農業技術大系「果樹編」2024年版 を収録しました。
今号のメインは,第7巻「特産果樹」常緑果樹のうち香酸カンキツの5種(カボス/シークヮーサー/スダチ/ユズ/レモン)と,第1巻「カンキツ」の中晩カン4種(津之輝/ハッサク/ブンタン/カワチバンカン)の栽培の基礎と実際の紹介です。2000年のシークヮーサー,2009年の津之輝を除くと,ほぼ台本収録時(1984年)以来となる40年ぶりの大幅な見直しとなりました。栽培面積こそかつてほどではないものの,ハッサク,ブンタン,カボス,スダチ,ユズなどはわが国を代表する基幹のカンキツ品目。これにレモンやシークヮーサー,新品目の津之輝を加え,それぞれの栽培の「現在地」と,今後につなげていきたい基本の技術情報を,各14~32ページ,計160ページにわたり網羅的に解説しました。
カンキツではまた,隔年結果対策や管理作業の簡易・平準化などで近年注目の「片面交互結実栽培」(写真1),「半樹別交互結実栽培」を収録。前者は静岡の青島温州での取り組み,後者はそれによる無農薬栽培を行なう愛媛の農家の事例です。1樹を左右片側に半分に分け(半樹ずつ),それぞれ1年交互に果実を成らせるつくりで、連産と,片側だけの収穫ながら慣行栽培以上の増産も可能とのこと。
農家事例ではこのほか,ナシの予備枝徹底確保による安定多収,経済樹齢延長の栽培(栃木,写真2)や,リンゴで温暖化時代における安定生産を追求する農家の取り組み(茨城)も紹介,いずれも読み応えのある内容、ボリュームです。
毎号追求しているテーマ,省力・軽労化の技術では,リンゴの落葉収集機利用による黒星病の発生低減効果とロボット草刈機による除草管理,ナシのジョイントV字トレリス樹形栽培を収録しました。
また,今号は第8巻「共通技術」に新しく「天敵を活用した防除技術」コーナーを設け,果樹で取り組みが進むハダニの“土着+製剤”によるw(ダブル)天敵防除の体系,基本の戦略と導入手順,そしてリンゴ,ナシ,オウトウ(以上,露地)とブドウ(施設)の個別具体の防除実践を紹介しました。
その〈w天敵〉防除において土着天敵の保全と活用が基本となりますが,重要な役割を果たすのが草生栽培です。この草生栽培についても旧コーナーの記事を一部見直し,新情報を加えました(写真3)。
それぞれご一読のうえ、ご活用頂ければ幸いです。
2024/08/23