No.178 農薬の使用状況と残留状況調査の結果(国内産農産物)

●農薬の使用状況と残留状況調査結果

日本では,2002年に中国などからの輸入農産物や国産農産物から違法な農薬が検出される事例が頻発して,大きな社会問題となった。これに対処するために,2003年に農薬取締法が改正され,許可されていない無登録農薬の販売に加えて,製造・輸入・使用の禁止,農薬使用規準に違反する農薬使用の禁止などが強化された。

この農薬取締法の改正を契機に農林水産省は,国内産農産物における農薬の使用状況と残留状況調査を開始したが,その2009年度の調査結果を2011年4月11日に公表した。

農薬の使用状況調査は,地方農政事務所などが農薬使用状況などの記入簿を農家に配布し,農家が記帳したものを農産物の出荷時に回収して,記載された農薬の作物適正性,使用量や希釈倍数,使用時期および使用回数の妥当性を確認して行なった。

不適正使用のあった農家数割合は,改正農薬取締法の施行された年度の2003年度には2.1%あったが,翌年度から減少し,2005年度以降0.3%ないし0.4%となっている。不適正使用の内容は,使用してはならない作物への誤った使用,不適切な使用量または希釈倍率での使用,使用時期を誤った使用,使用回数を誤った使用などが若干件数起きている。そのなかで,2009年度に不適正な使用を行なった農家数割合が相対的に多かった作物は,サヤインゲン2.5%,トマト0.6%,キュウリ0.6%などであった。

2009年度では,農家からの出荷段階にある農産物1,422検体(穀類・豆類147検体,野菜・果実1,275検体)を収集し,分析法の確立している73種類の残留農薬を分析した。1,422 検体のうち,定量限界(注:正確に分析できる最も低い濃度)以上の農薬が検出された検体は,合計1,150であった。このうち,1,148検体は食品衛生法に基づく残留基準値以下であったが,サヤインゲンで,クロルフェナピルの残留基準値である0.01mg/kg を超過する検体が1検体(0.02 mg/kg),ニラにおいて,トリアジメノールの残留基準値である0.5 mg/kg を超過する検体が1検体(0.6 mg/kg)あった。これらのサヤインゲンやニラを通常摂食する量を摂取しても,健康に影響する量ではない。

不適正な使用が認められた農家に対しては,地方農政事務所などや都道府県が農薬の適正使用の徹底を図るように指導したとのことである。

しかし,残留農薬が検出された段階では農産物はとっくに消費し終えている。調査試料数がごくわずかなので,仮に農薬の不適正な使用があったとしても,基準を超える残留農薬が検出される確率は極めて低い。そうした検出事例があった場合,当該農家に後から指導するだけで良いのだろうか。不適正な残留農薬が検出された農家については,次年度も農薬の使用状況と残留状況調査の対象にして,再発防止の確認を行なうといった程度のペナルティーを課すことが必要ではなかろうか。

●農薬の適正使用判定システム

インターネットや携帯電話を介して,農家が使用しようとする農薬の使用条件を送信すると,それが適正化否かを判定してくれるサービスがある。環境保全型農業レポート.2005年2月25日号で「農薬の適正使用を支援する判定システムが登場」で紹介したサービスである。この判定システム(「農薬ナビ」)は2010年6月まで中央農業総合研究センターから無料で提供されたが,現在はNPO法人農業ナビゲーション研究所から有料で提供されている。「農業ナビ」の利用,JA等の団体での利用契約となっており,利用条件に応じて料金体系が異なるので,農業ナビゲーション研究所に問い合わせて、サービス内容、利用条件、料金等を相談する形になっている。

他方,無料で利用できる農薬検索ソフトの ACFinderは,無償でソフトをダウンロードできる。また,農林水産消費安全技術センター(FAMIC)もホームページで農薬検索システムを無償で提供している。

農薬の使用に先立って,こうしたシフトで農薬の選択や散布条件を確認すれば,不適正な使用を回避することができる。