伝え継ぐ日本の家庭料理

汁もの

全国の汁ものを集めました。「一汁一菜」「一汁三菜」などの言葉があるように、おかずの数は変わっても、ご飯と汁もののセットは日本の食事の基本になっています。土地ごと、季節ごとの材料を使い、汁ものはいつも食卓にありました(*)。  魚の汁は、身はもちろんアラや内臓も豪快に煮こんで深い旨みを味わいます。かにをすりつぶしたり、いかの墨を加えた汁もあります。小さめの魚や小骨の多い魚は、たたいてすり身にするひと手間で、老若男女がおいしく食べられる汁になります。  あさつきやあおさの汁は春を告げる香りです。夏にはきゅうりやなすにごまを加えた汁で元気になり、秋冬はれんこんや里芋などでとろみのついた汁が体を芯から温めます。酒粕を加えた粕汁や、大豆をすりつぶした呉汁は汁自体が濃厚な滋養食です。くじらや鶏、豚や山羊もごちそうの汁になりました。ハレの日のだんごの汁もあれば、いもや雑穀のだんごで汁の実を増やした日常の汁もあり、家々の数だけ「わが家の汁」がつくられています。

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魚と海藻の汁

魚に貝、かになどのうま味を余さず食べられる汁はごちそうです。土地ごとにさまざまな旬の魚介で汁をつくってきました。内臓ごと豪快に煮こんだ汁、たたいてだんごにした汁、かつお節でつくる即席味噌汁や、磯の香りが満喫できる海藻の汁も紹介します。

野菜といもの汁

根菜やきのこや里芋がたっぷり入った冬の汁は体を芯から温めます。あさつきやたけのこの汁で春の訪れを喜び、夏はさっぱりとしたきゅうりやなすの汁にごまを加えてコクをつけます。ご飯がたくさん食べられるとろろ汁は、秋の収穫を祝う滋養たっぷりの汁です。

大豆と肉の汁

大豆の汁は食べごたえがあります。すりつぶして呉汁にしたり、豆腐や打ち豆、納豆でも汁をつくりました。くじらや牛、豚、鶏、山羊などの肉は、少し使っても風味とうま味が増します。たくさんつくって大勢で食べるごちそうになりました。

だんごの汁

丸いだんごは祝いの形。甘いあんが入っただんごの汁「けいらん」は北東北のハレの1品です。だんごとずいきの汁は産婦の快復と乳の出によいといわれ、近所にもお祝いで配られました。米や小麦、とうもろこしやいもでつくるだんごを汁の実にすることもありました。

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