農村力発見事典 『季刊地域』の用語集 59ワード

農村力発見3 農が基盤、農家が基盤

赤トンボとホタルとミツバチ

農、農家

「小さい農家がたくさん」が強い

季刊地域30号(2017年夏号)93ページ


 赤トンボとホタルとミツバチは、田んぼの周辺や里山で農家とともに生きてきた昆虫である。そのため、農家のイネのつくり方や暮らしぶりとともに増えたり減ったりする運命にある。

 たとえば、代表的な赤トンボであるアキアカネ。卵から幼虫時代を水田で過ごす。もともとは河川の氾濫原にできた湿地を生息場所としてきたトンボで、水田がなければ今ほど個体数は増えなかっただろうといわれている。だが近年は、収穫にコンバインを使うために中干しが徹底され、基盤整備によって乾田化が進んで、田んぼはかつてのような湿地ではなくなった。赤トンボは、産卵やヤゴの羽化が以前のようにはできなくなっている。そしてヘイケボタルもまた幼虫時代を水田で過ごす生きもので、中干しや乾田化の影響を受けて減ってしまった。

 ゲンジボタルの幼虫が暮らすのは、集落の近くを流れる小川や水路。山奥の清流よりも、野菜クズなどが混じった生活排水が流れ込む川のほうが、エサのカワニナがよく増えるからだ。ミツバチは野生の日本ミツバチもいるが、昔から農家に飼われてきた昆虫であり、農家が栽培する作物がミツバチの蜜源や花粉源になってきた。じつはイネの花も、真夏に咲く他の花が少ないなかでは貴重な花粉源である。

 最近、赤トンボとホタルとミツバチに新たな受難がふりかかっている。イネの苗箱施用剤や斑点米カメムシの防除に多く使われるネオニコチノイド系農薬の影響だ。従来の農薬散布でも死ぬことはあったのだが、この系統の農薬は土壌中に残留しやすいことや残効が長いことなどが原因でアキアカネが急減したり、ミツバチが大量に死ぬ事故が起きている。

 赤トンボやホタルにちなんだネーミングのお米が、全国にはたくさんあることからもわかるとおり、これらの虫たちに愛着をもつ農家は少なくない。イネの栽培法との深い関係に気づいた農家の中では、中干し時期を遅らせたり、影響の少ない農薬を選んだり、農薬を使わずにすませたりする工夫で、赤トンボやホタルやミツバチを増やす米づくりが始まっている。

→「特集 赤トンボとホタルの増やし方 そしてミツバチについて」30号(2017年夏号)

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