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…地域の歴史…
地域からみた江戸時代
 

産業、流通、商業、貿易

市場と流通

幕府や藩の最大の資金源は米。米を中心とした産物を運ぶために海上交通が整備され、流通の中心地大阪には堂島米市場がおこり、全国の米相場に影響を与えた。大阪・江戸では魚や野菜の市場も活発になった。

農業

江戸時代の日本は、木綿・絹・砂糖・タバコなど全ての生活物資の自給を実現。収量を高める技術改良、魚粕肥料、多毛作、用水建設、優れた品種づくりなどの成果だ。農民リーダーによる指導本「農書」も全国に登場。

財政と金融

金貨・銀貨・銭貨(銅)の3つのお金があり、江戸は金、大阪は銀中心と分かれていた江戸時代。金銀銅の交換比率の変動や、物価上昇、お金の価値の低下などの大問題に幕府・藩が打った対策と、実力をつけてきた大商人の活動。

運輸・通信

東海道など街道の宿場には荷物を運ぶ人と馬が置かれ、宿から宿へとリレー形式で輸送した。これが伝馬制度で、文書などを運ぶ飛脚も活躍した。海では廻船業が起こり日本経済の発展に大きな役割を果たした。

土木・建設

戦国時代の軍事技術が治水と開発に用いられた。徳川家康は「関東流」の伊奈氏、八代将軍吉宗は「紀州流」の井沢氏に関東平野を任せ、利根川・荒川の氾らん湿地だった江戸周辺を、農業地帯に、世界一の大都市の地に変えていった。

商業

江戸時代の経済発展と衣食住の国内自給は、商人の活躍で実現した。都会と地方を行き来して商品開発し地方に産業をおこした人びと、地域の木綿を有名商品に高め江戸で呉服やを始めた商人など、全国で多彩な活躍。

貿易

日本人の海外渡航を禁止し、貿易は長崎でオランダ・中国に限った鎖国政策。それでも輸入代金として大量 の金銀が国外へ出るのを防ぐため輸入制限が行なわれた。朝鮮とは友好関係を保ち、対馬藩を窓口に貿易と交流が続けられた。

畜産

馬は乗馬と荷物の輸送に欠かせない家畜で、南部藩や薩摩藩などでは藩が馬の牧場をもち、外国品種との交配による改良も試みられた。肉食が禁止されていたなか彦根藩では牛肉生産が行なわれ、近江牛は神戸牛・松阪牛のもとになった。

林業

江戸時代初めには、天然の杉や檜がどんどん切り出されたが、17世紀後半から森を保護し木を植え育てる林業に変わった。奈良の吉野林業や京都の北山杉、江戸近郊の西川林業など、使用目的に合わせて木を育てる技術ができてきた。

海の漁業

漁業の先進地は大阪湾や瀬戸内・和歌山沿岸など。江戸・大阪が大都市になって魚消費が高まると、関東や九州などへ漁に出かけ、行き先の村に漁業技術を伝えた。鰯・鰊漁は魚肥を供給し木綿・煙草・野菜などの生産を高めるのに大いに貢献した。

湖・川の漁業

琵琶湖では、田んぼや用水路に産卵にくる魚も含めて、さまざまな獲り方と魚資源を守る工夫がなされていた。越後三面川では早くも江戸時代に、鮭の産卵と自然ふ化を助けるための川の整備や獲りすぎの制限が行なわれた。

捕鯨

大きな鯨を小さな船で獲る捕鯨は、人びとの役割とチームワーク、スピードと技術が見事だ。和歌山県太地町で江戸時代前半、動きの速いザトウクジラも獲れる網取法が完成、これが伝わって、五島列島、土佐、房総半島など各地に捕鯨基地ができた。

養殖漁業

広島湾のカキ養殖は、カキの子を竹に付着させて集めるのがポイントだったが、これは現代でも養殖の基本。長野県佐久のコイは、水田に放し蚕のサナギを餌にして地域の条件フル活用。江戸時代の庶民はアイディアがすごい。

製鉄

江戸時代の製鉄は、木炭の熱で砂鉄を溶かす方法で行なわれた。中国山地では炭の確保や技術改良などの努力が続けられて、製鉄は地域の重要産業となった。幕末には岩手県でわが国初の洋式の溶鉱炉が建設された。

鋳物

鍋、釜、火鉢、鍬などの日用品から、茶釜やお寺の鐘まで、銅や鉄の鋳物はあらゆるところに使われた。最大の産地、富山県高岡市では藩の保護で発展し、埼玉県川口市では江戸の人びとの日用品生産が問屋の援助も受けて発展した。

金銀銅

日本は「ゴールデン・ジパング」といわれ、世界有数の金銀の輸出国だったため、徳川家康は金銀山を幕府直轄にし、有能な経営者を代官として送りこんだ。鉱山にはにぎやかな町が出現し、また鉱脈掘り技術や精錬法などが、外国技術も取り入れて発達。17世紀初頭において、世界の銀産総額の1/2に近い20万kgを輸出する能力を持っていた。

石炭

石炭は明治以降の産業発展のエネルギーだが、江戸時代には瀬戸内の塩田で海水を煮詰める燃料に使われた。幕末近くなると蒸気船の燃料や、大砲製造用に鉄を溶かす燃料などの需要が増え、北九州の炭鉱で盛んに掘られた。

鉱産物

自給の国、江戸時代の日本は鉱物資源の利用も多彩。硫黄はマッチ・花火・火薬・薬原料などに、明礬(みょうばん)は染色の薬品や血止め薬に、石灰は白壁のしっくいや肥料に、水銀は白粉に。雲母・ベンガラ・火打石・砥石などなど、産地の努力と利用の工夫がいっぱい。

造船

江戸時代の造船は瀬戸内海沿岸が盛んで、西廻り海運が起こると全国から船の注文がきた。幕末にロシア使節の船が津波で壊れたとき、静岡戸田など日本の船大工は、ロシア人技術者と協力して代わりの船=戸田号を設計、初の西洋式の造船に成功した。

製塩

江戸時代の初期に、効率的に塩ができる入浜式塩田の技術ができ、また西廻り海運が開かれて北国の塩の需要もふえたことで、瀬戸内海沿岸で急速に塩田開発が進んだ。やがて塩が生産過剰になり、藩を超えて休業の協定も。

特産品

傘とちょうちんは美濃(岐阜県)、菅笠は加賀(石川県)、そろばんは雲州(島根県)、将棋の駒は天童(山形県)というように、江戸時代には、日用品ひとつひとつに日本一を誇る産地ができた。先人たちの目のつけどころのよさと努力のたまものだ。

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