浮皮果,着色・発芽不良,凍害など…温暖化対策 第2弾

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 農業技術大系 果樹編 2023年版 を収録しました。

 温暖化や降水の局在・局大化などの気候変動は,いまや果樹の生育・発育に大きく影響を及ぼしています。前号に続き今号でもこの課題を取り上げ,最新の知見をふまえた総括的な解説と,クリ,ナシ,温州ミカンの対策技術を紹介しました。
 そのなかで農研機構果樹茶研・杉浦俊彦氏の 地球温暖化が果樹栽培に与える影響と対策 は,気候変化に関する統計的事実をふまえつつ,果樹の気象反応の基礎的理解,それから導かれる温暖化の具体的な影響,事例,求められる対策,将来予測までを整理,紹介頂いた労作(第1図)。20ページ近いボリュームの貴重なご報告で,果樹関係者必読です。

第1図 果樹における気温上昇と降水の極端化の影響

 なるほどこれはアイデア、と思わせる栽培なのが、ナシの 1株3樹植え1本主枝仕立て の取り組みです。3本の苗木を1株にして植え,各樹を1本主枝仕立てで育成していくもので,定植4~5年で樹冠拡大は終了,5年目には成木並みの収量が確保できるとのこと(第2図)。
 ナシ園地の若返りは常々指摘される課題ですがその実,改植はなかなか進んでいません。その理由として,枯死や樹勢が低下した樹が1本,2本あってもそれ以外が健全樹だと全面的につくり直すのが難しく,そうこうするうち,スポット的に空間ができてパッチ状に広がり,生産性を落としたまま改植もされないというケースがあります。しかしこの方法なら随分と改植対応のハードルは下がりそうです。

第2図 定植3年目の初結実の状況。左:1株3樹植え1本主枝仕立て,右:慣行仕立て 品種:恵水

 作業性と果実生産性の両立を追求したユニークな栽培&仕立て法としてこの他に、日本の風土にあった醸造用ブドウの仕立て方・管理や、イチジクの水稲育苗ハウスを利用した養液コンテナ栽培,オールバック仕立てによる早期多収栽培,リンゴの「高密植栽培(トールスピンドルシステム)」における省力栽培技術などを収録しました。

 このほか,カンキツの来歴,分類の最新情報,決定木分析(デシジョンツリー)による着果条件・外観と果実品質との関係,リンゴの遺伝子型や果肉色も加えた新たな品種特性分類と, 花粉の品種別発芽能力・量について新知見 (第3図)など,果樹の生理生態の基礎的情報も今号は充実させました。

第3図 はるかおよび王林における10℃下での花粉発芽状況(左:はるか,右:王林)

2023/10/18