No.130 イギリスが農業用資材に含まれる園芸用ピートを明確に表示するよう指示

 寒い地域では湛水によって土壌微生物による有機物分解が抑制されて,ピート(泥炭)などの有機質土壌が形成されている。環境保全型農業レポート「No.128 土壌の炭素ストックを高める農地の管理方法」に紹介したように,農地管理方法を改善して,土壌の炭素貯留量を向上させるには,作物単収が多少低下しても,その減額分が補償されるなら,地下水位を上昇させたり,あるいは再度冠水して作物生産を放棄したりするほうが,有効である。有機質土壌の管理の仕方のこうした改善によって,土壌に固定される二酸化炭素の量は37〜73 CO2相当トン/ha/年に達し,他の方法よりもはるかに高い改善効果を持っている。

 ピートは土壌改良材や培養土用に多量に使用されており,2007年で世界全体の総使用量が661万立m3に達し,その69%をアマチュアの一般の人達が使用している(ADAS UK Ltd and Enviros Consulting Ltd (2008) Monitoring of peat and alternative products for growing media and soil improvers in the UK 2007 )。そして,イギリスにおける園芸用ピートの採取量は年間約50万トンに達し,二酸化炭素の排出量で10万台の自動車が走行時に排出する二酸化炭素排出量に相当するという。また,ピートの採取は,シギ(ダイシャクシギ)やトンボ(White-faced Darter dragonfly)の生息地を破壊している。

 こうしたことを踏まえ,DEFRA(環境・食料・農村開発省)は,農業資材の販売業者に対して,一般の人達が,ピート使用が野生生物や環境劣化に寄与していることを知った上で,商品を選択するように,土壌改良材や培養土にピートが含まれている場合には,その旨を明確に表示するよう,2009年5月18日に指示した。