伝え継ぐ日本の家庭料理

小麦・いも・豆のおやつ

小麦やいも、豆、そばなどの雑穀と果物や木の実などを使ったおやつ89品を取り上げました。おやつといっても小昼、小昼飯などと呼ばれた労働の合間の間食が多く、埼玉や東京のたらし焼き、熊本のいきなりだんごのように、手早くつくってすぐ食べられ、腹持ちすることが大切でした。一方で、農休みやお盆、十五夜といった節目には、群馬の炭酸まんじゅう、神奈川や山梨の酒まんじゅうといった、いつもより手のかかるおやつもつくりました。いもや果物や砂糖の甘みがうれしいもの、味噌や醤油が香ばしく焦げて食欲をそそるもの。そんなおやつをほおばりながら、おしゃべりするひとときが楽しみでした。  北海道のどったらもちは、ゆでたじゃがいもを冷ましてキチッキチッと音がするまですりつぶすと、もちのように粘ります。岐阜のみょうがぼちは、仕上がりがかたくなるので生地はこねすぎないようにします。甘い白い粉がつくように干し方を工夫する静岡の干しいもや鳥取の干し柿など、素材の特性をよく知り利用する術が、地域ごとに伝えられてきました。

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小麦のおやつ

ゆでてもちもち、蒸してふんわり、焼いてこんがり。小麦粉のもつでんぷんとたんぱく質(グルテン)がさまざまな食感を生み出します。小麦は米との二毛作で各地でつくられてきました。通年食べますが、収穫期の初夏からお盆にかけてつくる小麦粉のおやつが多くあります。

雑穀のおやつ

そば、とうもろこし、大麦などの粉でつくるおやつです。かつては米や小麦の栽培に向かない山間地の貴重な食糧でしたが、今では独特の風味を楽しむとともに、香ばしく焼いたりよく練ってなめらかにするなどの工夫や知恵を伝えるものとしてつくられています。

豆のおやつ

炒った大豆のコリコリ感、緑や黒といった色の鮮やかさ、加工品である豆腐やきな粉。大豆はさまざまに姿を変えて、おかずだけでなくおやつにもなります。小豆は粉にしたり、もやしでおなじみの緑豆はぜんざいにしたりと、個性的な豆のおやつも登場します。

いものおやつ

じゃがいもは調理方法を変えることで多様な食感が生まれます。里芋は特有のねっとりした歯ごたえを生かします。さつまいもは干しいもや粉に加工し、そこからさまざまなおやつができ、貴重な甘みでした。どのいもも、小いもやくずいもまでおいしく食べました。

果物と木の実と海藻のおやつ

りんごや桃、あんずなど、収穫期にたくさん手に入る果物を煮たり漬けたりして保存するのは、産地ならではの食べ方です。庭先の柿、山でとった栗やどんぐり、海辺のテングサも、加工すれば立派なおやつ。農作業の合間に楽しんだ肩のこらないお茶も紹介します。

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