京都名物のにしんそばは、にしんがそばに隠れています。見栄えがよいからともいわれますが、食べ進めるにつれ、にしんから味が染み出て、味に変化をつけるのに役立っています。 身欠きにしんは海から離れた京都の食生活には欠かせないたんぱく質源でした。小骨が多い魚ですが、甘辛くほっこりと炊いたにしんの棒煮は食……
山がちで平地が少ないため水田が少ない峡南地域では、米の代用として、地元の小麦を粉にした地粉のうどんを一年中日常的に食べていました。粉はひきたてがおいしく、最近は異常気象で夏が暑く秋になるとおいしくなくなってしまうので、自家用に小麦を栽培して製粉する家では粉を冷凍保存します。昭和40年代まで冷蔵庫……
赤がれいは、福井の冬の魚です。底曳《び》き網漁が始まる9月から翌年4~5月くらいまでの間、もっともポピュラーな魚といえるでしょう。秋から冬にかけて多くのスーパーでは、かれい、はたはた、めぎすばかりが並んでいるといった状況になります。赤がれいは小さなものから40㎝くらいの大きなものまでが出回り、内……
ごまをすって醤油、酒、砂糖で味つけしたごま醤油であまだいを和え、卵黄を溶き混ぜていただきます。ごまの風味と油けに卵黄のコクが加わり、濃厚なおいしさです。焼き物の町・有田で、夕食や客膳用につくられました。 あまだいは身に水分が多くやわらかいため、刺身にはいまひとつと思われていますが、鮮度のよい刺身……
めぎす(ニギス)は、福井の一般大衆魚といえる魚です。日本海では9月から底曳《び》き網漁が始まり、めぎす、はたはた、赤かれいなどが水揚げされます。なかでもめぎすは、スーパーなどで十数尾が1パックで安価に売られています。味は淡泊ですが適度に脂がのっており、独特の旨み(コク)とのバランスがよいものです……
熊野灘に面する東紀州は、11月から5月頃のぶりの定置網にまんぼうがかかります。まんぼうは畳1畳分ぐらいの大きさですが、皮がかたくて厚く、食用となる身、肝、腸の部分は多くはありません。そのため船上で解体し、大半を海に捨てて食用部分だけを水揚げし、肝和えや酢味噌和えなどにして食べてきました。 まんぼ……
晩秋から冬にかけての讃岐を代表する郷土料理で、ふなのことを鉄砲と呼んだことから「鉄砲和え」という名がつき、「てっぱい」となったといわれています。 香川県は瀬戸内気候で雨が少なく、古くから水不足に悩まされてきたため、各地に多くのため池をつくって水を確保してきました。ため池は農繁期の終わった秋から冬……
滋賀県ではすき焼きのことを「じゅんじゅん」と呼びます。入れるのは鶏や鴨肉、牛肉、豚肉などさまざまですが、いさざのじゅんじゅんは誰もが喜ぶ一品です。いさざはハゼの仲間で琵琶湖の固有種。魚臭さや内臓の苦味がなく、骨までやわらかく、いいだしが出るため珍重されています。じゅんじゅんにすると、そのだしがた……
鳥取では、じゃぶじゃぶと汁けを多めにしてつくる煮物のことを「じゃぶ」といいます。魚や肉などの動物性たんぱく質の食材に野菜や豆腐を加えて煮て、お椀に盛って汁を吸いながら食べます。 県東部の山間部に位置する八頭《やず》地域では、近くを流れる八東川《はっとうがわ》でとってきたうぐいを使ってじゃぶをつく……