機農業が使われていることがある。

●日本における有機農産物の生産と消費

参考として,農林水産省がまとめた日本で流通した有機農産物および同加工食品を認定事業者が格付けした2003年の実績を下の表に示す(http://www.maff.go.jp/soshiki/syokuhin/heya/new_jas/h15nintei_kakutuke.pdf)。金額ではなく量だが,日本で流通している有機農産物および同加工食品のかなりの部分が輸入されていることが分かる。