汁に入っただんごの形が鶏の卵に似ていることからこの名前がつきました。もともとは室町時代に都の禅宗の寺で食べられていた点心(間食やお茶請け)が南部藩に伝わったといわれています。 昆布と椎茸が香るすまし汁と、とろりととろけるようなあん入りのだんごの組み合わせはユニークですが絶妙な味です。下北地域では……
季節を問わず、人が集まるとき、正月や慶弔の行事などにつくられてきた、鹿角《かづの》地域のハレの料理です。精進料理の吸いものとしてもつくられ、だしに鶏卵に見立てた白いもち、けいらんを2つ浮かべます。お祝いのときは一方を食紅で色づけし、紅白のけいらんにします。見た目にも上品で趣のある料理です。 鹿角……
塩味のあんをもちで包んだ甘くない大福で、入手しにくかった砂糖に比べて塩は少量で味がつくので、昔はくず米と小豆で、大きな塩あんびんがつくられていました。塩あんは普通のあんより粘りが少なく、やや淡く白っぽい色です。全体にほどよい塩味で、噛んでいるともちそのものの甘味を感じられます。つきたてはやわらか……
徳島県では、昔から亥《い》の月(10月)の最初の亥の日になると、収穫を感謝し、土地の神様をまつる行事「お亥の子さん」が行なわれます。このときつくるのがいももちです。以前はいもと一緒に蒸したもち米をつきこんでいましたが、最近では手軽に使えるもち粉やだんご粉を入れます。いもがたっぷり使われているため……
おはぎというと、炊いたもち米のご飯をつぶして丸めますが、これはつぶさず丸めず、あんをかけて食べます。県内では鹿行《ろっこう》地域(鹿嶋市・神栖《かみす》市)だけのものです。 「三つ目」は、出産後3日目に食べさせることに由来しており、出産した女性の疲労回復と乳の出がよくなるよう願ってつくられた祝い……
一般的におはぎやぼたもちと呼ばれるものですが、尾張水郷地区では、炊けたご飯を釜の中でごんごんつぶすのでこの名前がついたといわれています。またご飯は半分ぐらいつぶすので「半殺し」とも呼ばれ、いずれもユニークで楽しげな、少し物騒な名前です。 農あがり(田植えが終わったとき)や稲刈りの手伝いにきた人の……
もちつきは、本来臼と杵でぺったんぺったんと音が響く家族親戚総出の作業で、ついたもちは皆で分けました。しかしもち米が少ないとき、家族だけで食べたいときに音を出さずにもちをつくる方法として、鍋の中でつきこねる「なべもち」が考えられたといわれています。また隣近所に内緒、同居していない親戚に内緒でつくる……
刈り入れが終わる鎌納めの日は例年11月10日頃で、11月最初の雨降り日と重なると、「亥《い》の子《こ》」といって野休みにします。この日につくる里芋入りのぼたもちがいもぼたで、亥の子もちともいいます。 中南部でもとくに葛城市は水に恵まれた米どころで、また品質のよい里芋がとれるので、味のよいいもぼた……
米粒が半分くらいつぶれるよう「半殺し」につくので、この名前がつきました。中にはささげのこしあんが入っており、表面にはきな粉がまぶしてあります。あんを外側につけたぼたもちやおはぎは彼岸につくりますが、はんごろしは季節を問わず、村の人が大勢集まるときにつくりました。風味豊かなよもぎとあんが合わさると……
しとぎは米をつぶした粉でつくったもちのことをいい、もともと神様への供物という意味もあります。米どころの津軽地方はもち粉を使ったおやつがたくさんあります。しとぎもちも、中南津軽は小麦粉を加えず、もち米粉かだんご粉だけだったりと地域独特のつくり方があります。虫送り、稲刈りの終わり、農作業のいっぷく(……
島根県の柏もちはサルトリイバラの葉でつくります。山間部に多いサルトリイバラはつるにトゲがありサル除けとなっていたことから「サル捕りいばら」といわれていますが、県内各地ではいろいろな名前で呼ばれています。東部ではかたら、西部ではまき、隠岐ではかたりといい、柏もちもかたらもち、まき、かたりまんじと地……
小麦粉とあんだけで、ゆでて手軽につくるシンプルなおやつです。「うでる」は「ゆでる」こと。ゆでた青菜や卵も「うで菜」「うで卵」といいました。農作業の節目や行事には、重曹を入れてふっくらと蒸し上げる炭酸まんじゅうがつくられましたが、それに比べると手がかからず、少し時間があればつくって、あん入りのだん……
上州《じょうしゅう》(群馬県)は日照時間の長さに加えて特有のからっ風が小麦の生育に適し、多様な粉食文化をはぐくんできました。そのひとつ、炭酸まんじゅうは農休みまんじゅうとも呼ばれ、自家製の小麦粉と小豆を使い、来客のもてなしや人寄せなどによくつくられました。重曹でやや黄味がかった皮の色とほんのり感……
日高市を含む入間台地では、小麦の栽培が多く、米以外に主食としてうどんがよく食べられていました。小麦を使ったおやつも多く、炭酸まんじゅうやゆでまんじゅうが代表的です。この地域では麦やお茶の収穫、養蚕業など初夏から夏にかけて忙しかったのですが、7月中旬の天王様(夏祭り)の頃には農作業が一段落するので……
緑色のカラフルなお菓子は、新島《にいじま》や式根島《しきねじま》で十五夜(旧暦8月15日)や十三夜(旧暦9月13日)のお月見につくられます。名前や色の由来はわからないのですが、「お月見といえば緑色のあおやぎ」なのです。お供えにはせず、集まって食べるためのお菓子です。ほかに赤や緑の食紅を使って鮮や……
神奈川県の水がめといわれる津久井地方は山がちで水田は少なく、麦飯やうどん、すいとん、まんじゅうなど日常の食生活は麦が土台でした。酒まんじゅうは夏祭りや盆にはどこの家庭でもつくったものです。種が発酵しやすい暑い時期につくるのがよいとされますが、7月の初めはどういうわけか失敗しがちで、盆の頃になると……
県最東部に位置する上野原市は水に恵まれない土地で、水田は少なく、陸稲、小麦、大麦、いも、こんにゃくがおもな産物でした。おやつには小麦粉を使うことが多く、正月や盆などのハレの日、祭りになると各家庭で、自家製の「まんじゅう酒」でふくらませた酒まんじゅうがつくられました。 まんじゅう酒や生地づくりは気……