農業技術大系「作物編」(追録第46号) を収録しました。今回の追録は、農林水産省の「みどりの食料システム戦略」(みどり戦略)の取り組みの広がりや技術の深まりを踏まえ、減農薬・減化学肥料を含めた有機栽培技術を柱に構成しています。
イネの有機栽培技術
イネでは、有機栽培、減農薬・減化学肥料に向けた技術として、雑草対策、育苗、緑肥・有機物利用などを柱に収録しました。
雑草対策では、秋処理によるワラ分解の徹底・健全な育苗・適切な栽植密度によってイネが雑草に優占する田んぼづくり(写真1)、複数回代かき、新型の除草機(アイガモロボ、ウィードマン(WEEDMAN))の特性、イトミミズによる抑草効果に関する研究成果を収録しました。
減農薬・減化学肥料栽培では、育苗での種子伝染性病害の防除技術、有機培土の利用による病害抑制やそのメカニズム、ヘアリーベッチの利用、高チッソ鶏糞による元肥鶏糞栽培などを収録しました。
生産者事例としては、雑草の緑肥的利用による地力確保と複数回代かきによる抑草を実践している事例、大規模経営での有機栽培の事例、独自に考案した除草器とアイガモを組み入れた乾田直播栽培の事例を収録しました。

ムギ・ダイズの安定多収・有機栽培技術
ムギとダイズは、安定多収技術と有機栽培技術の2つを柱に収録しています。
ムギでは、基本技術となる排水対策、オオムギ「はるか二条」の施肥技術、減化学肥料栽培に向けたムギ生育期の牛糞堆肥施用(写真2)、秋まきコムギへの緑肥利用のほか、北海道で普及している「大豆畦間ばらまき播種栽培」、ハダカムギで450㎏/10aの収量を実現する栽培体系などを収録しています。
ダイズでは、過乾燥対策のためのかん水支援システム、2年3作輪作での地力増強対策、のほか、有機栽培技術を収録しています。
農家事例では、もちコムギの安定栽培、北海道の大規模経営でのコムギとダイズの有機栽培の事例を収録しています。

サツマイモの新品種、栽培理論、基本技術、障害と対策
サツマイモの品種では、加工や青果用に向けた新しい品種、基腐病抵抗性の品種などから、みちしずく、べにひなた、みやあかりの特性のほか、品種改良の歴史と展望を収めました(写真3、4、5)。また、栽培の基礎理論や基本技術についても改訂を行ない、「土壌環境と生育」「生育期と栄養診断」「施肥による生育制御」、「植付け」、「収穫適期・収穫方法」、「キュアリング」などをバージョンアップしました。そのほか、サツマイモ基腐病の発生生態と対策について、最新情報も盛り込んでいます。



子実用トウモロコシの有機栽培
子実用トウモロコシは、近年、新しい作目として注目が集まっています。今回はその有機栽培技術について、経営指標を交えてポイントを解説しています。
2025/06/12