農村力発見事典 『季刊地域』の用語集 59ワード

農村力発見5 自治力 愛するむらは放っておけない

むらの足

自治力

困りごとから「むらの仕事」へ

季刊地域30号(2017年夏号)109ページ


 田舎の路線バスや鉄道の廃止・減便が止まらない。利用が少なくて採算がとれないことが理由だが、自分で運転できない高齢の住民にとっては、ちょっとした買い物に行くにも銀行で年金を下ろすにも、バスがなくなるととても不便だ。「むらの足」とは、こうした不便を解消するために、住民自らが運営したり運転したりして走らせる車のこと。

 公共交通機関が不十分な地域では、道路運送法で「自家用有償旅客運送」が認められ、地域のNPO法人などが自家用車を使って有料で住民を送迎することができる。送迎範囲は地域限定だが登録会員なら誰でも乗れる「公共交通空白地有償運送(旧過疎地有償運送)」と、要支援・要介護者が病院や公共施設に行ける「福祉有償運送」の2種類がある。運転手は法定講習を受ければ二種免許がなくてもOK。しかし利用料は「タクシー料金の半額程度に」とされていて、運営費の確保が課題。岩手県北上市・NPO法人くちないでは、赤字補填のためにスクールバス運営や多面的機能支払の事務局の仕事も行なっている。

 京都府南丹市美山町鶴ケ岡地区は、住民出資でむらの店を運営する傍ら、無償で送迎サービスをしている。運転手の日当は自治会費から捻出。店―自宅間はもちろん、診療所や郵便局等へも送迎する。範囲はやはり地区限定。「売るにも買うにも鶴ケ岡」が合い言葉で、住民がなるべく鶴ケ岡地区内で用足しができるよう仕組むことで、外へ流出するカネが減り、地元が潤うと考えている。

 足の工夫は物流にも及ぶ。愛媛県今治市・JAおちいまばりが取り組むのは農産物の「ついで集荷」。管内にある3つの離島から本店近くの直売所まで農産物を運ぶのに、本店から車を出すとコストがかかりすぎる。そこで一番遠くの島在住者を雇用し、出勤ついでに各島に立ち寄りながら直売所へ運んでもらう。帰り道も直売所の商品を学校給食センターに運んだり、島の住民の注文に応じて配達もこなしてもらう。

 常識の垣根を取り払った「組み合わせ輸送」の工夫は他にもいろいろ出てきていて、物流問題に悩む日本全体の方向性を、田舎の事例がリードしそうだ。

→「特集 買い物不便なむらが立ち上がる」12号(2013年冬号)、「特集 むらの足最新事情」27号(2016年秋号)

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