農村力発見事典 『季刊地域』の用語集 59ワード

農村力発見5 自治力 愛するむらは放っておけない

人口1%戦略

カヤ|農村力発見事典 『季刊地域』の用語集|ルーラル電子図書館

自治力

人を増やす、増えていく

季刊地域30号(2017年夏号)117ページ


 IターンやUターンを生かして、地域人口を安定化させ、学校を存続させるために、どれだけ定住者を増やす必要があるだろうか。藤山浩氏は、今後30年間で、地区の総人口と14歳以下の年少人口の減少が1〜2割程度でおさまり、高齢化率が現状程度で安定的に推移することが条件になるという。ポイントとなるのは(1)20代前半の若者、(2)30代前半の夫婦(4歳以下の子供を同伴)、(3)60代前半の夫婦の3世代の移住者の動向だ。

 藤山氏は実際にこの条件を島根県邑南町にあてはめて、町内全地区(12地区)の人口シナリオを作成してみた。その結果、人口220人から2285人の各地区で、毎年(1)(2)(3)の各世代それぞれ1〜3家族程度の定住増で地域は安定的に維持できることがわかった。人口1万1680人の町全体では、各世代16家族、計48家族、112人(人口の約1%)の定住増を毎年獲得することが目標となる。

 この「人口の1%取り戻し戦略」は地区ごとの目標と町(市、村)全体の目標の2階建てとすることで、住民にとって手の届く目標になる。地区ごとの目標があれば、「東京に住んでいるあの家の息子夫婦を呼び戻す」とか、「ボランティアで通ってくるあの学生を地域おこし協力隊員として空き家に住まわせる」など、次に打つべき手が具体的に見えてくる。

 毎年地域人口の1%が新たに定住するためには、その人たちが食べていけるだけの仕事(所得)が地域に新たに必要となる。毎年1%人口を取り戻したいならば、地域の総所得も毎年1%ずつ地道に取り戻していくことだ。これまでの地域経済戦略はもっぱら企業誘致や観光開発、大規模な産地形成によって外からおカネを獲得することを考えてきたが、これからは入ってきたおカネをできるだけ外に出さないようにしたい。地域経済だだ漏れバケツの穴をふさぎ、できるだけ地域内でモノやサービスを調達することで仕事を生み出していく。それが「所得の1%取り戻し戦略」だ。

 たとえば300世帯、人口1000人の地域で1世帯平均年間3万円のパン代を使っているとすれば、そこには約1000万円分のパンの需要があることになる。地元にパン屋さんがなければ、そのおカネは域外に流れ出ていく。地元にパン屋さんを復活させ、そこからパンを買えば、1世帯が生計を立てることができる。パン屋さんが使う小麦粉や米粉を地域内で生産できれば、さらに地元でおカネと仕事が回るようになる。

→「田園回帰時代が始まった」19号(2014年秋号)、「特集 熱エネあったか自給圏構想」24号(2016年冬号)、「特集 田舎でのパンとピザの可能性」25号(2016年春号)

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