農村力発見事典 『季刊地域』の用語集 59ワード

農村力発見3 農が基盤、農家が基盤

農、農家

「小さい農家がたくさん」が強い

季刊地域30号(2017年夏号)94ページ


 草食動物ながら、小型の在来馬でも背中に200kgの荷物を載せて運べる力持ち。歴史的には武士の軍事利用で多く飼養された馬だが、農村部では主に荷駄馬として力仕事を任されてきた。岩手県の南部曲がり家などにも象徴されるように、農村では人間とともに暮らし働く大切な仲間だった。また、馬糞は肥料として重宝された。

 馬で畑を耕す「馬耕」が広まったのは意外に最近で、明治時代。去勢や調教といった馬の飼養技術が西洋から伝わったことと、耕地整理で大区画化、暗渠の普及で乾田化が進んだことが大きい。「馬耕教師」と呼ばれる犂メーカーの営業マンが全国の農村を回り、犂や馬耕技術を一気に全国に広めた。昭和初期には全国に約150万頭もの馬がおり、うち7〜8割が農村で働いていたという。馬耕大会などの競技会も盛んに開催され、「人馬一体」の技術を磨き合った。ワラ縄1本の手さばきで馬に自在に犁を引かせる名人もいたという。しかし戦後、耕耘機やトラクタが登場・普及すると、馬は農村からあっという間に姿を消してしまった。山で、切った木を馬に引かせて搬出する「馬搬」も、同様の運命をたどった。

 こうして、働く馬が「過去のもの」となって久しいが、昨今、馬耕・馬搬に興味を持つ人たちが増えている。馬耕なら、畑を耕しているのにエンジン音がせず、おしゃべりしながら家族で楽しく作業ができる。馬搬なら、道のない斜面でも馬が木を曳いてくれるので、大型トラック用の大きな道を、山を傷つけてまでつける必要がない。馬との共同作業は、機械も燃料もいらない持続可能な小農的技術。

 また、馬とふれあうホースセラピーはアニマルセラピー界の王様といわれ、ドイツでは健康保険も適用されるほどの実績を持つ。馬というパートナーと活かし合いながらの仕事に、人は、身体も脳も心も癒されるのだという。

→「特集 馬と働くっていいよね」29号(2017年春号)

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