〜家畜ふん堆肥を利用したいと回答した農業者は多いが…
農林水産省は2004年11月に「家畜排せつ物たい肥の利用に関する意識・意向調査」を農業者(回答農業者の構成は耕種79%,畜産21%)に対して実施し,その結果を2005年1月19日に公表した(http://www.maff.go.jp/www/chiiki_joho/cont/20050119cyosa.pdf)。
調査結果は冒頭で,家畜ふん堆肥を「積極的に利用したい」が全体で51%,「ある程度利用したい」が37%となっており,「利用したい」が9割を占めていることを述べている。しかし,調査結果を良く読むと,堆肥を利用したいとの回答は条件付きであることがうかがえる。
1)「積極的に利用したいと」と回答した農業者の割合は,耕種農家の39%に対して,畜産農家は76%で,耕種農家の「積極的に利用したいと」と回答した農業者の割合は畜産農家よりも明らかに低かった。
2)家畜ふん堆肥を「あまり利用したくない」または「まったく利用したくない」と回答した者は,耕種農家で9%,畜産農家で1%あり,全体では少数者だが,耕種農家には「利用したくない」者が畜産農家よりも多く存在した。そして,「利用したくない」農家の割合は施設園芸で最も多く12。6%であった。「利用したくない」とする理由は,「散布に労力がかかる」,「含有する成分量が明確でない」が40%を超え,「雑草の種子の混入がある」,「含有する成分量が安定しない」,「衛生上の問題がある」が20%を超え,「栄養成分が多すぎる」と「作物の収量増加や品質向上が期待できない」が17%に達していた。
3)「今後,どのような家畜排せつ物たい肥の利用が進むと考えるか」に対する全回答者(大部分が「利用したい」とする農家)の回答をみると,耕種農家と畜産農家とで大きな違いはなく,「顆粒やペレットなど散布しやすい堆肥」,「価格が安い堆肥」と「成分量が安定した堆肥」が40%を超え,「成分量が明確な堆肥」,「雑草種子が混入してない堆肥」と「衛生上の問題がない堆肥」が30%を超えていた。裏返すと,「利用したい」とする農家の多くも家畜ふん堆肥について,これらの問題に不安や不満を持っていると推察される。
今回の調査結果は,農家の多くは,現状の家畜ふん堆肥には不安や不満を持っており,それらの点を解決してくれる家畜ふん堆肥を供給してくれるなら,利用したいとの意向を持っていることを示していよう。