「みどり戦略」を本気で考える その①

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「有機農業100万ha」で地域を元気に、賑やかに

 このたび、農林水産省は「みどりの食料システム戦略」(以下、みどり戦略)を正式決定した。「2050年までに目指す姿」として農林水産業の二酸化炭素排出実質ゼロ、化学農薬の使用量半減、化学肥料の使用量3割減といった目標を掲げている。そして、有機農業を日本の全農地の25%(100万ha)に拡大するとうたっている。

 かなり大胆な目標で、農政の大きな転換点という見方もある。一方でその内容には多くの批判もある。それらの意見もふまえたうえで、農家目線・地域視点から「みどり戦略」実現の道について考えてみてはどうか。農文協ではそのような立場から、雑誌や書籍の企画・発行を進めることにしている。

 その第1弾となるのが『月刊 現代農業(2021年7月号)』の主張「有機農業100万haで地域を元気に、賑やかに」だ。新聞でいう社説に相当する記事である。有機農業の特質をおさらいしつつ、有機の栽培面積を広げる道すじについて農文協なりの考え方を示している。有機農業を「点から面へ」広げるには、地域自給の魅力的展開が大きな力を発揮する、というのがその主旨だ。そして具体的取り組みとして、3つの先駆的事例を紹介している。


 この「主張」は、7月下旬にルーラル電子図書館に収録される予定ですが、ひと足早く農文協の公式サイトでも読むことができます(無料公開)。

画像をクリックすると、農文協公式サイト「主張 有機農業100万haで地域を元気に、賑やかに」(現代農業 2021年7月号)にジャンプします。

 3つの先駆的事例については、ルーラル電子図書館で記事を読むことができます(会員限定)。以下にリンク先を掲載しています。ぜひご活用ください。


以下のリンク先は会員限定・要ログインです(会員でない方は 無料お試し か 入会申込 をご検討ください)

 

■「主張」で紹介した先駆的事例へのリンク

事例1:40年前にミカンの有機栽培からスタートした愛媛県西予市の無茶々園。有機農業が持つ自給と提携の精神が地域づくりを牽引してきた事例。「有機農業は商品生産としてではなく、自給をベースにした生産者と消費者との相互信頼を基礎とした提携というあり方以外に道は拓けない」という考えを基本において仲間を増やしながら産直(提携)活動を進め、農家組織から地域組織へ変身。雇用と協働の場をつくりだし、年間販売額10億円、雇用90人を実現している。

「FECW」の自給圏をつくる(『季刊地域』2019年冬号 No.36 )より ※画像をクリック

 


事例2:有機農業の町として有名な山形県高畠町。1973年、41人のメンバーで高畠町有機農業研究会を設立。悪戦苦闘を経てしだいに栽培技術が確立し、地力も向上してきて収量が安定するようになり、97年には役場農林課を事務局として約1000人の農家で高畠町有機農業推進協議会が発足。「地域自給の向上を軸にしながら有機農業の実践をめざす」ことを基本構想として、第2~3世代による地域づくりが進んでいる。

「町村長インタビュー 有機農業の里に町産材ほぼ100%の屋内遊戯場、町立図書館」(『季刊地域』2020年冬号No.40) より ※画像をクリック

 


事例3:有機農業にあまり縁がなかった地域での新しい取り組み。千葉県いすみ市では有機稲作に取り組み、学校給食で100%有機米を使用している。JAと協議し、生産者に再生産可能な価格(2万円/60㎏)を保証したうえで、納入業者のJAの手数料は最低限に抑えてもらう。給食センター側に発生する差額は市の一般財源で補填し、給食費の値上げはなし。残食が減ったり、有機米給食が気に入っていすみ市に移住する人が現れ、新規就農者もやってきたという。

市内の学校給食で100%有機米使用を達成 (『現代農業』2020年5月号) より ※画像をクリック

 

 農家や地域が元気に、賑やかになることに「100万ha」の価値がある。次世代が安心して、希望をもって生きられる地域と地球のために、夢のある議論を地域から興したい。


2021/7/7