No.001-3 2004年の梅雨期から農研機構がウンカ飛来予報を開始

セジロウンカ,トビイロウンカなどのウンカは,主に中国南部の水田で成虫に羽化し,明け方と夕方に一斉に上空に飛び立ち,梅雨時に発達する下層ジェット気流に乗り,梅雨前線上の低気圧が日本を通過するのにともない,南西諸島,南九州や西日本に降下する。
ウンカは,成虫が茎の汁を吸ってイネを枯らす昔から恐れられている害虫である。日本では越冬できないが,飛来後,秋の涼しくなるまでの間に世代をくり返して加害する。2〜3か月効果の持続する殺虫剤を育苗箱に散布して,予防的に防除する方法もある。しかし,ウンカ飛来を天気予報のように正確に予測できれば,より的確に防除することが可能になる。

精度の高いウンカ移動予測モデル

 ウンカの飛来を予測する研究は以前から行われていたが,以前は海洋上を含む気象情報の正確な把握ができず,約150km×150kmのメッシュ(格子)での予測が限度であった。
 日本原子力研究所(原研)の東海研究所は,原子炉事故で放出された放射性物質の大気中における移動をコンピュータで予測するシステムを開発している。原研はこのシステムを使って,チェルノブイリ原子力発電所事故にともなう放射性物質の大気中における移動や,三宅島の噴火にともなうガスの拡散などを予測し,地図に図示している。
 そこで,原研が,約30km×30kmのメッシュで,垂直方向に20層に分けて大気の気象データを計算してウンカの移動を予測するモデルを作成した。これを核にして農業・生物系特定産業技術研究機構(農研機構)の中央農業総合研究センターと九州沖縄農業研究センターがウンカ飛来予測システムを構築した。すなわち,気象庁は毎日午前9時現在の大気の状態をコンピュータで解析して気象予報に使っているが,そのデータをオンラインで送信してもらい,当日の午前9時の大気を初期値として3日間の風の状態を計算し,その計算結果をウンカ移動モデルに入力して,ウンカの分布を計算する。これがウンカ飛来予測システムである。そして,毎日の朝と夕方に飛び立ったウンカが風に乗って3日間にどのように移動しているかを3時間ごとに地図に図示して,日本に飛来するのか,飛来するならどこに飛来するのかの予報を,5月下旬から毎日インターネットで公開している。(詳細は<http://narc.naro.affrc.go.jp/chousei/shiryou/press/unka/unka.htm>に記載されている)

●リアルタイムウンカ飛来予測ホームページ開設

「リアルタイムウンカ飛来予測」のホームページ(<http://agri.narc.affrc.go.jp/indexj.html>)にアクセスすると,その中の「解説」に,当日中国を飛び立ったウンカが日本に飛来するか否かの予報の結論が書かれている。例えば,2004年6月4日の予報では,『2004年6月3日21時(日本時間4日6時),4日10時(日本時間4日19時)の飛び立ちともに,日本へ飛来しないと考えられます。』と記載されている。そして,中国を飛び立ったウンカが3日間にどのように移動するかを,地図上のアニメーションでみることができる。6月4日の予報の場合,ウンカはベトナムの方に移動すると予想されるので,日本には飛来しないと結論されたことが分かる。
このウンカ飛来予測システムを2003年の梅雨期に試行し,九州へのウンカの実際の飛来を確認したところ,同期の降雨予報の的中率とほぼ同じ74%の精度であったとのことである。これだけの精度が確認されたので,2004年の梅雨期からウンカ飛来予報を開始した。この予報は,植物防疫法に基づく国と都道府県が行う発生予察事業による予察ではなく,農研機構が試験的に行っているもので,農研機構はその利用に伴ういかなる損害の責任も負わないことが付記されている。