丁字麩と呼ばれる近江特産の麩に、辛みの強い粉辛子と酢味噌を和えたものです。湖東《ことう》地域では、葬式や法事に欠かせない料理で、初七日や七日ごとの節目、一周忌などにお参りに来た人たちにふるまわれます。こうしたことから丁字麩は、参列する人たちが持ち寄るお供えにもなっています。 辛子味噌を練るのは、……
県の北部、嶺北《れいほく》の広い範囲で葬儀や仏事、報恩講《ほうおんこう》の際につくられている代表的な精進料理です。口に入れた瞬間、ツーンとした辛みが鼻の奥からきて涙が出るほどですが、濃厚な甘味噌と、きゅうりと麩の淡白な味と調和して後をひきます。きゅうりのポリポリ、麩のもちもちとした食感もバランス……
結城市の伝統的な食材「すだれ麩」を使った和え物で、仏事には必ずつくられました。鎌倉時代に城下町として栄えた結城は寺院が多く、精進料理が発展するなかで、すだれ麩が生まれました。江戸時代後期にはすでに食べられており、冠婚葬祭で使う高級食材でした。最近は盆や正月など、家族が一堂に会したときに食べる機会……
たっぷりとだしを含んだ麩を卵が包み、散らした青菜の彩りも鮮やかな車麩の卵とじは、簡単につくれるのに豪華な一品となり、金沢市や金沢市近郊の家庭で、昔から四季を問わず日常的に食べられています。子どもからお年寄りまで、誰もが好きな味です。夏場なら冷やして供すると、つるんとした食感がまたおいしく、食欲が……
福井県は昔から真宗王国と言われるほど浄土真宗がさかんです。その宗祖、親鸞聖人《しんらんしょうにん》の遺徳に感謝する報恩講をはじめ、さまざまな行事のあとにみんなで食事をする「お斎《とき》」があります。一般的にはお斎は葬儀や法事でふるまわれる食事を指すことが多く、故人の供養のためと考えられているよう……
卵を吸った麩(フー)をこんがりと焼き、野菜と炒め煮(イリチー)した料理です。「イリチー」はだしを加えて炒め煮すること。彩りがよく味はあっさりしていますが、食べごたえはしっかりとある普段のおかずです。この料理を「フーチャンプルー」と呼ぶこともありますが、「チャンプルー」は島豆腐(『肉・豆腐・麩のお……
おくずかけ(お葛かけ)は、かたくり粉などのでんぷんでとろみをつけた具だくさんの汁物で、宮城県の代表的な郷土料理です。禅宗の普茶料理の「雲片《うんぺん》」(細かく切った野菜をくずでとじたもの)をまねたともいわれており、もともとは寺院で食べる精進料理でした。それが家庭に広まってお盆やお彼岸に食べるよ……
佐渡のどの家庭でも食べられている伝統料理の代表が佐渡煮しめです。コトコト煮こんで味がよくしみこみ、人が集まるお盆や祭りや冠婚葬祭に欠かせません。ご恩がつくように大根、昆布、にんじん、こんにゃくなど「ん」のつく野菜を煮て、だしをたっぷりと吸った車麩を入れることが特徴です。少量ではあまりつくらず、大……