カンキツの着色促進,日焼けほか温暖化対策

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農業技術大系「果樹編」2022年版を収録しました。
温暖化の進行で懸念されているのが日焼け果の発生です。カンキツの場合,7~9月の高温期に,果実が栄養生長から成熟へ転換するタイミングで,強日射による高温と水分供給不足による果皮温度が上昇すると細胞がえ死して日焼け症状が発生します(第1図)。極早生,早生のほか,近年では‘せとか’‘麗紅’といった中晩カンでも増えており,品種選択の見直しや,果実袋やテープの貼付,摘果処理,灌水や炭酸カルシウム剤散布などの対策も含め,高糖度生産に伴う水分管理の仕方も検討が必要です。

第1図 日焼け果の症状 ①果皮が変色,②硬化および変形,③果肉のす上がり,④炭疽病の感染

省力・低樹高な仕立て方として今号は4例を紹介。「木と木をつなげる」発想のジョイント技術を適用,合わせてJM7を台木に樹高を低く下げ,側枝をV字方向に誘引して作業動線のよさと早期成園化の同時実現を狙うリンゴジョイントV字樹形栽培(第2図)。

第2図 リンゴV字ジョイント栽培と作業動線のイメージ

カキでは,新開発のわい性台‘静カ台2号’台を使った低樹高な主幹仕立て,クリは徒長枝の利用と密植並木植えを組み合わせた茨城県で開発の超低樹高密植並木植え,さらに,地上部からの主枝の立ち上げを省略して早期に側枝を確保し,早期開花と,最需要期である夏の多収穫を実現するパッションフルーツの鉢吊り下げ式養液土耕栽培です。
省力・軽労化技術では,「静電風圧式受粉機」による人工受粉を取り上げました。これは,花粉粒子にマイナスイオンを帯電して付着率を向上させる(第3図)というもので,効率受粉により作業を省力化しつつ,花粉使用量も削減できます。試作機段階ながら実証試験でも好成績を示しており,近い将来,市販化も予定とのこと。キウイフルーツやナシなど多くの果樹生産現場での普及が期待されます。

第3図 静電気による花粉付着の原理(コロナ帯電方式)

2022/10/24