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木綿の前に衣料の中心だった麻の原料・青苧（あおそ）は、山形・福島などの重要な産物。西廻り航路で奈良に運ばれて武士の礼服用の奈良晒に加工、また新潟では丈夫で涼しい着物で喜ばれた越後縮が盛んにつくられた。
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江戸時代の初め最大の輸入品だった絹も自給に向かう。東日本に養蚕が急速に広がり、品種や技術の改良もなされた。京都西陣が中心だった絹織物が、桐生・足利・八王子など関東養蚕地帯に発展。生糸・絹は幕末・明治にわが国最大の輸出商品となった。
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京都西陣は、徳川家との強い結びつきと技術改良の努力で高級織物産地として全国をリード。西陣の大火事もきっかけに桐生・足利が大産地に発展し、実用織物の八王子、ちりめんの丹後（京都北部）など各地に産地がおこった。
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平安時代に始まった京染めは、優美な友禅染めの登場で大きく発展し、宮崎友禅斎は金沢に移って加賀友禅が誕生。庶民の着物の木綿では、愛知県の有松・鳴海が見事な絞り染めの産地になった。草木染めも各地で。
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絹とともに木綿も輸入から自給へ。江戸時代初め大阪や兵庫から綿栽培が始まり、瀬戸内海沿岸、知多・三河（愛知県）や山陰地方などへと急速に広がった。漁業の発展で肥料の干鰯が豊富になったこと、綿作は高い農家収入が得られたことも理由だ。
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木綿が日常着となるにつれ、織物産地が登場し、色柄などに工夫がこめられた。最高級ブランド松阪の縞木綿、着心地が評判の知多の晒木綿、太い糸の河内木綿、薄い生地の和泉木綿など。久留米や松山では女性が開発した絣織が人気商品に。
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赤い染料や口紅の原料となる紅花の産地はトップが山形の最上地方、ついで埼玉・宮城・茨城。農家では、紅色の色素をよく出せるように花振り・花寝かせなどの作業をしセンベイ状の干花に加工して出荷。京都の職人の手で製品にされた。
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木綿を染めるのには藍が最適。徳島の吉野川中・下流の洪水地帯が大産地となった。農家の女性たちが害虫取り、水やり、真夏の収穫・乾燥など厳しい作業に耐えて葉藍を生産し、藍師の優れた技術によって藍玉に加工された。
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ローソクや鬢つけ油（髪を固める油、今は相撲の力士が使う）の原料となる蝋をとるのが櫨の実。藩の収入をふやすドル箱産業として、櫨栽培と蝋生産に取り組んだところが多い。大分県の庄屋の息子は非常に優れた櫨品種をつくった。
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畳が広く使われるようになったのも江戸時代。藺草は冬に田植えし、真夏の暑い晴れた日に刈り取り、色艶・香りをそこなわないよう泥染めという作業を行う。藩の専売にして、藩外への苗や技術の持ち出しを厳しく禁ずるところが多かった。
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江戸時代には庶民も本を読み紙の需要が急増。楮（こうぞ）や三椏（みつまた）を育て、その繊維から紙をすく和紙づくりが盛んに。ドル箱として藩専売にされた場合も多く、農民は藩の厳しい規制に苦しんだが、各地に名産和紙が誕生。
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家庭用燃料のほか、製塩・たたら製鉄・鍛冶など産業用に使われていた木炭や薪の量はばく大。多摩川沿いの登戸辺りが炭産地だったように、大都市には広い地域から供給された。名産地、和歌山熊野には炭焼きの技術研修に人びとが訪れた。
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それまでは暗闇だった夜に、菜種油の明かりが灯ったうれしいできごとは江戸時代のこと。水田や畑の裏作による菜種の栽培が関西地方から広がり、油を絞る技術も人力から水車利用へと発達したからだ。
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江戸東方の荒川・中川沿いの低地には小松菜や千住ネギ、西方の武蔵野台地には練馬大根、滝野川人参、吉祥寺ウドというように、土地条件を生かした名産地ができ、船や馬で青物市場に運ばれ、大都市の人びとの野菜消費に応えた。
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くだもの類は水菓子として喜ばれた。伝統のぶどう産地、山梨勝沼からは甲州街道を馬で運ばれ、幕府への献上品に。大分臼杵藩領には藩直営のみかん園があり、これも幕府献上品。千石船で運ばれた紀州みかんは江戸で大人気。
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干ばつにも台風にも強いさつま芋は、飢饉のときでも命をつなぐ作物として、全国に広がった。石見銀山代官で島根方面にさつま芋をすすめた「芋代官」井戸平左衛門や「甘藷先生」青木昆陽のように、人びとから感謝され続ける先人は多い。
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徳川家康が静岡の本山茶を好んだことから、静岡県に茶園が広がった。宇治からは最高級茶を運ばせ、「お茶壺道中」を江戸へ向かった。一般人用は番茶のようなお茶だったが、永谷宗円は香味のよい緑色の煎茶を開発、江戸っ子をとりこにした。
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砂糖も国内自給を達成した。沖縄では中国に習った方法で黒砂糖生産が行われ、ここを支配した薩摩藩が奄美に生産を広げた。悲願の白砂糖づくりは、讃岐（香川）の向山周慶が中国のやり方とは全く異なるアイディアと方法によって、成功した。
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和歌山の醤油づくりが千葉へ伝わり、銚子・野田に醤油づくりがおこった。関西が薄口なのに対し、関東は江戸っ子好みの濃い口だ。愛知県半田では酒粕から酢を造ったが、江戸の早寿司にピッタリで、江戸前寿司ができあがった。
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大量の酒を江戸に送るようになった大阪・兵庫で清酒づくりが大発展。香味よく辛口の池田の酒、まろやかなコクのある伊丹の酒が人気をとり、やがて六甲山のおいしい水を生かして寒造りの灘の酒が評判を呼び、有名産地になった。
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