播州《ばんしゅう》の焼きあなご(白焼き)は、瀬戸内海がもたらす豊かな海の幸で、うなぎと違って脂ののる旬の夏場でもさっぱりとしていて深い味わいがあります。加古川市内でも明治初期からの老舗をはじめとする焼きあなご店がいくつもあり、朝5時から焼き始め、6時から営業しています。昔は始発電車で出かける人の……
美波《みなみ》町や海陽町など太平洋に面した県南部の家庭では、春や秋にかつおがとれると刺身を醤油漬けにしてお茶漬けにします。もともとは漁に行った際に船上で食べた漁師めしで、漁業のさかんな県南ならではの食べ方です。 お茶は、山間部の那賀《なか》町相生《あいおい》地区と上勝《かみかつ》町だけでつくられ……
国東《くにさき》半島の南で別府湾に面する杵築《きつき》市では、新鮮な魚を使った茶漬けがさまざまに食べられています。中でもこの鯛茶漬けはごちそうで、地元で大変愛されている料理です。杵築の殿様も好み、「うれしいのぉ」とつぶやいたという言い伝えがあり「うれしの」とも呼ばれています。鯛はまず刺身を醤油で……
白いご飯の下に野菜などを煮たおかずをうずめ、わさびと一緒に食べます。石見《いわみ》地域の山間部に伝わる料理で、そのいわれには贅沢なおかずを隠した、粗末なおかずを隠したなど諸説あります。 広島との県境にある匹見《ひきみ》町では法事や祭り、正月などに客人にふるまったり、寒い冬の夕飯にしたそうです。清……
さっと火を通した大根の長めのせん切りと一緒に食べるそばで、シャキシャキと食感がよいものです。そばのカサ増し料理といえますが、野菜をゆでることで野菜のカサが減るので大量の野菜をとることができ、そばの食べ過ぎを防ぎます。食物繊維やカリウム、ビタミンCなども摂取できる、現代の食生活の改善にもつながるお……
丹沢山地のふもとにある秦野《はだの》市はかつてタバコ栽培がさかんで、裏作でソバや小麦が作付けされてきました。そばを上手に打つには手間と技術が必要なので、手打ちがもてなしでした。人が集まるとそばをふるまい、とくに冠婚葬祭のあとはしめにふるまわれることが多かったそうです。 暮れから正月にかけてもよく……
玄界灘に面し新鮮な魚介類がとれる博多では、昔から鮮度のよいさばが手に入ったら生で食べる習慣があります。10月に入り脂ののったさばが出回るとよく食べられるのが、地元で「ごまさば」と呼ばれる、さばのごま醤油です。通常の刺身より薄く切り、たっぷりのすりごまと醤油、みりんなどを加えた漬け汁につけ、わさび……
黒潮にのって北上するかつおは3~5月に県南部の海域に近づくため、田辺市の漁師は小型漁船で近海かつおを一本釣りし、3~4℃の冷水(真水と海水を合わせた水)につけ、鮮度が落ちないうちに日帰りで港に戻ります。漁獲して1時間ほどで食べると、まだ死後硬直していないかつおはもっちりとして噛みきれないぐらいの……
県の魚でもあるとびうおは、島根県では初夏を告げる代表的な魚です。旬は夏。海の上を滑空しやすいように内臓も脂身も少なく身軽なので、さっぱりとした上品な味わいです。刺身にすると銀色に光って美しく、胸ビレを広げて姿づくりにすることもあります。 沿岸では2種類のとびうおが見られ、小さいホソトビウオを小目……
一般的に使われている「とびうお」という言葉は一種の魚をさすものではなく、ダツ目トビウオ科魚類の総称で、数十種を含みます。屋久島はトビウオ類の水揚げ量日本一の島で、冬から春にかけてのハマトビウオ、春から夏のツクシトビウオ、アヤトビウオ、ホソトビウオ、夏から秋にかけてのトビウオと、季節ごとにいろいろ……