野菜15品目の有機栽培、キャベツの品種選択と安定生産など

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農業技術大系 野菜編 追録第49号 をアップしました。

2022年、国は「みどりの食料システム法」を制定し、化学農薬の50%低減、化学肥料の30%低減、有機農業を全耕地面積の4分の1(100万ha)まで拡大することを目標に掲げました。有機農業を推進する市町村が増えており、エコファーマー認定制度に代わる「みどり認定制度」も始まるなど、有機農業への関心が高まっています。
今号では、主要野菜15品目の有機栽培の基本技術とポイントを収録しました。これは、日本土壌協会が自然農法国際研究開発センターの執筆協力でとりまとめた有機農業標準栽培技術指導書「有機栽培技術の手引〔果菜類編〕」と「有機栽培技術の手引〔葉菜類等編〕」を、両団体の了解を得て再編集したものです。各品目の記事冒頭で、その品目の有機栽培のポイントが簡潔にまとめられ、そのあと有機栽培の実際・手順が具体的に記述される基本構成で、エッセンスが凝縮された、価値ある記事群となっています。
有機農業の共通技術である自家採種と育苗については、元広島県農業ジーンバンク・船越建明さんの「自家採種の基本と心得」、千葉県佐倉市・林重孝さんの「自家採種で有機農業経営」、茨城県石岡市・魚住道郎さんの「踏み込み温床」(写真1)を収録しました。

写真1 魚住農園の踏み込み温床。可動式(移動式)の温床枠を並べて設置。2.7×1.8mの枠にコンテナ100杯分の落ち葉が入る(依田賢吾撮影)

野菜の購入量1位・収穫量2位のキャベツ。加工・業務用の栽培で課題となっている作業分散に関する品種特性や、作型・用途・経営と品種選択、セル成型育苗、重要病害と対策、FOEASを利用した水田転換畑での安定生産技術を収録しました。
また、高冷地夏秋どり栽培(群馬県嬬恋村)と秋冬・初夏どり栽培(愛知県田原市)、それぞれの産地を代表する生産者事例を収録しました(写真2)。

写真2 大型鉄製コンテナ(パレテーナ)でのキャベツ出荷(愛知県田原市)

2026年度から指定野菜に格上げとなるブロッコリー。加工・業務用で重要となる収穫期予測について、生育モデルを用いた予測技術と、ドローン空撮画像を用いた予測技術を収録しました。さらに、水田(転換畑)でのブロッコリー生産が拡大する中で、排水不良などが課題になっているため、FOEASを利用した水田転換畑での安定生産技術と、千葉県での水田裏作ブロッコリーの圃場選定基準・育苗方法を収録しました。
新技術として、乾燥に弱いサトイモの灌水の要否を判断する簡易指標、ミネラルや食物繊維が豊富な健康野菜として注目を集める食用サボテンの栽培の基礎(写真3)を収録しました。

写真3 食用サボテンの収穫適期の若い茎節

2025/04/17