落花生というと炒ったものが一般的ですが、富士山南西麓にある富士宮ではゆで落花生にします。夏から秋に出回る生の落花生を殻のまま塩ゆでにするもので、甘味があってやわらかく、炒り落花生とは全然違う味わいです。生の落花生は日持ちがしないので、その時期だけのおやつやおつまみとして昔から親しまれてきました。……
もち米だけを蒸したおこわと、煮小豆あるいは煮たささげを別々に盛りつけるのが特徴で、おこわをくちなしで黄色に着色することもあります。もち米は昔は貴重品だったので、結婚式などの祝儀には飯が赤い「赤飯」を、お盆や法事などの弔事には飯が赤くない「おこわ」を食べました。お盆には集まった親戚にふるまいますが……
会津地方は県西部に位置し、山々に囲まれています。山では数多くの山菜やきのこがよく育ち、昔から大切な食材でした。わらび、ぜんまい、こごみ、ふきなどがよく利用されます。塩漬けや乾燥などして長期保存できるので、季節を問わず卵とじにしたり、じゅうねん(えごま)味噌で和えたり、くるみ和え、炒め物などさまざ……
鶏肉、ちくわ、栗、にんじん、ごぼう、干し椎茸などを味つけして煮た具をもち米と一緒に蒸しあげたおこわです。中国地方最高峰・大山は山岳信仰、神仏習合の霊場で、地元の人が参拝客などを精進料理で接待しており、その携帯食として大山おこわがあります。かつて僧兵が戦場に赴く際、勝利を祈願して山鳥と山草を入れた……
真庭市北部、鳥取県との県境に位置する蒜山高原一帯でつくられているおこわです。鶏肉に野菜、山ぶきなどの山菜や栗が入った具だくさんのごちそうで、素材の旨みと醤油の風味が上品です。田植え後のねぎらいの集まり「代満《しろみ》て」や祭り、行事、祝いごとなど、なにかあれば決まってつくられます。最近では食べも……
県の南東部に位置する赤磐《あかいわ》市は県内有数の米どころです。その中で旧熊山町では黒大豆も特産で、「丹波黒大豆」と呼ばれる品質の高い大豆がつくられています。県内では美作《みまさか》市など勝英《しょうえい》地域の「作州黒《さくしゅうくろ》」が同じ丹波黒大豆で先に知られていたので、熊山地域の黒大豆……
大きな花豆(べにばないんげん)を入れた赤飯は、県北西部の山間に広がる高原地域の嬬恋《つまごい》村で、祝儀、祭礼、農休み(毎月15日)や来客などの特別の日につくられてきたものです。皮が薄くてほくほくした食感、3㎝以上にもなる大きな花豆の甘煮が上にのった姿は圧巻で、みんなに喜ばれます。嬬恋の中でも古……
豆は金時豆で、ご飯をほんのり染めているのは醤油の色です。もち米のしっとり感に醤油の香りと味で口当たりがよく、これだけでおいしく食べることができます。中越地区でも長岡市近辺のみでつくられ、この地域で赤飯といったらこの醤油おこわのことです。 長岡は城下町で、江戸時代初期に初代藩主が三河地方から醤油職……
県東部で長野県に接する東濃《とうのう》で、中山間地域の恵那《えな》市や中津川《なかつがわ》市は栗が名産です。現在は栽培されている栗がほとんどですが、昔は山で拾ってくる自然からの贈り物でした。季節になるとみな競って山栗を拾いに出かけ、かち栗にしたりご飯に炊きこんだものです。 赤飯にも栗をたっぷり入……
お盆や仏事につくられる料理の代表として古くから受け継がれてきたおこわです。ささげの一種で「みとり豆」という県北部でつくられる希少な豆を使っています。 福岡県と接する中津市耶馬溪《やばけい》地域は、古くから山間の郷として開けた農山村であり、その歴史は先史時代まで遡ることができます。昭和30年頃には……