新緑の季節、大きくなるいばら(サルトリイバラ)の葉を近くの里山でとり、その葉で生地を包んだ蒸しまんじゅうです。家にある材料で簡単につくれ、農作業の合間のおやつでした。毎年、田植えが終わって一段落する野あがり(田植え後の休み)にもつくり、田植えで世話になった人に配る習慣もあったそうです。 いばらも……
川の少ない香川県では、田んぼの水は重要です。水を引くタイミングで、地域によっては田植えの期間が決まっており、また「半夏《はんげ》までには田植えを終えなければ半夏半作になる」といわれ、皆遅れまいと精を出しました。田植えが終わった7月の半夏生の日は、半夏のはげ上がりで雨もあがるといわれ、その年の新小……
熊本では粉を水で溶いたり練って加熱したものを“だんご”と呼びます。いきなりだんごは輪切りにしたさつまいもと小豆あんを小麦粉の生地で包んで蒸し上げたおやつ。塩味の生地がさつまいもとあんの素朴な甘さを引き立てます。 名前の由来は、いきなり(突然)来客があってもいきなり(すぐに)つくれるから、輪切りに……
竹田地方は周囲を九重山《くじゅうさん》や阿蘇外輪山に囲まれた寒冷な高原地帯で、米があまりとれなかったため、昔から小麦粉が主食やおやつによく使われていました。ゆでもちもそのうちのひとつ。地粉の生地に小豆あんやいもあんを入れ、直径15㎝ほどに薄く大きくのばしたものをたっぷりのお湯でゆでます。蒸すより……
山中湖村のある富士北麓は周囲を山で囲まれ、ほとんどが富士山の火山堆積物の砂や石、粘土の互層地層のため、稲作に向かない土地です。そこで雑穀、豆類、芋類が栽培され、わけても、とうもろこしは長らく主食として食べられてきました。とうもろこしは甘さのない甲州もろこしという在来品種で、粉にひいて湯で練った生……
島土の約89%が森林で平地が少なく、岩がちで耕地も乏しいため食料事情が厳しかった対馬では、さつまいもが何度も飢饉を救ってきました。そのため孝行いもとも呼ばれます。それが隣の韓国にも伝わり、孝行いもがなまって、さつまいもはコグマと呼ばれています。 さつまいもの発酵でんぷん「せんだんご(せん)」を使……
さつまいもや小豆のあんをかんころ粉(さつまいもの粉)の生地で包んだおやつです。かんころ粉は、いもを薄く削って天日に干し粉にしたもので、長期間保存できます。生のいもも床下に掘った「いもがま」と呼ばれる貯蔵庫に入れ、6月くらいまで保存していたので、かんころもちはいつでもつくれるおやつの定番。農作業の……
沖縄の方言でアンダンスーの「アンダ」は豚の脂のことで、「ンス」は味噌のことをさしています。もともとは年に1回だけつぶす豚を大事に食べる保存食の知恵のひとつでした。砂糖も加わり甘辛く、ご飯にのせて食べたり、ポーポー(小麦粉を用いた薄焼きの皮にアンダンスーを入れて巻いた日常のおやつ)などにも使われて……
県南の石岡市はかつては国府が置かれ、常陸国《ひたちのくに》総社宮《そうしゃぐう》とその例大祭(関東三大祭りの一つ・石岡のおまつり)などが行なわれる歴史ある地域です。甘いもの、寄せ物はごちそうで、矢羽のようかんは、正月や祭り、お祝いごとの際にみんなにふるまわれました。 今も、この土地の年配の方は矢……