端午の節句や田植えのときによくつくられただんごです。材料は米粉とあんのみで手軽にでき、サルトリイバラの葉にはさんで蒸すため葉の香りがだんごに移り、季節感があります。 県全域に伝わっており、地域によって「いぎの葉だんご」「ぶとんもち」「ほてんどもち」「さんけらもち」「おてんぽもち」などいくつもの名……
小麦粉とあんだけで、ゆでて手軽につくるシンプルなおやつです。「うでる」は「ゆでる」こと。ゆでた青菜や卵も「うで菜」「うで卵」といいました。農作業の節目や行事には、重曹を入れてふっくらと蒸し上げる炭酸まんじゅうがつくられましたが、それに比べると手がかからず、少し時間があればつくって、あん入りのだん……
上州《じょうしゅう》(群馬県)は日照時間の長さに加えて特有のからっ風が小麦の生育に適し、多様な粉食文化をはぐくんできました。そのひとつ、炭酸まんじゅうは農休みまんじゅうとも呼ばれ、自家製の小麦粉と小豆を使い、来客のもてなしや人寄せなどによくつくられました。重曹でやや黄味がかった皮の色とほんのり感……
日高市を含む入間台地では、小麦の栽培が多く、米以外に主食としてうどんがよく食べられていました。小麦を使ったおやつも多く、炭酸まんじゅうやゆでまんじゅうが代表的です。この地域では麦やお茶の収穫、養蚕業など初夏から夏にかけて忙しかったのですが、7月中旬の天王様(夏祭り)の頃には農作業が一段落するので……
緑色のカラフルなお菓子は、新島《にいじま》や式根島《しきねじま》で十五夜(旧暦8月15日)や十三夜(旧暦9月13日)のお月見につくられます。名前や色の由来はわからないのですが、「お月見といえば緑色のあおやぎ」なのです。お供えにはせず、集まって食べるためのお菓子です。ほかに赤や緑の食紅を使って鮮や……
神奈川県の水がめといわれる津久井地方は山がちで水田は少なく、麦飯やうどん、すいとん、まんじゅうなど日常の食生活は麦が土台でした。酒まんじゅうは夏祭りや盆にはどこの家庭でもつくったものです。種が発酵しやすい暑い時期につくるのがよいとされますが、7月の初めはどういうわけか失敗しがちで、盆の頃になると……
県最東部に位置する上野原市は水に恵まれない土地で、水田は少なく、陸稲、小麦、大麦、いも、こんにゃくがおもな産物でした。おやつには小麦粉を使うことが多く、正月や盆などのハレの日、祭りになると各家庭で、自家製の「まんじゅう酒」でふくらませた酒まんじゅうがつくられました。 まんじゅう酒や生地づくりは気……
新緑の季節、大きくなるいばら(サルトリイバラ)の葉を近くの里山でとり、その葉で生地を包んだ蒸しまんじゅうです。家にある材料で簡単につくれ、農作業の合間のおやつでした。毎年、田植えが終わって一段落する野あがり(田植え後の休み)にもつくり、田植えで世話になった人に配る習慣もあったそうです。 いばらも……
もっちりとして上品な甘さの生地の上に煮小豆がのったお菓子です。三角に切った白い生地は暑気を払う氷をかたどっており、小豆には悪魔祓《ばら》いの意味があります。一年の折り返し点となる6月30日、半年間の罪や穢《けが》れをはらい、これから始まる暑い夏を健康に過ごし、残り半年の無病息災を願う行事である夏……
川の少ない香川県では、田んぼの水は重要です。水を引くタイミングで、地域によっては田植えの期間が決まっており、また「半夏《はんげ》までには田植えを終えなければ半夏半作になる」といわれ、皆遅れまいと精を出しました。田植えが終わった7月の半夏生の日は、半夏のはげ上がりで雨もあがるといわれ、その年の新小……
熊本では粉を水で溶いたり練って加熱したものを“だんご”と呼びます。いきなりだんごは輪切りにしたさつまいもと小豆あんを小麦粉の生地で包んで蒸し上げたおやつ。塩味の生地がさつまいもとあんの素朴な甘さを引き立てます。 名前の由来は、いきなり(突然)来客があってもいきなり(すぐに)つくれるから、輪切りに……
竹田地方は周囲を九重山《くじゅうさん》や阿蘇外輪山に囲まれた寒冷な高原地帯で、米があまりとれなかったため、昔から小麦粉が主食やおやつによく使われていました。ゆでもちもそのうちのひとつ。地粉の生地に小豆あんやいもあんを入れ、直径15㎝ほどに薄く大きくのばしたものをたっぷりのお湯でゆでます。蒸すより……
山中湖村のある富士北麓は周囲を山で囲まれ、ほとんどが富士山の火山堆積物の砂や石、粘土の互層地層のため、稲作に向かない土地です。そこで雑穀、豆類、芋類が栽培され、わけても、とうもろこしは長らく主食として食べられてきました。とうもろこしは甘さのない甲州もろこしという在来品種で、粉にひいて湯で練った生……
島土の約89%が森林で平地が少なく、岩がちで耕地も乏しいため食料事情が厳しかった対馬では、さつまいもが何度も飢饉を救ってきました。そのため孝行いもとも呼ばれます。それが隣の韓国にも伝わり、孝行いもがなまって、さつまいもはコグマと呼ばれています。 さつまいもの発酵でんぷん「せんだんご(せん)」を使……
さつまいもや小豆のあんをかんころ粉(さつまいもの粉)の生地で包んだおやつです。かんころ粉は、いもを薄く削って天日に干し粉にしたもので、長期間保存できます。生のいもも床下に掘った「いもがま」と呼ばれる貯蔵庫に入れ、6月くらいまで保存していたので、かんころもちはいつでもつくれるおやつの定番。農作業の……
徳島市周辺や県南部では、桃の節句(月遅れの4月3日)になると、女の子も男の子も三段重ねの手提げの小箱「遊山箱」にごちそうを詰めてもらい、遊山に出かけます。 中に詰める料理は、巻きずしにいなりずし、ゆで卵に卵焼き、色つきの寒天やようかん、ういろう、煮しめが定番です。行き先は桜の咲く土手や公園、磯や……
県南の宇城《うき》市小川町周辺では、「さなぼり(さなぶり)」や夏祭り、お盆にみょうがの葉で包んだまんじゅうをつくります。さなぼりは、農作業を見守っていた田の神様が田の植えつけがすんで帰るのを見送る祭りのこと。この日はお神酒《みき》をあげ、みょうがまんじゅうやぼたもち、野菜や山菜の煮しめ、魚料理な……
県北西部の秩父地方は、盆地特有の寒暖差が大きい気候で、夏はかなり暑くなります。この夏の高温を利用した発酵による甘酒やすまんじゅうが昔から各家庭でつくられ、甘酒は夏バテ予防によく飲まれていました。今も秩父では夏に甘酒祭りが行なわれていますが、この甘酒からすまんじゅうをつくり、みんなで食べていたそう……
かいのこ汁は「かゆの子」がなまったもので、お盆におかゆとともに供えたことから伝えられている夏野菜たっぷりの呉汁です。黒塗りの小さな膳に山盛りのご飯、かいのこ汁、煮しめ、炒り豆腐、といもがら(はすいもの葉柄)のなます、型菓子などをのせ、ご飯には麻がらか柳の枝の箸を挿してお供えします。 鹿児島市内で……
福井県は昔から真宗王国と言われるほど浄土真宗がさかんです。その宗祖、親鸞聖人《しんらんしょうにん》の遺徳に感謝する報恩講をはじめ、さまざまな行事のあとにみんなで食事をする「お斎《とき》」があります。一般的にはお斎は葬儀や法事でふるまわれる食事を指すことが多く、故人の供養のためと考えられているよう……