「田んぼダム」の導入 ここがポイント!

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■多面的機能支払でも注目 排水側にひと工夫して みんなで水害を防ぐ

~おすすめ記事とビデオのご案内

 農業・農村のもつ多面的機能のひとつに、洪水防止機能があります。それをより積極的に引き出す取り組みとして、近年注目されているのが「田んぼダム」です。

 ダムといっても、巨大な壁で水をせきとめるようなものではありません。排水の穴を小さくするなどして、田んぼから出る水をゆっくりと流すしかけです。大雨のとき、なるべく長く田んぼに水を溜めておいて、排水路へ水が一気に集中するのを抑える。それにより水路があふれるのを防ごうというわけです。

 1枚1枚の田んぼに溜められる水の量はさほど多くありません。市町村や土地改良区など流域レベルの広い範囲で取り組んではじめて、田んぼダムはその効果を発揮します。いわば地域に大きな遊水地をつくるようなイメージです。

 田んぼダムを地域に導入する際、大事なポイントがあります。それは「今まで通りのコメつくり」が続けられることです。
 方式によっては、大雨でもないのに水が溜まったままで中干しできないとか、ヒタヒタ水ができないなど、イネの生育に合わせた水管理が不自由になってしまうことがあります。それが原因で実施率が下がってしまうケースも案外多いのです。

 近年、そうした課題を解決する方法が新潟県を中心に開発されてきました。田んぼの水位と排水量を別々に調節できる排水マスなどを設置する方法です(機能分離型)。
 中干しなど水管理は自由。それでいて、いざ大雨のときには排水量を抑えてくれるしかけです。これにより農家は「今まで通りのコメつくり」を続けながら、無理なく田んぼダムに取り組めるようになりました。排水マスを付け替えるなど、設置には多少の費用と労力がかかりますが、いったんつけてしまえば、その後の取り組みは維持しやすくなります。
 今年度からは多面的機能支払交付金によるさらなる後押しもあります。田んぼダムはいよいよ本格的に地域へ定着する段階に入っています。

 田んぼダムは何年かに一度、あるいは何10年かに一度の大雨に備えるもの。途中でやめてしまっては意味がありません。長い目で見て、設置方法や設置後の管理体制をどうするかについてあらかじめ地域でよく話し合い、しっかり意見をまとめておく。それが田んぼダム導入にあたっての、最大のポイントかもしれません。
 先日ルーラル電子図書館に収録された『季刊地域 45号』では「田んぼダム」を小特集しています。ビデオもあります。基礎知識から先進事例まで、現場目線の実践的な情報がご覧いただけます。みんなで話し合うときの材料として、ぜひご活用ください。

(写真提供:新潟県ほか)

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■おすすめの記事

▼田んぼダムを知るなら、まずはこの記事から。日本全国の田んぼダムの開発・設計に携わっている第1人者、吉川夏樹さんが現場への導入経験をふまえてわかりやすく解説。

「田んぼダムが拡大中! 田んぼダムのしくみと効果」
(季刊地域 №45 2021年夏号)より 
※画像をクリック

 

■おすすめのビデオ

▼その1:新潟県でロケしたもので、農家や土地改良区職員のコメントをまじえ、田んぼダムの種類と使い方をご紹介。

「田んぼダムの種類と使い方~新潟県内の取り組みから」
(DVD 多面的機能支払 支援シリーズ 第3巻 多面的機能の増進編)より
※画像をクリック(視聴時間は13分)

▼その2:吉川夏樹さんご本人が、取り組みを地域に広げるうえでのポイントについて詳しく解説します。

「田んぼダムのしくみと普及のポイント~専門家による解説」
(DVD 多面的機能支払 支援シリーズ 第3巻 多面的機能の増進編)より
※画像をクリック(視聴時間は10分)

 

■先進事例を知る

▼アゼの維持管理も欠かせません。農家のアゼ塗りや草刈り作業を田んぼダムの取り組みの一環と位置付け、多面的機能支払を活用している新潟県見附市の広域組織の事例を紹介。記事とビデオ、両方あります。

「新制度 多面的機能支払でアゼ草刈りに日当を出す 新潟県見附市広域協定の取り組み」
(『季刊地域 №19 2014年秋号より)
※画像をクリック

 

「アゼ草刈りとアゼ塗りで田んぼダム強化~新潟県見附市の事例」
(DVD『多面的機能支払 支援シリーズ 第3巻 多面的機能の増進編』より)
※画像をクリック(視聴時間は18分)

 2021/06/23