コーデックス委員会による最終決定
環境保全型農業レポート.No.42「食品中カドミウムの国際基準案最終段階」に紹介したが,コーデックス委員会において精米など一部食品のカドミウム濃度の上限値が積み残しになっていた。2006年4月に開催された第38回食品添加物・汚染物質部会の議事録によると,精米のカドミウム上限値を0.4 mg/kgとするとの日本の提案について,多くの国が賛成し,それまで反対していたEU,エジプト,ノルウェーが反対せずに保留とした。このため,精米0.4 mg,海産二枚貝(カキ及びホタテガイを除く)と頭足類(内臓を除去したもの)2 mg/kgが食品添加物・汚染物質部会の最終案となった。そして,7月3〜7日に開催された第29回コーデックス委員会総会で最終決定された。
食品添加物・汚染物質部会の議事録によると,日本など一部の国では土壌のカドミウムのバックグラウンドレベルが高いことから,精米0.2 mg/kgとするそれまでの案に対して,日本は精米0.4 mg/kg案を提案した。そして,
(1) 日本の行った動物投与試験から,精米0.4 mg/kgでも人間の健康を保護できるし,精米0.2 mg/kgと0.4 mg/kgとで比較しても食品から摂取するカドミウム摂取量には大きな違いはない
(2) バックグラウンドの高い国は一部だけで,そこで産出されるコメが世界のコメ貿易量に占める割合は小さく,国際的な影響はわずかにすぎないことから,合意されたとのことである
この(2)の指摘からすると,少なくとも保留したEU,エジプト,ノルウェーは,自分らが日本のコメを食べることはないから,0.4 mg/kgでも良いでしょうといった雰囲気が感じられる。
いずれにせよ,コーデックス委員会での最終決定を受けて,現在行われている食品安全委員会の食品からのカドミウム摂取に係るリスク評価の結果を踏まえ,関連する国内規則の改正が行われることになる。
なお,重金属類の土壌汚染の権威である浅見輝男元茨城大学教授は,日本の土壌で重金属のバックグラウンドが高いのは,自然の原因によるのでなく,古くから重金属の採掘が行われ,現代では輸入量も多く,カドミウムについては1995年時点で世界の使用量の43%も使用していることを指摘している。そして,浅見元教授は,これまでに行われた日本人での疫学調査の結果に基づいて,コメについてみると,耐容値はカドミウム0.05〜0.20mg/kg風乾重程度,摂取総量では2.0g程度と見ることができるであろう、としている(浅見輝男 (2004) わが国土壌の重金属汚染の実態.農業技術大系.土壌施肥編.第3巻 土壌の性質と活用.p.土壌と活用VI 32-31-2〜32-31-17)。