No.113 養豚場を除く畜産事業場からの排水規制が強化

 水質汚濁防止法によって,閉鎖性海域(東京湾,伊勢湾,瀬戸内海)と指定湖沼(琵琶湖など11の湖沼)の集水域に所在し, 1日当たりの平均的な排出水量が50立方メートル以上の工場・事業場については,排水中の窒素とリンの濃度について一律排水基準が定められている。一律排水基準では,生活環境項目として,窒素を120 mg/L(日間平均60 mg/L)以下,リンを16 mg/L(日間平均 8 mg/L)以下にすることが定められている。また,健康項目として,アンモニア性+亜硝酸性+硝酸性窒素の総量を100 mg/L以下にすることも定められている。

 ただし,窒素とリンの一律排水基準を達成することが容易でない工場・事業場については,期限を限って暫定排水基準が適用されている。畜産事業場(豚房の総面積が50平方メートル以上,牛房の総面積が200平方メートル以上,馬房の総面積が500平方メートル以上の事業場)については,当初から暫定排水基準が定められたが,改訂のたびに下げられ,閉鎖性海域の集水域に所在する畜産事業場については,2008年9月30日までは窒素について190 mg/L(日間平均150 mg/L),リンについて30 mg/L(日平均24 mg/L)までの暫定排水基準が定められていた。

 2008年10月1日から2013年9月30日までは,閉鎖性海域の集水域に所在する養豚事業場にはこれまでと同じ暫定排水基準が適用されるが,牛と馬の事業場については,暫定排水基準が廃止されて,一律排水基準の適用が施行された。今回の改正に先立って,環境省が改正案についてパブリックコメントを募集したところ,豚だけでなく牛の事業場にもなお暫定排水基準を適用すべきとの意見が寄せられた。環境省は今回の見直しに際して実態調査を行った結果,豚を除き適用対象の事業場は全て一般排水基準に対応していたので,暫定排水基準の延長を行わないこととしたとのことである。