ひきずりは、鶏肉をよく使う名古屋ならではのすき焼きです。かつては大みそかにひきずりを食べて、不必要なものを引きずらないで新年を迎えるという習慣があったそうです。江戸時代には地元の越津《こしづ》ねぎというやわらかい葉ねぎを使いましたが、今は生産量が少なく、一般のねぎが使われます。肉は名古屋コーチン……
県西部の下仁田《しもにた》町を含む甘楽《かんら》・富岡地域でつくられる下仁田ねぎを使った、体の温まる冬のごちそうです。下仁田ねぎは根深ねぎ(長ねぎ)の一種で、白根が太く短く肉質はやわらか。煮こむととろけるような食感と特有の甘みがあり、徳川幕府への献上品とされたことから「殿様ねぎ」とも呼ばれます。……
かつての農村部では、田植えや祭り、祝いごとなどのもてなしに自宅で飼っていた鶏をしめてすき焼きを楽しみました。大阪府の最北端に位置し、山あいに棚田が広がる能勢町では、秋は鍋の用意をして山へ松茸狩りに行き、炭火をいこして(おこして)、みなでゴザを敷いてとれたての松茸を入れたすき焼きを食べたりしたそう……
今の大和高田市ですき焼きといえば牛肉。かしわ(鶏肉)のすき焼きを食べることは少なくなりましたが、食卓に肉があがることが少なかった昔は牛肉はもちろん、鶏肉を食べるのも特別でした。祝いごとや祭りの日、農繁期やかきもちなどの加工食品づくりで手伝ってもらった近隣の人たちにふるまう料理でもありました。 す……
広島県では、きのこ類のことを「なば」と呼びます。赤松林が多い中部台地(世羅台地・賀茂台地)では、松茸が豊富にとれました。 かつては10月初旬から11月初旬になると、びく(背負いかご)を背負って朝早く日が昇らないうちから、近くの山にとりに行きました。かごいっぱいにとれた松茸は、すき焼きに入れたり、……
南部地方は平安時代からの馬の産地で、祭りや玩具など馬にまつわるものがたくさんあります。馬肉鍋をはじめとする馬肉料理もその一つで、なかでも五戸《ごのへ》には馬の仲買人(馬喰《ばくろう》)が多かったこともあり、大正時代から町内に馬肉料理屋がありました。 馬肉鍋を家庭で食べるようになったのは戦後になっ……
ナーベーラーはへちまです。県外では、たわしや化粧水に利用されますが、沖縄では開花から約2週間の若い実を食用にします。筋っぽくない品種が栽培され、味噌煮、炒め物、汁ものなどに利用されています。 ンブシーは具をたっぷりにして味噌で煮込んだ汁けの多い煮物です。ナーベーラーンブシーは、へちまと豚肉の味噌……
沖縄料理の中でも最もポピュラーで、県内の学校給食でも食堂でも、必ずといっていいほどメニューにあり、毎日食べても飽きのこない一品です。 チャンプルーは豆腐と一緒に季節の野菜を炒める調理法で、ゴーヤーチャンプルーは夏場の野菜の少ない時期に、食卓にはなくてはならない料理です。ゴーヤーと島豆腐があれば、……
野菜を豊富に使って、甘めに味つけした煮なますです。精進料理として法事や彼岸、お盆のお供えに出されました。大根やにんじん、ごぼう、れんこんなどの根菜類はしゃきしゃきとした歯ごたえで、別々に味つけた具材の煮汁が口の中に広がります。高野豆腐や油揚げも入り、食べごたえのある一品になっています。 かつては……
県内各地でつくられている凍み大根と里芋やにんじん、干し椎茸などの具材を一緒に炊いた煮しめです。凍み大根は、冬の寒さを利用してつくられる保存食で、真ん中に穴があいているものは、「へそ大根」や「ババべそ(おばあさんのへそ)」とも呼ばれます。輪切りにした大根はゆでてから真ん中に串やワラを通して軒下に1……
見た目にも鮮やかなにんじんの子和えは、青森の年越しや正月に欠かせない料理です。昔は年末になると、奮発して5~6㎏ほどある真だらを1尾まるまる買って、各家庭でさばいていました。たらこはにんじんの子和えや醤油漬けに、身は昆布じめや焼き物に、残ったアラはじゃっぱ汁にと捨てずに大事に使いました。冬のにん……
埼玉県は海のない県なので新鮮な魚こそ手に入りませんでしたが、県北東部に位置する加須市は川が近く土地が豊かだったため、庭先ではさまざまな野菜が栽培され、折々の季節に旬の野菜を楽しみました。料理はとれたての野菜の味を生かすものがほとんどで、貯蔵加工はあまりしませんでした。白和えのほかにも、浅漬けや天……
こづゆは会津地方の代表的な郷土料理で、冠婚葬祭やハレの日の料理には必ず添えられます。山のもの(きくらげ、しいたけ)、里のもの(里芋、にんじんなど)、海のもの(貝柱)を小さめに切りそろえ、貝柱のだしがきいた薄味仕立ての汁煮物です。材料やその数は地域や家庭によって異なります。 西会津町のこづゆは豆腐……
月山《がっさん》の山麓、羽黒山《はぐろさん》の参道入り口(随神門《ずいしんもん》)からの街道1㎞にわたる地域は手向《とうげ》といい、古くから出羽三山《でわさんざん》の門前町として発展してきました。参拝客にふるまわれる精進料理の中でも欠かすことのできないものがごま豆腐です。出羽三山を開山した蜂子皇……
大阪の雑煮は白味噌で焼かない丸もち、子芋(里芋)、大根、焼き豆腐が定番です。 大阪の人は甘い白味噌が好物で、とくに雑煮用には普段使う白味噌より上等の“雑煮味噌”を注文したり手づくりしました。普段の白味噌の味噌汁よりだしをきかせた、こくのある雑煮で三が日毎朝祝いました。家庭によっては「うるうもち」……
奈良市や天理市の雑煮は焼き丸もちの白味噌仕立てです。もちは雑煮から出し、きな粉をつけて食べます。丸く切った大根や里芋などの具には和(輪)を大事に、丸く収まるようにとの思いが込められ、きな粉は黄金色が豊作を意味しています。豆腐は白壁の蔵が立つようにと蔵に見立てて切ります。 大和郡山市は白味噌仕立て……
県内の一般的な雑煮はいりこだしに白味噌仕立てで、丸もちに大根、小芋(里芋)、にんじん、真菜を入れます。醤油仕立てや角もちの地域や家庭もあり、1日目は丸もちで白味噌、2日目は角もちを焼いてすまし汁で食べたりもします。 もちに黒砂糖をかけるのはやや内陸部の勝浦郡で、海寄りの勝浦町は白味噌仕立て、山寄……
県内にはさまざまな年越しの料理がありますが、ここではその中の三つを紹介します。 「年越しのおかず」は、美濃と飛騨路をつなぐ要路にあたる川辺町で伝わる煮しめです。大晦日の夜になると、新米を炊いて丸干しいわしと年越しのおかずを食べました。今年は食べ残すほどの食料があった、来年もこうであるようにとたく……
徳島市周辺や県南部では、桃の節句(月遅れの4月3日)になると、女の子も男の子も三段重ねの手提げの小箱「遊山箱」にごちそうを詰めてもらい、遊山に出かけます。 中に詰める料理は、巻きずしにいなりずし、ゆで卵に卵焼き、色つきの寒天やようかん、ういろう、煮しめが定番です。行き先は桜の咲く土手や公園、磯や……
日向《ひゅうが》灘に面し県中央部に位置する川南町《かわみなみちょう》は米、さつまいも、果樹、茶などの栽培とともに、畜産業がさかんです。だぎねん(駄祈念)は、地区ごとに豊作を感謝し、家内安全・牛馬安全・五穀豊穣を水神様に祈る行事です。 孫谷《まごたに》地区では毎年旧暦9月15日に行なわれます。祭り……
県南部の人吉・球磨《くま》では、地域ごとに親しまれている神社があり、多良木町の天満宮なら「天神さん」、湯前町の里宮神社なら「里宮さん」と呼ばれます。各神社の秋祭りのごちそうに決まって出されるのがつぼん汁です。里芋やにんじん、ごぼう、鶏肉や焼き豆腐などを小さく切って煮た具だくさんの汁もので、食べる……
県南西部で飛騨山地の北端にあたる五箇山《ごかやま》地方は、現在は南砺市に含まれますが、砺波平野とは急峻な山地によって隔絶されています。山々に囲まれ平坦地は乏しく、生活の場は山腹のゆるやかな斜面です。わらでしばって持ち歩くことができるほどかたい五箇山豆腐が有名で、山腹を利用した赤かぶの栽培と赤かぶ……
浄土真宗の宗祖・親鸞聖人の恵みに感謝する法要、報恩講を白川郷では親しみをこめて「ほんこさま」と呼びます。11月上旬から12月に行なわれるほんこさまは、冬の一大行事。親戚や近所の人を家に招き、お坊さんの読経のあと、お斎《とき》として心づくしの料理でもてなします。 料理の準備は、その年の春から始まり……
郡上《ぐじょう》市の明宝《めいほう》地区で、行事やもてなしの際につくられる、砂糖が入った甘さのある料理を2種、紹介します。砂糖が貴重だった時代に、甘い汁は特別なごちそうでした。 菓子椀は、報恩講や法事をはじめ、節句のお祝いなどさまざまな行事でつくられます。具材を一つずつ味つけし、甘い汁をかけます……
佐渡のどの家庭でも食べられている伝統料理の代表が佐渡煮しめです。コトコト煮こんで味がよくしみこみ、人が集まるお盆や祭りや冠婚葬祭に欠かせません。ご恩がつくように大根、昆布、にんじん、こんにゃくなど「ん」のつく野菜を煮て、だしをたっぷりと吸った車麩を入れることが特徴です。少量ではあまりつくらず、大……