新鮮な魚の焼き身に麦味噌を加えてすり、だし汁でのばした汁を温かいご飯にかけた、南予や中予一帯でつくられている日常的な料理です。つくりおきができるので、おかずがないときにも重宝されました。海に近い地域は海の魚、中山間部では川魚が使われ、魚の種類で味わいの違うさつまが地域ごとに受け継がれています。魚……
「そば」といっても麺ではなく、殻を除いたそばの実(そば米)をゆでて、冷たいそばつゆをかけます。酒田をはじめとする庄内地方の家庭料理で、来客時のもてなし料理や精進料理の一品とされてきました。元は関西方面の寺院で食べられていたものが、北前船の西回り航路で酒田に伝えられ、料理屋でのもてなしの食膳にとり……
県南西部の佐野市を含む、群馬県にまたがる両毛《りょうもう》地区では小麦の生産がさかんで、夕方には毎日のようにうどんを打って夕食にしました。そんな土地柄で、そばは主に来客やお祝いの席に出されましたが、「かてそば」といわれる大根そばは日常食として食べました。大根が混ざってボリュームが増えたそばは、さ……
さっと火を通した大根の長めのせん切りと一緒に食べるそばで、シャキシャキと食感がよいものです。そばのカサ増し料理といえますが、野菜をゆでることで野菜のカサが減るので大量の野菜をとることができ、そばの食べ過ぎを防ぎます。食物繊維やカリウム、ビタミンCなども摂取できる、現代の食生活の改善にもつながるお……
三重県のあおさの生産高は全国の約60%を占め、全国第1位(2017年)です。おもに伊勢湾や志摩の海岸でとれ、養殖もしています。今回聞き書きをした志摩町和具《わぐ》は、北は英虞《あご》湾、南は熊野灘に面し、志摩町の中でも海女の多い地域で、あおさの生産量も多く、水産業がさかんです。 あおさとはヒトエ……
料理名からは汁ものと想像することができませんが、栃木県民にはかんぴょうの入った汁ものとして好まれています。決して煮物ではありません。やわらかく煮えたかんぴょうがフワフワの卵をまとって舌触りがよくコクもあります。 かんぴょうそのものは、味に癖がなく、色も白いので、いろいろな料理に使えます。保存性が……
今治市は愛媛県の北東部に位置し、北は瀬戸内海に面し、豊かな水産資源に恵まれています。また市内の乃万地区は、乃万(野間)大根の産地として昔から有名で、大根はおもにたくあん用に使われます。 この料理は、地元で冬場に大量にとれる大根と、瀬戸内産のいりこと、地場産の裸麦でつくった甘口の麦味噌を使い、いつ……
くろこは、じゃがいもからでんぷんをとったあとのしぼりかすからつくる、嬬恋村《つまごいむら》伝統の保存食品です。高原野菜で有名な嬬恋村は昔、じゃがいもが収入源で、江戸後期からじゃがいもでんぷん(かたくり粉)が村の大きな産業となっていました。明治2年の大凶作から、しぼりかすも食材として利用するように……
生のあらめは肉質が厚く歯ごたえがありますが、乾燥あらめは蒸してから刻んで干したものなので、昆布よりもやわらかく、味にくせが少ないのが特徴です。京都市や府の南部地域では、あらめとお揚げ(油揚げ)、にんじんの組み合わせは、8のつく日に食べるお決まりのおばんざいです。病気予防のまじないになるという言い……