総合防除の考え方と実際

【ア】 【カ】 【サ】 【タ】 【ナ】 【ハ】 【マ】 【ラ】

【ア】

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アスパラガス・害虫(施設栽培)
高齢者が中心のアスパラガス栽培で,農家が実践できる防除法を開発した。被害の大きい茎枯病は施設化で回避できる。ヨトウガとハスモンヨトウは鉄砲ノズルによる幼虫のねらい打ち防除,ネギアザミウマは施設の短時間蒸し込みで密度を下げる,という方法をとればカンザワハダニのリサージェンスを回避できる。カンザワハダニは11月以降に天井部分のビニール除去と火炎処理で施設内の密度を下げる。野ネズミは殺虫剤とゴマの実を加えた粘着トラップで防除。

イチゴ・害虫(東日本)
総合防除の基本は,1)病害虫のついていない苗を使う,2)施設内に病害虫を侵入させない,3)施設を病害虫が発生しにくい環境にする,4)耕種的防除の実施,5)発生した病害虫を天敵や薬剤によって防除すること。育苗期(育苗圃),定植前(本圃),定植から保温開始期,保温開始期以降というステージ毎に,これらの手法を組み合わせる。主な対象は,コガネムシ,センチュウ,ハダニ類,アブラムシ類,コナジラミ類,アザミウマ類およびハスモンヨトウなど。

イチゴ・害虫(西日本)
西日本のイチゴは促成栽培で,9月の定植,10月下旬ビニール被覆と,加温の始まる11月下旬からの施設栽培での防除が対象。6月の育苗期の害虫ハダニ類とアブラムシ類は,炭疽病対策の雨よけ施設での育苗や低温処理育苗でも増える。育苗期は土着天敵に影響の少ない農薬で防除。本圃での害虫はハダニ類,アブラムシ類,アザミウマ類とハスモンヨトウ,オオタバコガ,ハダニ類には天敵のチリカブリダニやミヤコカブリダニ,アブラムシ類にはコレマンアブラバチを中核的天敵資材としてスケジュール放飼。ただ,ハダニ類などは密度を抑制する必要から選択的農薬の効率的利用が不可欠となる。その利用法を詳述。

イチゴ・病気
ウイルス病,炭疽病,萎黄病対策で,次々と画期的な防除法が開発されている。ウイルスフリー苗の供給体制の整備,太陽熱利用による土壌消毒,雨よけ育苗と底面給水などの防除法と効果について詳細に解説。

イチジク・害虫(露地栽培)
マシン油乳剤と石灰硫黄合剤など天敵に影響のない薬剤の選択(越冬するカンザワハダニやカイガラムシ類の防除),キボシカミキリ対象のバイオリサカミキリ(ボーベリア・ブロンニアティ),ネコブセンチュウ対象のパストリアなど天敵微生物資材の利用,シルバーフィルムなど物理的防除法を組み合わせて,基幹防除は冬期のみに。

イネ・害虫 関東(早期栽培,早植栽培,普通栽培)
埼玉県では,早期栽培コシヒカリと麦跡の6月田植えの普通栽培では完全無農薬が可能になっている。縞葉枯病抵抗性品種が普及し,ヒメトビウンカの保毒率も低下したいま防除は不要に。イネミズゾウムシ,イネドロオイムシなどもあまり問題にならなくなった。そのため早期コシヒカリでは,苗箱施薬も不要で,田植え10日後の害虫の発生状況を観察して防除の要否を判断すればよい。麦跡の6月の普通栽培ではニカメイチュウの第1世代成虫が産卵でいない。問題になるのはイネツトムシくらいだか,それも基肥窒素を減肥すれば被害が軽減できる。種子の「温湯消毒法」,カキドウシ,リュウノヒゲなど畦畔の植生管理による斑点米カメムシ類対策も詳細に解説。

イネ・害虫 山陽
公的な発生予察情報は広域ベースの情報。これを「狼煙(のろし」とし,「虫見板」「虫見ちりとり」「調査棒」「ウンカスケール」など,自分でできる予察法で各水田の害虫の発生量が要防除水準に達しているかを判断し,的確な防除をする。水田の土着天敵と天敵類に対する農薬の影響の最新データも紹介。

イネ・害虫 東北(太平洋側)
基本は,茎葉や根を食害されても補償作用で減収しないイネ自身の力を利用すること,みかけの被害にだまされないこと,被害許容水準(参考表あり)を決めること,薬剤を的確で合理的に使うこと,の4つである。本文から具体的に列挙してみよう。抵抗性品種のササニシキBLや「なまむすめ」などを選択する。健苗は育苗期の病害予防にもなるが,垂れ葉に産卵するイネヒメハモグリバエの発生も少なくする。稲わらにはイネハモグリバエの蛹,イナゴの卵塊,紋枯病の菌核などが残るので,代かき時に取り出して埋没したり焼却したりする。東北ではイネの生育量が小さいうちにイネミズゾウムシの被害を受けやすいので,田植え時期をずらす。イネヒメハモグリバエの発生が多いところは深水を避ける,水温を上げるなどで対処。イネミズゾウムシ幼虫は中干しで防除。イネミズゾウムシ,コバネイナゴには額縁防除が有効。イネドロオイムシやイナゴなどは隔年防除でよい。1999年以降も多発傾向が続く斑点米カメムシ類防除のために,畦畔の除草は出穂10日以上前にすませる,など。

イネ・害虫 北九州
北九州では,ほぼ毎年防除適期が同じ斑点カメムシ類などの病害虫と,ウンカ類・コブノメイガなど年ごとに変動の大きい海外飛来性害虫がある。防除が難しいのは後者だが,梅雨明け後にトビイロウンカ,コブノメイガの飛来が終了した時点で,各病害虫の重要度と発生量を判断して防除法,時期を決定する。問題は飛来性害虫の要防除基準の判定だが,それらが正確に把握できるようになった。トビイロウンカは,佐賀県では7月下〜8月上旬で10株当り成虫・幼虫が2頭以上,9月上中旬で1株当り成虫・老熟幼虫が5頭以上。一方,コブノメイガは見た目ほど収量に影響しない。いかに虫を殺すかではなく,止葉を含む上位3葉をいかに確保するかを基準にする。

オウトウ・病気・害虫(促成栽培)
スカシバコン(性フェロモン剤)やIGR剤,越冬期のマシン油乳剤,石灰硫黄合剤の使用で土着天敵が定着し,殺虫剤の散布の大幅な削減に成功。アブラムシにはテントウムシ類,アブラバチ類,クサカゲロウ類,ウメシロカイガラムシにはヒメアカホシテントウやツヤコバチ類,ヒメコバチ類,イラガにはイラガイツツバセイボウやキイロタマゴバチなど,モンクロシャチホコにはブランコヤドリバエなど,モモのハマキマダラメイガにはクモ類,ゴミムシ,サムライコマユバチなどウメ園には多様な天敵相が保たれている。

ウメ・害虫
スカシバコン(性フェロモン剤)やIGR剤,越冬期のマシン油乳剤,石灰硫黄合剤の使用で土着天敵が定着し,殺虫剤の散布の大幅な削減に成功。アブラムシにはテントウムシ類,アブラバチ類,クサカゲロウ類,ウメシロカイガラムシにはヒメアカホシテントウやツヤコバチ類,ヒメコバチ類,イラガにはイラガイツツバセイボウやキイロタマゴバチなど,モンクロシャチホコにはブランコヤドリバエなど,モモのハマキマダラメイガにはクモ類,ゴミムシ,サムライコマユバチなどウメ園には多様な天敵相が保たれている。

オクラ・病気・害虫(露地栽培)
オクラは関東・東北まで作付けが拡大している。ここでは関東を中心とした露地オクラの総合防除技術を紹介。害虫ではアブラムシ類をはじめ,ネキリムシ類,メイガ類,ハダニ類やアザミウマ類,連作圃場に多いネコブセンチュウ類に,また,病気では苗立枯病,葉枯細菌病,うどんこ病,半身萎凋病などに対策が必要である。ネコブセンチュウ対策では前作にクロタラリア・ギニアグラスなどのセンチュウ対抗作物を輪作することや,播種直後のオオムギの通路播種・べたがけ資材の被覆,バンカープランツとしてのソルガムは,長稈短稈品種を組合わせて囲い込むなど農薬にたよらずに土着天敵を活用した総合防除技術。

【カ】

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カキ(伊豆,松本早生富有,富有)・害虫
フジコナカイガラムシは果実とヘタの隙間に生息するため散布薬剤がかかりにくいが,越冬世代幼虫と第一世代幼虫に対する薬剤防除と,それ以降の土着天敵の保護利用により密度を抑制できる。薬剤は土着天敵に悪影響を及ぼさないIGR系薬剤や残効の短い有機リン系薬剤,交信攪乱剤などを用いる。慣行防除に比べてフジコナカイガラムシによる被害を低く抑え,薬剤散布回数を2回程度,薬剤費を2,000円/10a程度削減できる。

カキ(富有,平核無)・害虫
イラガ類,マイマイガ,カキノヘタムシガなど一次害虫の防除のために,より効果の高い薬剤を無分別に採用した結果,常発してきたのがフジコナガラムシ,カンザワハダニなどの二次害虫。薬剤散布回数と薬剤選択法,園デザイン,除草や剪定などの作業方法などをチェックし,フェロモン剤(スカシバコン)や黄色灯の設置などマイルドな方法で一次害虫をたたき,二次害虫は土着天敵で防除する体系に転換。

カンキツ・害虫
古くから導入されてきたヤノネツヤコバチ,ヤノネキイロコバチ,ルビーアカヤドリコバチ,ベダリアテントウ,シルベストリーコバチなどの導入天敵の放飼,ケシハネカクシ類やハダニアザミウマなど有力なハダニの土着天敵の保護,ゴマダラカミキリ対象の天敵資材ボーベリア・ブロンニアティの利用などで,ハダニやアブラムシのリサージェンスや薬剤抵抗性の発達を防ぐ。

カンキツ・害虫
和歌山県海草郡下津町の農家が15年以上にわたって取組んできた省農薬体系。クモ類,テントウムシ類,ハナカメムシ類,捕食性ダニ類,クサカゲロウ類など土着天敵が豊富に定着しているためハダニやアザミウマ類に悩まされることはない。問題はヤノネカイガラムシだったが,放飼したヤノネキイロコバチ,ヤノネツヤコバチが定着して,従来行っていた冬期のマシン油散布も不要になる。

カンキツ・害虫
カンキツ産地の害虫発生相と防除体系の現状から提案された少農薬防除体系。ゴマダラカミキリはボーベリア・ブロンニアティー,捕殺,網の利用で。ダニ類では,防除の中心をミカンサビダニからミカンサビダニに転換すべきと提案。ミカンサビダニや土着天敵の定着で密度が下がっているが,ミカンサビダニは果実への被害が大きく,黒点病の防除薬剤が変更されて発生が多くなっているからだ。カイガラムシ類はIGR系など選択性の薬剤とヤノネツヤコバチなど導入天敵の保護を。チャノキイロアザミウマは品質向上にも役立つ光反射フィルムで防除が可能。

カンキツ・病害虫
総合防除を「減農薬を図った場合に問題になる病害虫被害を,いろいろの適切な手段で制御しようとする病害虫管理システム」と定義。散布回数を少なくする分,一回一回の防除効果をより安定したもの,高いものに改善することが重要になるため,薬液の付着を良好にするための環境整備や散布技術の改善が必要であり,特に殺菌剤については薬剤の残効・耐雨性を向上させるための工夫が必要である。
ここでは病害虫が発生しにくい環境条件を整えるとともに,効率的な薬剤防除および耕種的・生物的・物理的防除技術を駆使して,社会的に認知されつつある特別栽培農産物および有機JAS農産物の防除体系を、農薬利用ではとくにこれまで取り上げられてこなかったマシン油乳剤の積極的な利用による病害虫同時防除を中心に紹介する。園の選定と防除基盤の整備も詳述。

キャベツ・害虫
天敵に影響のない粒剤やBT剤,脱皮阻害剤など選択性農薬を利用することで,薬剤の抵抗性を獲得しやすく,リサージェンスが問題になるコナガを,カエル,クモ類,ヒメハナカメムシ類,寄生蜂,天敵微生物など土着天敵で防除。

キュウリ・害虫(施設栽培;抑制栽培,半促成栽培)
キュウリの施設を用いた抑制栽培,半促成栽培での主要な害虫は,アザミウマ類,アブラムシ類,コナジラミ類,ハモグリバエ類,ハスモンヨトウ,ワタへリクロノメイガ,ホコリダニ類,ハダニ類である。育苗時防除の徹底で苗による本圃への持込み防ぐことをはじめ,害虫の飛翔や移動を攪乱する近紫外線カットフィルムを施設全面に張ること,サイド部・天窓部・換気扇吸気口などの開口部に防虫ネットを展張することなどにより,薬剤散布回数を3分の1にまで抑えた総合防除技術。注目の施設キュウリ栽培の高知県からの報告。

クリ・害虫
薬剤散布をクリイガアブラムシ,モモノゴマダラノメイガ,クリシギゾウムシに極力限定することで,クリタマバチの導入天敵チュウゴクオナガコバチを温存できる。これによりクリタマバチ被害芽率を最小限に抑えられ,羽化時期の応急防除で対応できる。カイガラムシ類は冬季のマシン油乳剤で対処。枝幹害虫やクスサン,カツラマルカイガラムシは,園内の見回り,卵・幼虫の捕殺,初期防除に努め,局所的発生段階で終息させる。

コマツナ・害虫
近紫外線カットフィルムや防虫ネット利用,太陽熱処理など,物理的防除法を主体とし,補助手段として化学的および生物的防除法を組み合わせる。栽培面積,露地あるいは施設などの栽培形態の変化に対応できる柔軟性が物理的防除法の長所。

【サ】

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サツマイモ・土壌害虫,線虫
土壌害虫・線虫は連作によって多発することから,輪作が総合防除体系で最も重要。これに各種の耕種的・生物的・薬剤防除法を効率的に組み合わせる。コガネムシ類の常発地では,未熟有機物の施用を控えるとともに,成虫の餌植物を除去するなど多発原因を取り除く。常発畑ではコガネムシ類の少ない加工・原料用品種や早掘り品種を。また,作付け前にBT剤または殺虫剤を土壌混和処理し,多発が予想される場合には産卵期の殺虫剤散布または幼虫発生始期に昆虫寄生性線虫(スタイナーネマ・カーポカプサエ剤)を株元潅注する。ハリガネムシ類が発生する畑では,成虫発生時期に開花するイネ科植物を畑周辺から取り除く。被害が常発する畑では,サツマイモ栽培前に重点的に薬剤で防除する。なお薬剤は,併発するコガネムシ類やネコブセンチュウなどの同時防除を考慮して選定する。非くん蒸剤の粒剤型殺虫・殺線虫剤は殺菌効果はないものの土壌条件の影響を受けにくく,天敵相への悪影響も少ない。

サツマイモ・病気
発生している土壌病害の種類を明らかにして,防除体系を組み立てる。立枯病や黒斑病発生圃場ではクロルピクリンくん蒸剤を用いた畦立て同時マルチ畦内土壌消毒を主とした防除体系を考える。土壌病害発生圃場では,圃場をマルチ畦内土壌消毒するとともに,実情に応じてウイルスフリー苗,抵抗性品種の利用,生物農薬や温湯を用いた苗消毒,土壌pHの弱酸性矯正や地温抑制のための白黒ダブルマルチの利用など,各病害防除に有効な手段を選択し,それらを組み合わせて体系化する。土壌病害未発生圃場では,イネ科作物や土壌センチュウの対抗植物を用いた輪作を導入し,持続的なサツマイモ栽培計画を立てる。貯蔵病害を防除するためには,収穫したいもは速やかにキュアリング処理を行い,貯蔵中の湿度を90%以上に保つことが重要。

シシトウ・害虫(施設栽培の事例)
高知県JAとさしのシシトウ部会が取り組む統合防除の事例。まるごと事例記事はナス施設栽培とともに初の収録。シシトウは登録農薬数が非常に少なく,しかも10か月におよぶ長期作型であり,農薬に頼らない防除技術確立が必須になっている。防虫ネット,黄色蛍光灯,交信攪乱フェロモンのほか,有効な在来天敵としてクロヒョウタンカスミカメをコナジラミ類対策に使っている。インゲンマメをバンカー植物にすることなど土着天敵の力を引き出す現場の工夫も紹介している。

シバ・害虫
コガネムシ類には「芝市ネマ」(スタイナーネマ・クシダイ),シバオサゾウムシには「バイオセーフ」(スタイナーネマ・カーポカプサエ)など天敵微生物資材が,スジキリヨトウ・シバツトガには性フェロモン剤(コンフューザーG)や抵抗性品種が開発され,無農薬ゴフル場を実現。

シュンギク・害虫
シュンギクには,ハモグリバエ類,ヨトウムシ類,アブラムシ類などの害虫がいる。難害虫マメハモグリバエ対策に開発されたのが,「晴れの日1日ビニール敷き」。地中のマメハモグリバエの蛹は,シュンギクを収穫した直後にハウス内にビニールを敷き詰めてハウスを一日閉め切れば十分防除できる。これに紫外線カットフィルム,ハウス開口部のネット被覆など物理的防除法も組み合わせれば,防除経費が格段に安いことも実証している。

水耕ミツバ・害虫
施設水耕ミツバで発生する害虫には,ガ類,ハダニ類,アブラムシ類,アザミウマ類,コナジラミ類,ハモグリバエ類などがある。この記事は,地図カルテによる発生予察,ネットによる物理的防除,雑草管理など圃場衛生を組み合わせた減農薬防除体系である。地図カルテとは,あらかじめハウスの地図を作製しておき,日別または週別に害虫の発生状況(場所・程度)および各種作業を地図上に書き込んでカルテ化したもので,早期発見,早期防除の大きな武器となる。ミツバ以外でも有効。防虫ネットの活用,衛生管理など,総合防除技術を詳細に紹介しているのはもちろんである。

水耕ミツバ・病気
水耕栽培によるミツバでは,地上部の病害はまだしも,根部を侵す根腐病など培養液で伝染する病害については,培養液に農薬を入れて防除することができない。農薬によらない防除技術(施設の消毒,パネルの消毒,培養液の濃度・pH調整による遊走子の形成抑制と発病軽減,培養液中へのオゾンガス処理,金属銀剤による発生予防,培養液のろ過殺菌,紫外線殺菌,圃場衛生管理)を徹底的に追及。次亜塩素酸ナトリウムの上手な処理法,話題の金属銀剤(オクトクロス)なども取り入れた総合防除技術。

【タ】

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ダイコン・害虫
三浦半島の秋冬ダイコンの事例。ダイコンの出荷規格は厳しく,収穫間で根部が見えないため,農薬散布は過剰になりやすい。播種時の粒剤施用,間引き時などでの発生状況の診断に基づく的確な防除で,農薬散布量は大幅に削減できる。難害虫のネグサレセンチュウにはマリーゴールドが対抗植物としての効果が知られているが,ステリリスエンバク(ヘイオーツ,オーツワン)はそれよりも効果が劣るものの,栽培の手間がかからないというメリットがある。

ダイズ・害虫 北海道(畑作)
ダイズを加害する害虫は200種以上あるといわれるが,北海道で問題になるのは数種。しかも,マメシンクイガなど食葉性鱗翅目害虫も食害はあるが防除が必要になるほどにはならない。問題なのはわい化病を媒介するジャガイモヒゲナガアブラムシ。防除のポイントは,防除適期の有翅虫の寄生状況の観察。通常,防除回数は1週間おきに3回が効果が高いとされていたが,2回でも安定していることがわかる。

ダイズ・病気・害虫 関東(水田転作)
ダイズは広い面積で栽培することが多く,収益性が低いので,病害虫防除の経費は抑えたい。また,無闇な薬剤散布は土着天敵類に悪影響を与えるので,IGRやBT剤など選択性殺虫剤を利用したり,各種の耕種的防除法を組み合わせることが必要。種子伝染の防止,抵抗性品種,輪作,圃場環境・整備,生物防除などダイズの病虫害防除法を集大成。

チャ・害虫
茶株は構造的に樹冠内部には薬剤が十分にはかからない。そのため樹冠内部に土着天敵が保護されて害虫の密度抑制に重要な役割を果たしていることが分かった。一番茶期はたいていは防除は不要。二番茶期は害虫の発生が多くなるので薬剤中心の防除を。三番茶期以降は天敵の働きが活発になるので,薬剤散布は最小限に抑えて土着天敵主体の防除が可能。

チャ・害虫
ハダニの天敵のケナガカブリダニの放飼,フェロモントラップや黄色粘着トラップによるた発生予察に基づいたBT剤の適期利用に耕種的防除を組み合わせた減農薬防除体系。

トマト・害虫(施設栽培)
黄化葉巻病の蔓延を防ぐ総合防除体系。0.4mm以下の目合いで極細糸の防虫ネット、黄色粘着板(またはテープ)、銀色反射資材、紫外線カットフィルムの活用や、抵抗性が発達しにくい気門封鎖剤・糸状菌製剤の散布、栽培後の蒸し込み・残渣処理、抵抗性品種を組み合わせることで、黄化葉巻病(媒介者のタバココナジラミ)を徹底排除する。

トマト・害虫(施設栽培)
コナジラミ類にはオンシツツヤコバチとサバクツヤコバチ。マメハモグリバエにはイサエアヒメコバチとハモグリコマユバチ。アブラムシ類にはコレマンアブラバチとショクガタマバエ,ナミテントウ,ヤマトクサカゲロウ・・・と,主要な害虫に出揃った天敵資材を黄色蛍光灯や近紫外線除去フィルムなどの物理的防除法と選択性殺虫剤と組み合わせて有効に活用する方法を詳細に解説。

トマト・病気・害虫(雨よけ栽培)
雨よけ栽培トマトでも化学農薬の節減が大きな課題。病害では,被害の大きい灰色かび病や葉かび病,疫病,土壌病害の青枯病・萎凋病のほか,近年ではすすかび病などの地上病害,かいよう病,茎えそ細菌病などの細菌性病害,根部の褐色根腐病の発生が目立つ。害虫では,コナジラミ類,ハモグリバエ類,スリップス類およびトマトサビダニのほか,タバコガ類,ヨトウムシ類などのチョウ目の害虫がある。このほかチューリップヒゲナガアブラムシ,カンザワハダニも被害は大きくなる。代替技術の中心は,天敵・微生物農薬を使った生物的防除法,とりわけダクト内投入専用機を用いたボトキラー水和剤の散布は効果も顕著で作業効率もよい。これら生物的防除法を,防虫網・粘着資材・還元土壌消毒などの物理的防除法や,耕種的防除法としての圃場の選択・接ぎ木栽培での穂木選択・種子消毒などで補完する。生態的防除法としての周辺環境整備も必要で,イワダレソウなどのカバープランツの導入も有効である。

トマト・病気(土壌病害虫対策)
さまざまな土壌病害虫に対して,太陽熱と水とフスマ(または米ぬか)を使って土壌を急速に還元化させ,酸素を必要とする土壌病害虫を死滅させたり増殖を抑制する方法である。還元化の過程で発生する有機酸,微生物同士の競合もかかわっている。フスマ1〜2t/10aが準備でき,地温30℃以上を20日間確保できればこの方法は有効で,複数の病害虫を同時に抑制することができる。とくに褐色根腐病,サツマイモネコブセンチュウには高い防除効果があり,さらには土壌深部まで生息する萎凋病,根腐萎凋病,青枯病などの病原菌との複合発生の場合についても,圃場の準備および処理方法および本方法以外の手法との組み合わせを詳述。

【ナ】

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ナシ(赤ナシ)・病気
赤ナシで殺菌剤の散布回数8回まで削減に成功。ターゲットは黒星病。散布した薬剤の残効が持続している期間は,たとえ雨が降っても追加散布は行わない。また,残効が切れた後でも,雨が降らなければ薬剤の散布は行わない。そして,次の散布は残効が切れた後の次の雨の直前に行うようにする,などで散布間隔を可能な限り延ばすようにする。作用機構が異なる薬剤を組み合わせることで,特効薬のDMI剤を有効に活用。

ナシ・害虫
害虫といっても,放任栽培すると多発する一次害虫(シンクイムシ類,ミノガ類,ドクガ類など)と,一次害虫の薬剤防除により土着天敵が殺されることが原因で多発する二次害虫(ハダニ類,ニセナシサビダニ,コナカイガラムシ類,ワタアブラムシなど)がある。一次害虫は耕種的防除,少量散布,忌避灯,交信撹乱剤の利用などの方法でマイルドにたたき,二次害虫は土着天敵に働いてもらって多発させない。

ナシ・害虫
土着天敵を主体に,化学薬剤は補助的に利用する防除体系。越冬するワタアブラムシやハダニ,カイガラムシ類の密度を低減するためには冬期除草とマシン油散布。チョウ目害虫には天敵を保護するためにIGR剤を幼虫発生初期に散布。カメムシ類や鳥類は網で園全体を被覆,シンクイムシ類やハマキムシ類にはコンヒューザーPを設置,など。

ナス・害虫(施設栽培)
天敵温存ハウスやバンカープラント(ゴマやクレオメなど)で土着天敵タバコカスミカメを増やし,ミナミキイロアザミウマやタバココナジラミを防ぐ。初期の侵入・増殖は黄色粘着資材や防虫ネット,天敵に影響の少ない薬剤で抑制。天敵資材スワルスキーカブリダニは定植14日後までに放飼する。アブラムシ類やハダニ類も複数の天敵で対応できる。防除費・防除回数は慣行体系の2分の1,安芸地域の天敵導入率は97%に達している。

ナス・害虫(施設栽培)
ミナミキイロアザミウマやタバココナジラミが薬剤抵抗性を獲得し,防虫ネットや薬剤防除だけでは対処できなくなった。天敵資材スワルスキーカブリダニを導入したが,スワルスキーは厳寒期に活動が低下する。そこで,土着天敵タバコカスミカメを併用した防除体系を構築した。福岡では天敵温存植物にゴマが適さないため,クレオメを利用する。慣行体系比で薬剤費9割減,散布回数6分の1以下も可能。天敵導入率は短期間で8割に。

ナス・害虫(露地栽培)
アザミウマ類,アブラムシ類などは,天敵に影響のない農薬と土着天敵で抑え,オオタバコガやハスモンヨトウに対しては,バンカー植物にもなる障壁作物あるいは防風ネットを利用する。梅雨前に畝面のポリマルチをわらなどの有機マルチに変えるとカブリダニ類が発生し,チャノホコリダニの被害を軽減できる。有機マルチを設置した場合,アザミウマ類を対象にスワルスキーカブリダニを購入して使用することが可能である。



ナス・害虫(露地栽培)
選択的農薬の使用で各種害虫の土着天敵を露地ナス圃場で保護し,天敵温存植物(インセクタリープランツ)の植栽で土着天敵を強化する。花粉や花蜜に富み,開花期間も長いスイートバジルやホーリーバジルは,ヒメハナカメムシ類やヒラタアブ類などの土着天敵を圃場に呼び込み,生存率・繁殖能力を高める。オクラも,葉や茎から分泌される真珠体がヒメハナカメムシ類やカブリダニ類の持続性を高めるため,天敵の強化に有効である。



ナス・害虫(露地栽培)
京都府大原野・乙訓地域では,農家の高齢化と周辺の都市化で農薬散布が課題となり,1999年からソルゴー障壁栽培を導入している。ソルゴーはアブラムシ類やアザミウマ類の飛び込みを阻止し,風による傷果も減らす。また,ソルゴーに発生するヒエノアブラムシ(ナスを加害しない)を求めて土着天敵のヒメハナカメムシ類やクサカゲロウ類が集まるので,害虫を抑制できる。オオタバコガなどのヤガ類には黄色蛍光灯利用で対処する。



ナス・害虫(露地天敵温存栽培)
露地ナス畑の外縁にフレンチマリーゴールドを植栽すると,無害なアザミウマ類が定着し,それを求めてヒメハナカメムシ類が集まる。ヒメハナカメムシ類は,露地ナス最大の害虫であるミナミキイロアザミウマの天敵として高い防除効果を発揮する。ミナミキイロアザミウマ以外の害虫には,ヒメハナカメムシ類に害のない選択性殺虫剤を使用する。これで農薬の使用回数を半分に減らせる。



ナス・害虫(露地囲い込み栽培)
圃場の周囲に障壁作物ソルガムを栽培して圃場へのミナミキイロアザミウマの飛び込みを減らし,選択的殺虫剤の使用でヒメハナカメムシ類などの土着天敵を温存する。両者の効果で,ミナミキイロアザミウマの多発地域であっても,殺虫剤の使用を大幅に削減できる。また,ニジュウヤホシテントウが好む雑草のイヌホオズキを「おとり植物」として利用することで,ニジュウヤホシテントウによるナスへの加害も減らせる。



【ハ】

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ピーマン・害虫(施設栽培)
8月の播種から6月まで収穫する,10か月以上の長期栽培が通常。季節の変化と害虫発生の動向と,忙しい株の管理や収穫作業との兼ね合いで防除体系を組み立てている。育苗期は寒冷紗などで苗床を害虫から隔離。定植〜栽培初期は害虫の侵入がいちばん多い時期。ただ,まだ収穫の始まらない暇な時期なので,ククメリスカブリダニやヤマトクサカゲロウなど手間のかかる天敵利用がいちばん可能な時期。12月末〜3月は害虫の発生が少ないので,1か月に1回程度の天敵放飼で十分防除が可能。4月以降は整枝と収穫作業に追われるて防除にまで手が回らなくなる時期だが,湿度が高くなるので天敵微生物のバーティシリウム・レカニ菌が有効。また,長日条件なのであらゆる天敵昆虫が利用できる。

ピーマン(促成ピーマンの事例)
鹿児島県志布志市の促成ピーマン地帯。主要な害虫に対してはすべて天敵による防除をはかるという事例。地元のJAそお鹿児島の専門部会では主にアザミウマ類を対象に天敵利用の総合防除を,ククメリスカブリダニ単独の体系と,ククメリスカブリダニにタイリクヒメハナカメムシを組み合わせ,さらにコナジラミ対策としてチチュウカイツヤコバチ,アブラムシにムギクビレアブラムシも入れた体系の二階層に分けて実践している。ククメリスカブリダニは広食性で,ふすまや米ぬか等の有機物に発生しやすいケナガコナダニを餌として増殖。農薬にも比較的強い。うね上放飼が効果的。タイリクヒメハナカメムシは日本の土着種で,捕食能力にすぐれ,高温への適応性も高い天敵だ。ただし,化学農薬の影響を受けやすい。生長点に産卵するため摘心した新芽を残すことが大事。両体系は,比較的安価で天敵の定着,増殖も安定しやすいククメリス単独の体系をまず導入的に取り入れ,これを習得した生産者が天敵複合利用の後者の体系にステップアップして取り組み,成果を挙げている。平成21年からは新たに,タバココナジラミやチャノホコリダニも捕食するスワルスキーカブリダニをククメリスカブリダニにかえて導入。スワルスキーは代替餌の花粉の有無がポイント。省農薬により親和性の高い体系の確立を目指している。

ブドウ・害虫(デラウェア,施設加温栽培)
主要な3害虫を,カンザワハダニは天敵資材チリカブリダニの2〜4月放飼で,ハスモンヨトウは性フェロモン剤のヨトウコンHで,チャノキイロアザミウマは黄色粘着トラップを利用した診断で発生に応じて薬剤散布という防除体系で,年間の防除回数が慣行の5回(7薬剤)から3回(3薬剤)への削減を実現。多忙な冬期間の農作業が楽になる。

ブドウ(デラウェア、施設栽培の事例)
収穫量全国7位の大阪府羽曳野市のブドウ(デラウェア)施設栽培の事例。主要害虫は,ハダニ類(カンザワハダニが中心),ハスモンヨトウ,トビイロトラガ。ハスモンヨトウ蛹の越冬率が高く,被害が出やすいハスモンヨトウには,性フェロモン剤ヨトウコン-Hが有効。カンザワハダニの天敵ミヤコカブリダニは防除効果が高く,適応可能な温湿度範囲が広いためチリカブリダニより定着もよい。ハダニ類の多発する加温機や温風ダクト吹き出し口周辺に多めに放飼する。慣行防除では化学合成殺虫剤を年間5回(延成分回数では7回)散布するのに対して,年間3回(延成分回数3回)散布に削減できる。試算では,慣行防除体系よりも約5,000円割高だが,防除労力の省力化,果実の汚れや果粉溶脱による出荷価格の低下防止,「大阪エコ農産物」の認証も受けやすいなどの利点がある。

ブロッコリー・害虫(露地栽培)
コナガは土着天敵で抑え,天敵で抑えられない害虫は薬剤でたたく防除方法。この土着天敵を殺さない薬剤のローテーションでアオムシ,ヤガ類,コナガ,アブラムシ類を防除できる。ブロッコリー登録農薬の天敵群への影響についての詳細なデータも紹介。

【マ】

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メロン・害虫(施設栽培・秋冬作)
施設メロンでは,ワタアブラムシ,コナジラミ類,アザミウマ類,ハダニ類が恒常的に発生。これらに対して生育に合わせて天敵類を利用し,散布薬剤の削減をはかる。天敵類と選択的農薬を組み合わせることにより防除効果を安定させる。天敵類は一般に害虫の密度が高い条件や野外からの侵入が頻繁な時期には効果が十分に発現しないことも多い。そのため,定植時にネオニコチノイド系粒剤を処理し,天敵の効果が発現しやすい条件を整える。また,苗からの持ち込み防止や防虫ネットの利用も防除体系を組み立てる際の基本となる。

モモ・害虫(西日本)
ハダニ類の侵入はモモの発芽までの除草で阻止,ウメシロカイガラムシはタワシで樹皮をこすって落とす,といった耕種的防除と,天敵に影響のない薬剤の選択と適期防除(4月中下旬までなら合成ピレスロイド剤であっても天敵のカブリダニ類に影響がない)で土着天敵を保護・活用。農家が独自にやれる害虫発生の観察法も解説。

モモ・害虫(東日本)
モモシンクイガ,ナシヒメシンクイ,ハマキムシ類,モモハモグリガ,コスカシバを性フェロモン剤のコンヒューザーPとスカシバコンで,防除の難しいハダニ類は土着天敵のカブリダニを保護して防除。成功のポイントは対象害虫の初期密度をできるだけ低くすること。そして,前の世代の密度によって,次の世代の防除が必要かどうかを判断すること。

【ラ】

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リンゴ・害虫
長野県で取組まれているリンゴの減農薬体系。性フェロモン剤のハマキコン,コンフューザーAと選択性農薬を使いこなして,防除回数を慣行の13回から5回(選択防除は2回)に削減。

レタス・害虫(高冷地)
問題となる害虫はアブラムシ類,ナモグリバエ,オオタバコガ。ナモグリバエは育苗期間中に産卵されることから,セル成形苗での粒剤施用が有効である。性フェロモン剤による交信攪乱を利用し,難防除害虫のオオタバコガの発生量を抑制して減農薬を実現する。 オオタバコガの幼虫はレタスの結球内部に食入するため,防除には慣行では4〜5回の殺虫剤散布が行なわれているが,性フェロモン剤による交信攪乱によって,地域全体のオオタバコガ発生量を抑制すれば2〜3回程度の殺虫剤散布で安定した防除効果が得られる。