伝え継ぐ日本の家庭料理

漬物・佃煮・なめ味噌
各地の漬物や佃煮、味噌やなめ味噌を集めました。かつては、たくさんとれた旬のものを食べつなぐ大切な保存食でした。今は新たな役割が期待されます。 大根や赤かぶ、さまざまな地方品種が今に伝わる菜っぱ類の漬物は、冬を越すために食べ続けているうちに発酵が進み、すっぱくなると煮たり炒めたりして最後まで食べます。乳酸菌がつくり出す自然のすっぱさです。季節の野菜を手軽に食べられるぬか漬けや麹床の一種である三五八漬けも、発酵の力で生野菜にはない風味やおいしさを加えます。 味噌やなめ味噌も発酵食です。米や麦や大豆に麹が加わり、複雑なうま味や甘さが生まれます。山椒や小魚などの季節を感じさせる佃煮の中には、かつてよりもうす味で素材の風味や色味を生かすつくり方に変わりながら受け継がれるものもあります。それ自体でお腹を満たすものではなくても、そのおいしさでご飯の供に欠かせない食卓の名脇役として、これからも折々につくり味わっていきたいものです。

大根・かぶの漬物
大根は生に近い食感を残して漬けたり、しっかり干してたくあん漬けにしたり、甘味や風味が凝縮したはりはり漬けにしたりと多彩です。鮮やかな赤かぶ漬けは、地方ごとの品種でつくり継がれてきました。ほか、しょうがやらっきょうなど、根茎の漬物も紹介します。
大根の一本漬け
岩手県
大根の渋柿漬け
新潟県
大阪漬け
大阪府
いぶりがっこ
秋田県
東光寺大根のたくあん漬け
東京都
伊勢たくあん
三重県
山川漬
鹿児島県
しょぼろ納豆
茨城県
割り干し大根のはりはり漬け
愛知県
めのはと切り干し大根のはりはり漬け
島根県
はりはり漬け
愛媛県
赤かぶ漬け
山形県
赤かぶの甘酢漬け
福島県
すんきの赤かぶの甘酢漬け
長野県
品漬け
岐阜県
日野菜漬け
三重県
日野菜漬け
滋賀県
万木かぶのぬか漬け
滋賀県
津田かぶの漬物
島根県
紅しょうが
奈良県
らっきょう漬け
福井県

菜っぱ・うり・なすの漬物
雪菜に芭蕉菜、野沢菜に広島菜、高菜など、全国に漬物用の菜っぱがあり、それぞれの特徴を生かし、各地で漬けられています。夏になるとどっさりとれるうりやなすなどの果菜は、浅漬け、ぬか漬け、醤油漬け、粕漬けなどにして無駄なく食べつくしました。
雪菜のふすべ漬け
山形県
芭蕉菜漬け
岩手県
おみ漬け
山形県
しゃくし菜の漬物
埼玉県
野沢菜漬け
長野県
水かけ菜漬け
静岡県
わさびの茎の三杯漬け
静岡県
はぐき漬け
滋賀県
おくもじ
奈良県
広島菜漬け
広島県
白菜漬け
広島県
高菜漬け
福岡県
高菜漬け
熊本県
しその千枚漬け
宮崎県
日光唐辛子の醤油漬け
栃木県
金糸うりの粕漬け
富山県
鉄砲漬け
山梨県
子メロン漬け
静岡県
うりの粕漬け
福岡県
なすの花ずし
秋田県
なす漬け
山形県
ぬか漬け
大阪府
なすの辛子漬け
山口県

野菜いろいろ・梅・魚介の漬物
そのときどきにとれる野菜をさっと漬ける三五八漬けやぬか漬け。夏から冬にかけてのいろいろな野菜を合わせたやたら漬け。秋の菊やきのこ、初夏の梅を使った漬物や、にしんやするめなどの魚介の乾物が入った、祭りや正月のごちそうになる漬物も紹介します。
菊の巻き漬け
青森県
三五八漬け
福島県
旬野菜のぬか漬け
埼玉県
やたら漬け
兵庫県
あちゃら漬け
福岡県
なばのからせ漬け
大分県
地漬
沖縄県
しそ巻き梅干し
青森県
甲州小梅漬け
山梨県
梅干し
和歌山県
豆腐の梅酢漬け
高知県
にしん漬け
北海道
松前漬け
北海道
茎わかめの漬物
宮城県
いかにんじん
福島県
にしんずし
福井県
きっこうし漬け
新潟県

佃煮
冬は新のりの季節。春を告げるあさりやいかなご。初夏の里山では山椒、川や湖では小鮎やわかさぎがとれます。こうした旬の食材がもつ独特の香りや旨みを長く楽しめるよう、濃い味で煮しめたのが佃煮。昔から「ご飯の供」として食卓に欠かせない保存食です。

味噌・なめ味噌
本書では、味噌はじっくりねかせる熟成味噌と比較的早くできる白味噌、えんどう豆や麦麹でつくる味噌を紹介します。なめ味噌には、麹を使い発酵させたものと味噌に旬の食材を加えたものがあります。お茶うけや酒の肴としたり、ご飯や野菜につけて食べます。