中津川市は、東濃圏域にあり木曽川が東西に貫流する中山間地域です。海の魚の入手が難しかったので、鯉は重要なたんぱく質源であり、客のもてなしや滋養強壮に食べられてきました。 鯉こくは、苦玉(胆のう)以外は内臓ごと筒切りにした鯉を地域の特産の赤味噌(豆味噌)で煮こんだ汁ものです。ごぼうなどの風味づけの……
酒で酔わせたどじょうが骨までやわらかい、トロミのある味噌仕立ての汁です。農家は土用になると稲の根張りをよくするため、水田の水を干し上げます。このとき、用水路も干し上げてどじょうをとりました。そのどじょうとうどん、自家製の野菜をたっぷり使った夏バテ予防のスタミナ料理として、農家の多い地域に伝わって……
山陰沖は、黒潮と親潮の分流が日本海に流れこみ、ぶつかる場所になっており、温度や水圧の安定した冷水域があるため、栄養に富んだ豊かな漁場となっています。鳥取でとれるかにというと雄のズワイガニ「松葉がに」が有名ですが、高級品として県外に出荷されることが多く、県民にとっては安価で味が濃厚な雌の「親がに」……
伊勢湾や三河湾に面する県内の海岸地域では魚介類を使った海鮮汁をよく食べますが、冠婚葬祭やかにが旬の時期にはとれたてを使い、かに汁をつくります。愛知県で「かに」といえば、わたりがに(がざみ)を指し、この地域では年間を通してとることができます。とくに梅雨から9月頃までが水揚げ量が多い時期です。 かに……
三重県のあおさの生産高は全国の約60%を占め、全国第1位(2017年)です。おもに伊勢湾や志摩の海岸でとれ、養殖もしています。今回聞き書きをした志摩町和具《わぐ》は、北は英虞《あご》湾、南は熊野灘に面し、志摩町の中でも海女の多い地域で、あおさの生産量も多く、水産業がさかんです。 あおさとはヒトエ……
近江八幡や五個荘《ごかしょう》の近江商人宅でよくつくられていた夏の味噌汁です。汁に入れるのは夏にたくさんとれるなすとごまだけで、非常にシンプルです。すったごまで濁った汁が泥のようで、格子に切れ目を入れたなすが亀の甲羅のように見えることからこの名前がつきました。 米どころの東近江では、各家で味噌を……
単に「いも汁」ということもあります。いもは「つぐねいも」と呼ぶずんぐりと丸くゴツゴツとしたタイプで、とろろにすると粘りが強くおいしいものです。米の収穫が終わると、喜びと感謝の印に新米を神棚の「おどくう様(火の神、一家の守り神)」に供えます。そして、つぐねいものとろろ汁で新米をたっぷり食べました。……
生の大豆をすり鉢でクリーミーになるまですった呉を味噌汁に入れると、ぶくぶくと泡立ちます。吹きこぼれる寸前のふわっとした状態が食べどきで、ふわふわの舌ざわりに濃厚な大豆のうま味とだしや味噌の風味が合わさり、滋養に満ちた味がします。結婚式、葬式、法事などのごちそうでした。 この呉汁は嶺北《れいほく》……